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Parsing Argumentative Structure in English-as-a-Foreign-Language Learner Essay

2021年度研究会推薦博士論文速報
[自然言語処理研究会]

Jan Wira Gotama Putra
(スマートニュース(株) ソフトウェアエンジニア)

邦訳:英語学習者エッセイの議論構造解析

■キーワード
言語学習支援
議論構造解析テキストの一貫性

【背景】英語学習者のための作文支援システム
【問題】多くの作文支援システムはスペルミスや文法誤りなどの表層的な誤りにしか対応できない
【貢献】テキストの議論構造を分析して,それ基づく適切な文の並べ方の助言する

Intelligent Argumentative Writing Assistant
邦訳:知能的論説作文支援システム

 深層学習(Deep learning)の有効性が幅広い分野で実証され,人工知能の応用範囲はますます広がっている.なかでも機械に人間の言葉を理解させることを目指す自然言語処理の研究への期待は高まっている.その応用のひとつとして言語学習者(language learner)の支援が研究されている.具体的には,人工知能技術によって学習者が書いたテキストを採点したり,テキスト中のスペルミスや文法誤りを指摘・訂正することで,教師の負担を減らすことが期待されている.また,言語学習者にとってもリアルタイムで適切なフィードバックを得ることによって効率的な学習が可能となる.

 言語学習支援において主に研究されているのは,スペルミス,前置詞の誤用,主語と動詞の一致の間違いなどのテキストの表層的な誤りの指摘や訂正にとどまっている$${^{5)}}$$.テキスト全体の構成や意味内容まで踏み込んで修正を助言するような研究はほとんどない.この研究では,英語を対象とし,学習者が書いたテキストに対して,文を並べ替えることによって,テキストの構成をよりよくすることを目指している.

 図に示すように,英語の議論的エッセイは,(1)序論(introduction),(2)主張(claim),(3)(主張を支える)理由・根拠(reason, evidence),反論(counter argument),(5)結論(conclusion)という構成になっていることが多い.これは英語の例であるが,テキストの構成は母語言語によって異なる場合がある$${^{1)}}$$.たとえば,日本語では背景から始めて最後に主張を置くことも珍しくない.英語を母語としない学習者が英語のテキストを書く場合は,英語テキストで一般的な議論の展開に沿って文を並べ替える必要がある.文を適切に並べ替えることによって,英語母語話者にも理解しやすい一貫性のあるテキストが実現できる$${^{1),2)}}$$.

 この研究では,学習者の書いたテキストを解析して議論構造(議論全体の流れ・理路のマップ,例:図c)を抽出し$${^{3),4)}}$$,議論構造中の各文の役割を考慮して文を並び替える手法を提案している.最初に議論構造を解析することにより,主張であると同定した文はテキストの先頭に移動し,その根拠は主張に続けるなどの整列を学習者に助言すること可能になる.また,教師の立場からすると,学習者の書いたテキストの議論構造を可視化し,分析することによって学習者に適切な説明・指導をすることが可能になる$${^{6)}}$$.この研究をさらに発展させることにより,将来的には,自動化による学習者ひとりひとりに適合した学習環境を実現し,言語学習がより楽しく効率的になることが期待できる.

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■Webサイト動画アプリなどのURL
https://www.americanprogress.org/article/future-testing-education-artificial-intelligence/#:~:text=challenges%20of%20AI-,Artificial%20intelligence%20can%20help%20students%20learn%20better%20and%20faster%20when,the%20naked%20eye%20cannot%20see.
• 本研究で開発されたソフトウェア
https://sites.google.com/view/tokyotechcl-tiara/
• 招待公演,インドネシア語のみ
https://www.youtube.com/watch?v=41grGqgJUM8
• 雑誌・学会発表
https://wiragotama.github.io/publication.html

参考文献
1)Putra, J. W. G., Teufel, S. and Tokunaga, T. : Annotating Argumentative Structure in English-as-a-Foreign-Language Learner Essays, In Natural Language Engineering, pp.1-27 (2021).
2)Putra, J. W. G., Matsumura, K., Teufel, S. and Tokunaga, T. : TIARA 2.0: An Interactive Tool for Annotating Discourse Structure and Text Improvement, In Language Resources and Evaluation, pp.1-25 (2021).
3)Putra, J. W. G., Teufel, S. and Tokunaga, T. : Multi-Task and Multi-Corpora Training Strategies to Enhance Argumentative Sentence Linking Performance, In Proceedings of the Eighth Workshop on Argument Mining, Association for Computational Linguistics, pp.12-23 (2021).
4)Putra, J. W. G., Teufel, S. and Tokunaga, T. : Parsing Argumentative Structure in English-as-a-Foreign-Language Learner Essays, In Proceedings of the Sixteenth Workshop on Innovative Use of NLP for Building Educational Applications, Association for Computational Linguistics, pp.97-109 (2021) .
5)Strobl, C., Aihaud, E., Benetos, K., Devitt, A., Kruse, O., Proske, A. and Rapp, C. : Digital Support for Academic Writing: A Review of Technologies and Pedagogies, Computers & Education, 131, pp.33–48 (2019).
6)Cullen, S., Fan, J., Brugge, E. van der and Elga, A. : Improving Analytical Reasoning and Argument Understanding: A Quasi-experimental Field Study of Argument Visualization, NPJ Science of Learning, 3(21), pp.1-6 (2018).

(2022年5月11日受付)
(2022年8月15日note公開)

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 取得年月日:2021年9月
 学位種別:博士(工学)
 大学:東京工業大学

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推薦文[メディア知能情報領域]自然言語処理研究会
小論文等の文章では議論の流れや構造が重要で,書くのも読むのも簡単ではありません.この研究では,英語を母語としない人が英語で書いた小論文を対象に,データセットを作成して議論の解析や順序の提案をする技術を開発し,有効性を明らかにしました.整った文章を書くサポートをするという,実用性の高い重要な研究です.


研究生活
  私は小さな田舎町で生まれ育てました.大都市に比べると勉強の困難がたくさん経験し,「将来に子供たちが皆な質の高い教育を受けるようにしたい」という関心を高めました.こうして,教育に関する研究テーマを取り組んでいました.博士研究員として専門知識はもちろん「life skill」も必要となる.最先端の論文や本を読むため英語能力が重要となる.研究にも実験の失敗も多いし,自分の生活が壊さないようにメンタルを強化しなければならない.留学生の私には日本語や日本の生活にも慣れしむ必要がある.つまり,知識のみじゃ足りません.幸いなことは,指導教員の徳永先生やSimone先生,ラボメンバ,多くの方に色んな意味で支えてもらって,博士号が取得できました.お世話になった皆様方に大変感謝いたします.

もし博士号の経験から一番重要なものをピックアップすれば「謙虚」のことだと考えます.「僕はまだまだだ」,「実際何も分からない」という経験が多かったです.こうして,多くの質問することが必要となる.質問(問題探し)がなければ,答え(発明)も出ませんのでぜひ質問してください.