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#528 ネガティブがポジティヴを凌駕する教育現場

 教員不足という問題が世間に知られてから、それなりの月日が経っていますが、未だ解決には至っていません。

 昨年末に行われた全国教職員組合の調査では全国の公立学校で3000人余の教員が不足しているとの結果も出ています。

昨年度行われた教員採用試験の受験倍率も過去最低を更新。全国の小学校の受験倍率は10年前の2013年では4.3であったのが昨年ではたった2.3となりました。

 文科省は3年前の2021年に#教師のバトンを開始。Twitterなどを活用し教員が若年層に仕事の魅力を伝えることで、教員志望者の増加を目的としていましたが、逆に開始直後より教員による労働環境の実態の訴えが目立ち、炎上してしまいました。

 一般論で言えば、より良い人材を企業に招きたい場合、その企業の「魅力」を発信することが大切だとされています。しかし、教員不足を解消するために必要なのは、「魅力の発信」ではなく、「不安の解消である」と教育学者の妹尾氏は述べています。

 

 妹尾氏は、「惰性」「労力」「感情」「心理的反発」という4つの「抵抗」に着目し、教員志望者減少の理由を分析しています。
「惰性」:自分がなじみのあるところにとどまろうとする欲求
・なじみのある地域で働きたい。住んだことのないところで就職するのは不安がある。
 ※実際、浜銀総研が大学4年生向けに行った調査(2022年2月、3月実施)によると、どの地域の教員採用試験を受験するかについて、「実家がある(近い)」という理由が断トツ1位だった。
・先に内定をもらった民間企業では、懇談会などで親しくしてもらったので、教員採用試験はもう受けなくていいと思う。
「労力」:変化を実行するために必要な努力やコスト
・教職課程でたくさんの単位を取るのは大変だし、教育実習や介護等体験でさらに忙しくなるのはイヤだ。
・教員採用試験対策は大変だし、面倒くさい。
・民間の就活やほかの公務員試験対策と教員採用試験対策を同時にやるのは、スケジュール的にも厳しいし、疲れる。
「感情」:提示された変化に対する否定的感情
・先生になると、4月からいきなり学級担任や部活動顧問をもたされて、うまくやっていけるだろうか。不安しかない。ややこしい保護者にあたったら、どうしよう。
・学校の先生は忙し過ぎて、休日もゆっくり休めないと聞く。私はプライベートも充実させたい。
・働いても働いても残業代が出ないなんて、理解できない。
・教育実習に行って、やはり私にはムリだと思った(ハード過ぎたり、職員室の雰囲気が悪かったりして)。
・親に「学校の先生は大変だから、やめておきなさい」と反対された。
「心理的反発」:変化させられるということに対する反発
・大学から「教員採用試験を受けろ」と繰り返し言われて、うんざり。あなた方の評価のために、私の就活があるわけではない。

 確かに教員の魅力について語ることはできても、今彼らが不安に感じていることを解決するには、学校自体の構造を変えなければならない。私は今でも教員が魅力的な職業であると思っていますが、様々な意味での「職場環境」を考えれば、ネガティブな要素がどうしても目に入る。実際同じぐらいの給与でもっと負担が少ない職種も多くある。、「やりがい」という言葉が通用しなくなったからこそ、「実質的な職場環境改善」が求められているのでしょう。

 

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