「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」で気づいたことばの美しさ
京都アニメーションが手掛ける「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
元は作者の暁佳奈による小説がはじまりの本作品だが、この度映画が公開された。
私はアニメ未履修のまま映画を見て大号泣したのち、すぐさまnetflixに加入し全話完走した。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を語るには、私には語彙が足りない。まとめられない。伝えきれない、ということを痛感しているが、心動かされた感情をここに残したい。
代筆屋を通して人の心を知る少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデン
あらすじとしては、戦争兵器として人の扱いをされてこなかった孤児の女の子ヴァイオレット・エヴァーガーデンが、代筆屋として人の心を知り成長していく物語。
ヴァイオレットには自身の上官であり、名付け親である大切な人ギルベルト少佐がいた。その少佐が最後に残した言葉「愛してる」という言葉を理解する為に代筆屋を始める……
という物語である。
戦場で失った両腕に義手を付けタイプライターを打つ姿は、さながら人形のようなヴァイオレット。
京都アニメーションの制作の人々が、この作品を愛しているのが伝わる丁寧なシーンの数々。美しく繊細に描写されたアニメーションは、ヴァイオレットの心の動きや成長を感じさせ、私たちの心を震わせてくれる。
手紙を書く人々の心、ヴァイオレットの心の成長、美しいアニメーション、全てが相まって泣かずにはいられないのがこの作品の特徴である。
アニメの構成としては、ヴァイオレットが手紙の代筆をする仕事を通して、依頼人とのやりとりや手紙に綴る思いで感情を知っていくというもの。
依頼人のエピソードごとにストーリーが進んでいくのだが、この依頼人のエピソードがまた泣けるものばかり。
個人的に好きなエピソードはいくつもあるが、そこは割愛する。ネタバレにもなってしまうので……
今回は、本作品を通して改めて言葉の美しさに触れられたことについて話したい。
「ことば」のゆらめき、でもそれが美しい。
私たちが物心ついた時には、うれしい、かなしい、すき、きらい、という感情が私たちの心にはある。
しかし、ヴァイオレットは戦うことしか出来なかったので、感情もなく、文字も読めなかった。
そんなヴァイオレットが、ギルベルト少佐の「愛してる」を理解するために、人の感情に触れ、様々なものを心で感じ取っていく姿は、私たちが今まで忘れていたものに気付かせてくれる。
忙しない日々の中で私たちが見逃してしまうような、そんな些細な感情ですらヴァイオレットは強く心を動かされるのだ。
物語の中で、ヴァイオレットは言葉には裏と表があり、伝えたいことほどうまく言えないものだと気付く。
しかし、手紙ならそんな気持ちも言葉にして伝えられるという、手紙の存在意義にヴァイオレットは気付き、それを理解し手紙で伝えようとする姿に感動するのだ。
確かに、手紙を書いていると素直なら言葉を並べられることが多い。
本心と裏腹がゆらめき不確かさのある「ことば」だが、それがまた人間らしく美しいということをヴァイオレットは教えてくれる。
大切な人に手紙を送りたくなる作品「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」
本作品の外伝で、幸せ(手紙)を運んでくれた。という台詞がある。
まさにこの台詞は私の中の手紙に対する概念と一致していたし、本当にそうだと思っている。
手紙は、幸せだ。
手紙と書いて「幸せ」という読み仮名を付けたいレベルでそう感じている。
手紙は読んでくれる人がこの世にいなければ成立しない。その読んでくれる人が生きている喜び、気持ちを伝えられる喜び、自分がいなくなっても気持ちを残しておける喜び、そんな語り切れないほどの幸せの形が「手紙」にはあるのだ。
本作を見ると、大切な人に手紙を送りたくなる。
今じゃなくてもきっと大丈夫なのはわかりきっている気持ちを、無性にことばにして、文字にして残して伝えたくなる。
実際に私も本作を見たあと、手紙を書いた。
衝動に駆られて書いたにしてはありきたりな内容だったけれど、それが今私が伝えられる精いっぱいの気持ちであり、その気持ちを伝えられたことを誇りに感じた。
人と、感情と、愛と、手紙。それらのすばらしさ・尊さを全て詰め込んでくれたのが「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」という作品なのだ。
だんだん話がまとまらなくなってきたので、そろそろ終わりにする。
映画館に行くのは腰が重いという方は、netflixで本編と外伝を見ることができる。それでも十分楽しめるが、ぜひ映画館にも行って「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を最後まで愛してほしいという気持ちは、私のわがままだ。
毎日に少し疲弊してしまった人や、涙を流したい人、大切な人がいる人にもおすすめしたい。
最後に、事件により尊い命を奪われてしまった誰かにとって大切な人だった方々。ご冥福をお祈りいたします。
iro
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