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#379 「増税メガネ」という呼称に潜む危険な思想

 先日、「2023ユーキャン新語・流行語大賞」(「現代用語の基礎知識」選)が発表されました。年間大賞に輝いた「アレ(A.R.E.)」。18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりに日本一を達成した阪神タイガース・岡田彰布監督のセリフです。岡田監督の戦術や、選手起用マネジメントは今は賞賛の的。ぜひ来年も頑張って欲しい。

 そんな中、ある言葉が流行語大賞から漏れました。その言葉とは「増税メガネ」。漫画家で同賞の選考委員である、やく・みつる氏は、「増税メガネ」が落選したことについてネットでは忖度があるのではないかという問いに以下のように答えています。

「自分の知人にも子どもの頃の弱視のせいで今も分厚いメガネをかけている人がいる。忖度をしたのではなくて、気遣いといいますか。そういう風に解釈をしてくれればと思う」

 まず前提として、より良いものを生み出すためには様々な意見や批判は必要不可欠です。何かしらの政策を実行する上で、ある集団にはプラスに働いても、ある集団には至極マイナスになることがある。だからこそ、様々な観点からその政策を吟味することが大切です。こと増税に関しては、私たちの暮らしに直結するもの。日本の政治を司る内閣は、増税の意図と目的し、民意の声を聞かなければならない。そこに曖昧さや、何かしら裏が見え隠れすれば、非難を受けることもあるでしょう。

 一方、批判は決してある特定の個人を蔑んだり、揶揄したりするものではない。意見に対する批判が決して個人を軽蔑するような思想に繋がってはならないと強く感じます。今回の「増税メガネ」という表現。これは非常にいただけない。人の身体的特徴や補助器具を文字ってあだ名にすることは、紛れもなく誹謗中傷です。メガネという補助器具がある意味至極一般化しているからこそ問題にならないだけで、もし仮に岸田総理が義足を用いていたとして、「増税義足」などと言われたら、大問題になっていたでしょう。

 今は炎上というものが多く見られます。ある芸能人や政治家の言葉が不適切であった場合には世間からの厳しいバッシングを受けるでしょう。一方、「増税メガネ」という言葉は一般大衆から生まれたものであり、そこにはある人への批判が、いとも簡単に身体的特徴の揶揄と結びつくという危険性を帯びている。

 やく・みつる氏は、「忖度」して、柔らかい表現を用いていますが、私個人としてはもっと語気を強めても良かったのではないかと考えている。「増税メガネ」という言葉を簡単に認めてしまう風土を持つ国家が、人権を語れるわけはないのです。


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