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A Visualization System for Overviewing and Managing Parallel Group Discussions in an Online Classroom

2022年度研究会推薦博士論文速報
[ヒューマンコンピュータインタラクション研究会]

佐藤 安理紗 ジエンジエラ

邦訳:オンライン授業内の複数同時進行グループワークの状況把握と介入を支援する可視化システム

■キーワード
グループワークの可視化/オンライン授業/データ視覚化

【背景】オンライン授業において,教員と学生の間に「デジタルの壁」が存在し得る
【問題】オンライン授業では,教員が学生のグループを俯瞰するのが難しい
【貢献】グループの可視化が教員にどのように役立つかを調査した

 オンライン授業は,ソーシャルディスタンスを保ちながら,学生に教育へのアクセスを提供する.オンライン授業には,教員と学生がお互いに遠隔で学習できるなどのユニークな利点がある.しかし,オンライン授業には,「デジタルの壁」$${^{1)}}$$と呼ばれる,教員と学生が効果的にコミュニケーションできないといったデメリットもある.グループディスカッションのような授業は,教員が話のバックグラウンドを聞いたり,学生のやりとりを見たりする力が限られているため,学生と効果的に交流することが困難になる$${^{2)}}$$.

 そこで,オンライン授業で学生のグループディスカッションを指導する教員を支援するため,教員が学生のやりとりを知るのに役立つ情報は何か,その情報をどのように可視化するのがいいのか,について教員にインタビューをした.教員からは,「学生がいつ話しているか,黙っているか」「演習が終わったかどうか」「学生のグループから直接メッセージを受け取りたい」などの情報を知りたいという意見が出された.その中でも,教員は過度に詳細な情報ではなく,学生の状況を確認できることの重要性を強調した.

 これらの教員とのディスカッションをもとに,教員がどのグループがサポートが必要かを特定するために,各グループの発言時間やディスカッション状況を可視化するシステム,Groupnamicsを設計した.さらに,Groupnamicsのデザインが授業運営にどのような影響を与えるかを理解するために,教員を対象に,Groupnamicsと現在使われているツールを代表するベースラインシステムを使用してもらい,両システムの使用感についてフィードバックするユーザ調査を実施した.

 ユーザ調査により,教員はGroupnamicsをベースラインシステムよりも有用であると認識した.Groupnamicsによって,グループ内での会話の様子や,グループでの話しやすさ,親しみやすさを把握し,次に参加するグループを選択することに繋がるからである.私たちの研究は,今後の研究課題として,個々の生徒をどの程度詳細に可視化すべきか,また,共同執筆などの他の授業活動への応用を検討すべきことを示唆している.

■動画URL(YouTubeチャンネル用)
https://youtu.be/4p2JrOmJXjs

(2023年6月1日受付)
(2023年8月15日note公開)

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 取得年月:2023年3月
 学位種別:博士(工学)
 大学:東京大学

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推薦文[情報環境領域]ヒューマンコンピュータインタラクション研究会
本論文は,オンライン授業において複数グループに分かれてグループワークなど行う際,授業担当者が全グループの様子を同時に確認できるシステムを提案するものです.このシステムで授業担当者はどのグループに介入するべきかをより自信を持って判断できることが確認され,オンライン授業のより円滑な運営が期待されます.

研究生活  この研究は,誰もいないオンラインルームで学生の議論が終わるのを待ったり,別のコミュニケーションプラットフォームでメッセージを送って学生の様子を見たりした経験から着想を得ています.この経験から,従来の対面授業では,議論がどのように進んでいるのかを周囲状況から把握するために,背景について話を聞くなどのニュアンス的なやりとりが重要であることを実感しました.教員へのインタビューでは,対面授業とオンライン授業のギャップを埋めるための教員の修復力,柔軟性,献身的な姿勢を示すユニークな対策を学びました.

最後に,長く困難な3年間の間,この論文を完成に導き,絶え間ないサポートと洞察に満ちた議論をしていただいた指導教員と研究室のメンバ,私が前へ進むことを励ましてくれた家族や友人に感謝いたします.