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〜 月明かりのくらげ vol.2 〜




物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには1つずつ物語があります
手に取って下さった方が、楽しく笑顔で続きの物語を作っていけるよう心を込めて作っています
ストーリーは、一つではなくどんどん増えていくもの、これからのストーリーを作るのは、あなた
あなただけのストーリーを楽しんで行って下さい♡
こちらでは、リボンの物語を紹介しています楽しんでもらえたら嬉しいです♪


〜 月明かりのくらげ 〜

どこからか聞こえてくる蝉の声は、永遠と鳴り止むことはなく、たまには休憩してもいいんだよ?と言ってしまいたくなる
今年の蝉は、去年より多いのではないかと思うくらい、ずっとどこかの蝉が交代で忙しなく鳴いている
そんな私は、縁側にゴザを敷いてダラっと寝転んでいる
『あつい・・・』
『あついって言うから暑くなるんだよ』
『・・・さむい』
『うーん・・・残念だけど暑いわね』
何の意味のない会話をして、口から出てくるのはダラけた言葉ばかりだったが、それでもこの時間が楽しくて、私は仕方なかった
·
周りを見れば田んぼに畑、誰かいると思って話しかけようとしたら、かかしだった時は、一人で笑いを堪えきれなくなっていたのは1ヶ月前の事
少しばかり、都会での暮らしがしんどくなってしまった私は、1ヶ月の間だけ〈ちょっと一休み〉というツアーに申し込んだのだった
1ヶ月あれば気持ちもゆっくり出来るだろうと思っていたが、気が付けば明日には終わってしまう
まだまだここにいたい気持ちもあるのだが、そうも言ってられないのが現実だ
『明日には元の生活かぁ』
『いつでも遊びにおいで』
隣で先程から私の相手をしてくれているのは、ここの管理人のおばあさん
ここに来る人達を優しく温かく迎え入れてくれる優しい管理人さんなのである
初めは緊張していた私だったが、気さくな管理人さんは話しやすく聞き上手だった為、今では信頼しきって何でも話をしてしまう
亡くなった祖母を重ね見ている私もどこかにいたのだろう
·
夜、明日帰る支度を済ませてから、一階の食堂へと歩き始めた
このツアーで寝泊まりしている家は、昔、旅館として使われていた場所を使っている為、食堂も露天風呂も付いている
大きすぎず小さすぎずがしっくりくるこの旅館の中庭には、小さな池があり、優雅に鯉も泳いでいた
ガラリ
少し重たい引き戸を左側に開ける
他のお客様と共に、私も厨房から渡される料理を受け取り席へと着く
ここに来る多くの人が、癒やしを求めに来ている
管理人のおばあさん以外にも数名スタッフの方はもちろんいてるので、料理やお掃除など様々な事をしてくれている
他のツアーと何が違うかと言えば、実家のようなくつろぎ方が出来る事と、最長1ヶ月まで参加が出来るが、半年経たなければ申込みは出来ないという事だ
ある意味特殊なツアーなのである
私は最長の1ヶ月を満喫し、最後の夜を過ごしていた
·
部屋へ戻るとドアノブにネックレスのようにかけられている『月明かりのくらげ』に手紙が挟まれていた
リボンから手紙をを外し部屋の中でゆっくり読む
読み終わった私は、ドアノブにかかっている『月明かりのくらげ』を取りに行った
手紙には、この1ヶ月楽しかった事や私との思い出話がたくさん書かれていた
終わりには〈リボンを見てここを思い出したらいつでも帰っておいで〉と書かれている
1ヶ月だけだったが、私は心の底から安らぎをもらっていた
·
次の日の朝は、いつもよりご飯を一膳多くおかわりをした
ギュッと詰めた旅行カバンを持ち、管理人さんとスタッフのみんなに挨拶をする
『本当にお世話になりました!』
『気をつけてね。こちらこそありがとう』
『では、また!』
『またね、いつでも帰っておいで』
私は、元気よくそしてスッキリした顔で旅館の門を出た
空は青く綿菓子みたいな雲が、夏のギラギラした太陽を柔らかく和らげてくれる
うるさかったはずの蝉の声も、今日は元気よく送り出してくれているように聞こえていた
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