記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

だったら特等席で楽しまれるのはいかがですか?|小説『断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す』

やっぱり悪役令嬢ものは面白い。

構造がマイナスから這い上がるシンデレラストーリーだからだろう。

いや、自ら這い上がるんだから、シンデレラとは少し違うかしら?

『断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す』は、タイトルの通り、悪役令嬢が断罪され、時間を逆行し、人生をやり直す、というもの。

主人公である公爵令嬢のクラウディアは、母の死後、後妻の連れ子であった異母妹・フェルミナに陥れられ、王太子の婚約者の座を奪われ、公爵家から籍を抜かれ修道院送りとなった。

それだけに留まらず、修道院に向かう道すがら暴漢に襲われ、娼館へと辿り着き、娼婦へと身を落とす。

娼婦となったクラウディアは、元伯爵令嬢であり先輩娼婦であるヘレンと出会い、強かに生きる術を身に着ける。

元来の美しい容姿に、様々な術を身につけたクラウディアは娼館のナンバーワンになるが、それも束の間、ヘレンと共に流行病で短い生涯を閉じた。

「やっぱり神様なんていないのよ」
「クラウディア様、心痛お察ししますが、公爵令嬢ともあろう方が不信心なことを言ってはいけません」
(うるさいわねっ、どうせ「元」公爵令嬢よ!)
昔の話を持ち出され、声のしたほうをキッと睨みつける。
そこに懐かしい顔を見たクラウディアは、愕然とした。
「どうして……あなたがいるの」

『断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す』1巻

次の瞬間。

クラウディアは14歳になっていた。
今日は母親の葬儀。

母の死、久しぶりに顔を見る兄。
感慨に耽りながらも、クラウディアは素早く頭を巡らせる。

自分が生き残る為に多くの人を味方につけるために。
今度こそ、異母妹・フェルミナに陥れられないように。

これは、はじまりに過ぎないわ。フェルミナが悪女なら、わたくしはそれを超える悪女、完璧な悪女を目指すのよ!

『断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す』1巻



本作が商業誌デビュー作?

作者は楢山幕府。
BL小説、BL漫画の原作が主だった作家さんのようです。
女性向けライトノベルの配信はこれが初。
Amazonの作者ページには下記のようにあります。

奈良県出身、兵庫県在住。
本作で書籍デビュー。
カッコイイ女性が憧れです。
読んだり眺めたり書いたり描いたりするのが好きで、普段は「総攻め」を推しています。

Amazon作者ページより

イラストは えびすし。
現在、商業で配信されているのは本作ともう1作品だけでした。
まだあまり、商業誌では描かれていないイラストレーターなのかもしれません。

現在この作品はコミカライズがされており、作画は北国良人。
女性向けライトノベルのコミカライズや、オリジナルのBLコミックを描かれているようです。

単話版の先行配信は(おそらく)コミックシーモア。現在1話を無料配信しています。
こちらは現在6話まで配信中。

単行本1巻も発売されてます。(連載中)


出版社は TOブックス。
『本好きの下剋上』や

『ティアムーン帝国物語』などの出版社です。

角川書店の社員であった本田武市と柴田維が独立して設立されたティー・オーエンターテイメントから出版事業を分社化したのがTOブックスだそうです。(後に、ティー・オーエンターテイメントを吸収合併している)
ちなみに、コミカライズのレーベル、コロナ・コミックスもTOブックスです。

現在、既刊3巻。連載中。
3巻全て、KindleUnlimitedで読むことができます。


人心掌握術を得たクラウディアの2度目の人生が見もの

悪役令嬢ものも、逆行ものも、モチーフとしては目新しくはないかもしれない。

この作品の面白さは、悪役令嬢であるクラウディアが前世で娼婦としての手練手管を身につけて逆行した点だ。

逆行前には憧れと、自尊心を満たすだけの存在だった王太子であるシルヴェスターにも、冷静に対処出来る。

そして、以前には見えてこなかったものも、見えてくる。

「クラウディアは奥ゆかしいな」
(なぜかしら、声音は優しいのに、心臓がバクバクするわ)
乙女が憧れる類のものではない。
蛇に睨まれた蛙のような心境である。
表面上は穏やかに見えて、水面下では緊張が走っていた。
(そうだわ、これは……)
嫌みの応酬がないだけの、化かし合いだ。

『断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す』1巻

ただ、クラウディアも身体は違えど、心は何も知らない少女ではない。

それでもさりげなくシルヴェスターの視線が自分の胸元へ行ったのを見て、クラウディアは何だか安心した。
(相変わらず顔はいつものお人形さんだけど、本能には勝てないのね)

『断罪された悪役令嬢は、逆行して完璧な悪女を目指す』1巻

王太子の本性を知った後は、駆け引きを持ちかけることも出来る。

「どちらにしろ対立は避けられません。だったら特等席で楽しまれるのはいかがですか?」
クラウディアには、きまぐれな神様との約束がある。
観客が一人増えたところで大差ない。
「なるほど、それが馬車の対価か」

王太子妃になりたいわけではないけど、異母妹・フェルミナを牽制する為に候補に残り、逆行前には疎遠だった兄ヴァージルを味方に引き入れ、娼婦に身を落とす前のヘレンを助ける。

上手に立ち回り、味方を多く付けることで、クラウディアは異母妹・フェルミナに勝つことが出来るのか。

クラウディアの2度目の人生をハラハラ・ドキドキで楽しめる作品です。


この記事が参加している募集

#読書感想文

189,685件

よろしければサポートをお願いします。