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人をデジタルで評価し統治する中国の最新事情

中国では街中のありとあらゆる場所に監視カメラが設けられ、人々が管理されているというイメージが強いかもしれません。一方で、データやデジタル技術を活用したサービスや統治の考え方は、知れば知るほど面白くなってきます。

もはや現金は時代遅れに

日本では当たり前のように現金を使えますが、実は今や中国や台湾では「現金お断り」のお店も多いんです。それもそのはず、中国では97%がスマホ所有し。内98%が決済に利用しているのです。アメリカや韓国でもスマホの決済利用は40%程度なので、遥かに進んでいるわけですね。中国では露天ですらQRコードが置かれていて決済します。

ちなみに、何故こんなに急速にスマホ決済が増えたのか、中国出身の友人に聞いてみると意外な答えが帰ってきました。

「中国人は信用が無いんです」

これには2つの意味があって、一つは中国では「信用情報」が無いのでクレジットカードなどが使えない。唯一使えるのは、中国政府が関与している銀聯カードというデビットカードのようなものくらいなんですね。そして二つ目は、現金だと偽札の可能性が高いからというもの。そして追い打ちを掛けるように、現金はあまり更新されないのでボロボロで汚いのだとか。つまり、貨幣に対する信用が無いんですね。結果、貨幣よりも便利なスマホ決済が主流になったのだとか。

一方で旅行者には不便だったりします。

購入情報から個人を点数化

アナログな現金から脱した中国では、購入データが蓄積され、様々なデータと連結されていきます。面白いのが「ジーマクレジット」という存在で、個人特性や支払い能力、返済履歴、人脈、素行などを点数化し、このスコアが高い人に特典をつけるというサービスです。

日本の感覚だと「自分に点数を付けられるなんて怖い」と感じると思います。ただ、中国という特異な市場では、このジーマクレジットはとても重要なのです。

例えば、中国では「信用情報」を持っていないのですが、これはつまり「貸付がしにくい」ということを示しています。例えばクレジットカードはある種短期的な貸付(借金)なのですが、当然お金を返してくれなければ損をしてしまいます。そこで、業界で共通して使える「信用情報」というものを設け「この人はお金を返してくれなかったので危険だよ」「収入はこれくらいあるから返済できると思う」というのを把握しているわけですね。一方で中国ではこの情報が無いので、お金を返してくれるかどうかが「賭け」になっていたわけです。(つまり、夜逃げも多かったんですね)

ジーマクレジットという個人スコアを持つことで、お金を貸し借りすることが出来るようになりましたが、他にも結婚や就職も与信スコア化されているようです。ジーマクレジットは誠実な人に特典を与える設計ですが、中長期的に見ると貧困層と富裕層のように二極化していく可能性もあります。

病院すら評価される

中国では病院すら評価されるようになりました。今まで開業医は、いわゆるやぶ医者が多く信頼がないので、大病院に患者が集中するという状況が生まれていました。そこで、開業医を評価するアプリを設けることで、医療需要の分散化を図っているようです。

中国ではレビュービジネスというお金で評価を買うビジネスが一般化しているため、このレビューがどこまで信頼を置けるか分かりませんが、一定機能はしているようです。

タクシーも機械的に評価

タクシーって、不思議なサービスだと思いませんか?

タクシー料金は乗車時間や距離に比例する一方で、乗客は早く現地に付きたいと思っています。つまり、乗客にとって時間が掛かって満足度が下がったのに、運賃も高くなります。しかも「この運転手にリピートしよう」という考えがほとんどありません。結果、安全性や便益に対する考え方が曖昧になっていた業界とも言えます。

しかしUberを始めとする、タクシー配車のアプリ化が世界的に増えてきています。中国でも同様で、アプリでタクシーを配車すると、呼び出しに掛かった時間から顧客の評価まで評価され始めています。

データは新たな石油ではなく、新たな法律である

中国ではありとあらゆる情報をデータ化しています。これは、中国共産党政府主導でITによる国の統治を狙っているからと考えられます。

古代の国の統治方法は権力や武力によるものでした。近現代の国家では法律による統治。そして中国では新たな統治としてデータをベースとした統治を行おうとしていると考えたら分かりやすいかもしれません。

そう考えると、先進国が中国で安く人材を買って下請けさせる、という時代では無くなりましたね。

更に中国の最新技術を知りたい方は

こちらの本は本当に面白くて一気に読み切りました。中国がどのようにしてIT大国になったのか、今の生活はどのようになっているのかなどが分かります。これからのITは、アメリカよりも中国から学ぶことが多くなってくるかもしれません。


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