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ことばの花束を心に生ける

私は幼い頃からことばが好きで、そして嫌いだ。

私は誰かが発したことばを、何日も考えてしまう。だからことばにトゲの多い人と話した後は、刺さったトゲを1本ずつ観察して、自分なりに調査や考察をしたうえで解毒する作業が必要になる。時間をかければ解毒はできるけれど、傷跡が消えることはない。

そうやって、家族、友達、元カレ、先輩、上司、いろいろな人につけられた癒えない傷跡は、ある日突然、再び誰かのことばのトゲによって生傷へと生き返り、もとの傷より濃く、深く、跡を残すこともある。


「考えすぎだよ」

「そんなつもりで言ったんじゃないんだけど」


そんなことばを、もう何回聞いただろう。自分でも分かっている。私は誰かの悪意のないことばによって、勝手に傷ついて、涙を流して、人生を変える決断をしたこともある。でも考えずにはいられない。私自身が、ことばを好きだからだ。誰よりもことばの持つ魅力を、そしてトゲの痛みを知っているから、ことばを大切にしたいと思って生きている。

就職活動の最終面接で面接官に言われたことが、今でもずっと心に残っている。

「あなたは適切なことばを選んで、頭の中できちんと組み立てながら話をしているのがよくわかります。」

面接中でなければ、泣いていただろう。

少し会話をしただけで、分かってくれる人がいる。その事実だけで、私はこれからもことばを大切にしたいと思えた。
そして今まで私がことばによって痛み傷つきながらも、誰かから受け取った素敵なことばの花束を、自身の心に生けることのできる人間であることを今は誇りに思う。

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