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老舗酒類メーカー・明利酒類が取り組む、地域とお酒をつなぐ新しいチャレンジ

こんにちは!

前回のnoteで、茨城県主催の「if design project」から私たちのチームが誕生した経緯をお伝えしました。


今回、私たちのプロジェクトの地元企業でもあり、企画をつくるにあたりご協力をいただいている明利酒類に、お酒を作る思いについてお聞きしました。

江戸時代末期創業!全国250蔵で使われている酵母をつくる明利酒類

明利酒類は、江戸時代末期の安政年間に創業した加藤酒造店が前身の茨城県の酒蔵の中でもトップクラスの規模を持つ総合酒類メーカーです。

「全国新酒鑑評会」で13回もの金賞を受賞している「副将軍」や2008年全国梅酒大会で日本一に輝いた「百年梅酒」など、たしかな実力を誇る老舗企業。

その他にも全国1位の出荷量を誇る干し芋や栗といった茨城の名産品を活用した焼酎や、クラフトジンといった新しいジャンルにも積極的に取り組んでいます。

また、モノづくりでも全国的に高い評価を得ており、「明利小川酵母」、「M310酵母」など、お酒をつくるうえで必要な酵母や醸造アルコールなどを全国の酒蔵へ向けて販売していたり、他の酒蔵にはない珍しい取り組みも行っています。


特に、「明利小川酵母」は、お酒の安定供給に向けて日本醸造協会が提供している「きょうかい10号酵母」として登録もされています。
この酵母は、全国およそ250蔵で使われるようになり、全国新酒鑑評会で金賞をとっているお酒の中には明利酒類の「明利小川酵母」が多く使われています。

酵母はお酒づくりには欠かせない大切な要素の一つです。
皆さんも明利酒類がいなければできなかった日本酒を、知らぬ間に口にしているかも知れません。


世代をとわず、食事に合う日本酒づくりへの挑戦

そんな歴史と実力のある名利酒類は、困りごとはないんじゃ...?と思いきや、意外にも5代目社長である加藤高藏さんはいま悩んでいることを話してくれました。

明利酒類は年に1回、地域の人たちに日頃の感謝も伝えるために、蔵開きのイベントを行っています。その他にもポップアップイベントも数多く企画していますが、そうした消費者と直接あって話せる機会を積極的につくっています。

一方で、「お酒のイベントに来るひとはいつも一緒で、お酒がもともと好きな方ばかり」ということを懸念しているそうです。

「私たちのお酒を好きになって、蔵開きといったイベントに毎回足を運んでくれるのは嬉しいんです。ただ、これからは新しい層にもアプローチしていきたいと考えています。」


明利酒類のお酒を好きになって飲んでくれているのは、高齢の方が多い。長期的に考えると若い人たちにも明利酒類のお酒が伝わっていない危機感が背景にあります。

昨今、若い世代のお酒離れや、お酒の中でも多種多様なジャンルのお酒が展開され、造り手たちを取り巻く環境は大きな変化を遂げています。
そのような現代において、茨城や明利酒類のブランドの強みがあまり出せておらず、県内外の幅広い消費者に届けられていないのではないか、と加藤社長は考えています。

また、茨城のお酒を地元の人たちに飲んで欲しい、という考えもあるそうです。(※水戸市でもこの地産地消の流れを後押しすべく、乾杯条例が制定され、より地元で消費されるように流れを作ろうとしています。)

そこで、最近のトレンドを汲み、新しい層へアプローチをすべく、様々なチャレンジを行っています。

例えば、商品開発の観点。
「魔法少女まどかマギカ」のキャラクター原案を手掛ける蒼樹うめさんにパッケージデザインを依頼して梅酒の販売したり、最近話題のクラフトジンにもチャレンジしています。

多くの人に届ける、という観点では、SNSを積極的に活用して、多くの消費者に明利酒類の情報を届けることも。

(ちなみに、横浜に誕生した商業施設ハンマーヘッドにあるQUAYS pacific grillではクラフトジンの技術提供をしており、明利酒類仕込みの自家製クラウトジンを味わえます!)

このように様々な新しいチャレンジに取り組んでいる明利酒類ですが、特にこだわりが強いのが、創業から長い間携わってきた日本酒。

明利酒類が特に直近意識しているのは、食事に合う日本酒です。

この1本は、「空けたらいつの間にかなくなる」ことを目指した日本酒とのこと。
まさに晩餐の食事を華やかに仕立て上げてくれるお酒で、熱燗でも冷やでも冷酒でも、その時の季節や食事に合わせて美味しくいただくことができます。


茨城を、酒処としてリブランディング

加藤社長が描こうとしている未来は、明利酒類のお酒が新しい層にアプローチできることではなく、茨城が酒処であることを広く伝えるというものです。

加藤社長は明利酒類だけでなく、茨城県酒造組合の副会長という側面も。

人一倍茨城に思いを持ち活動しているからこそ、茨城全体のお酒を盛り上げていきたいと考えています。

「新潟や山形、福島といった雪国を中心に、酒処としてのブランディングができている。茨城もお酒のリブランディングをしていきたい」

茨城は雪こそ多くは降らないものの、関東では酒蔵の数が1番多い。
そして、そのリブランディングをするための土台は徐々に整いつつあります。

一例として、高齢化が進む酒造り業界。茨城の酒造りに多大な貢献をして来ていただいた南部杜氏も、高齢化は大きな問題になりつつあります。
茨城ではこの課題を解決しつつ、未来の茨城の日本酒を守り、育てていくために、若手の担い手を育てる、常陸杜氏という認定制度を新たに作りました。

初回に認定された一人である浦里美智子さんは、結城酒造で杜氏として「結」を作っています。
小規模な運営ながら、確かな味やラベルが目を引き、口コミが幅広く広がった結果、現在は出荷量の40%が東京で嗜回れているそうです。

こういった未来の茨城のお酒を作る動きには加藤社長も注目していて、明利酒類としても盛り上げていきたいと考えています。


最後に

加藤さんのお話をうけて、私たちもその思いを実現するためにできることは何かをあらためて考えるきっかけになりました。

じつは、2月29日に実施する予定だったはじめてのポップアップイベントは新型コロナウイルスの影響で延期になりました。

それでも自分たちができることを見つめ直しながら、活動を続けていきたいと思います。


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ライター:しいたけ

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