ああそっか、だから春はつらい
拝啓、きみへ
拝啓、みんなへ
今日もこのまちから、ぎりぎり届きそうにないあなたへと呟きを送っています。
今年もこのまちから桜を書いています。
桜が咲くことに憂鬱になってきた
もうあの景色を訪れてもきみと待ち合わせはできない
それでも、満開を目撃してしまったら泣いてしまうのだろう
どうせ呪われたふりをして挨拶をする
会えたね また来年もね
今から一週間くらい大雨が続けばいい
咲き始めたさくら、もうそこまでだよ
全部を花ひらかせて最後の花びらが散るまでの短くて長いあのさまを総称した刹那で私をいじめないでよ
泣かせて楽しいか、面白いよな
咲けば咲くほど瞼に溜まる水は
頬を流れる前に消してやる
桜 散ってしまうからこそカメラを向けることに必死になる
毎年の景色をトレス用紙で重ねる
私だけが知っている一番古い記憶が
また美化されてゆく
この目に映るきれいなあれを知らないまま生きるきみは人生に足りないものが何かを探すことなくしあわせでいられる
あなたのことだけを全て忘れてみたい
つまり桜の花がさくらという名前だと知らないわたしになりたい
はるから与えられるこの気持ちからは卒業したはずなのにまだ縋ってる ださ
いい加減にしな、ギャルなんだし
ごめんね、私はきみにもあなたにも過去にもしつこくて、でも、そういうひとが、そういうわたしが、このまちにいるだけで、きっと帰る場所になれると思うんだ、なんて言えば、このまちを好きでいるわたしのことを肯定できる気がする
後ろは向いてない 前を進むきみのために
いいや 前を見るわたしのために
ここにいるからね、大丈夫 寄り道しにきてよ
四月八日が満開だったあの年を基準にして
今年も早いなと桜予報に目を向ける
二週間も早いらしい
あおいはると名を付けて祝日にするべき日には
もう桜はいないらしい
春の恋 いまがピークです 大チャンス
うつくしく死んでゆけるきみを想って
2023 ほぼ満開の春の日に
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