短編小説 約束を守れない人

 今、私は珍しく苛立っている。如何せん、「14時集合で」といっていた人がいつになっても来ないのだ。集合時間を過ぎて人に待たされているのは由々しき事態である。それが、たかだか10分の遅刻ならまだしも、もう既に30分以上も待たされている。そろそろ、私は我慢の限界である。帰宅まで考え始めている。

 だが、ここは冷静になってみよう。約束を守れない人の特徴を今一度洗い出してみることにする。

 約束を守れないやつは、大体が己の力量を図れない人間である。例えば、その人間に何かの依頼をしたとき、その依頼を完璧にこなせるという自負があってやる人間と、何とかなるだろうと思いながらやる人間だと、後者の方が明らかに約束を守れない。ついでに、後者の口だけは一丁前だったりする。

 つまり、今回の彼は、何が何でも集合時間に間に合わせよう、ではなく、多分集合時間に間に合うだろう、という考え方なのだろう。それが悪いことではないのだが、人に迷惑をかけることであるという自覚を持ってもらいたい。悪気がなかろうと、人に迷惑をかけたということは理解してほしいものだ。

 前にあった、仕事の関係の依頼も、そんな感じで反故にされたことがあった。その人物への怒りはなかったが、もう二度とその関係の仕事を依頼をすることはないだろう。何か、別のことで依頼があったらするぐらいか。

 そんな風に考え始めると、自身も約束を破ったことがある。となれば、自分も全く彼らと同じ人種であると気づかされて、少し気分が落ち込む。怒る理由はないのだと、少し反省する。こういう時は、深呼吸でもして心を落ち着けるのだ。

 そして、心が落ち着ききったところで、ようやく遅刻している奴が目の前に現れる。

「お待たせ、今ついたぞ」

 私は、口では「遅い」と言いながら、心の中では晴れやかな気持ちで彼と相対することが出来た。

 約束が守れない人間でも、面白ければ別にいいのだ、と頭の中で再認識したのであった。

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