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続 染まらないで帰って

⭐️⭐️⭐️⭐️
(星の数でこの記事のオススメ度を
5段階で評価しています)

皆さんこんばんは
フリックフラックの髙橋壱歩です。

いつも僕の記事をお読みいただき
ありがとうございます。

今日は3ヶ月前ほど前に書いた
この記事の続編です。



全然この記事から読んでいただいても
何の支障も無いんですが
できれば前回の記事から
お読みください。


それではスタートです。




さて、僕が上京してから
4ヶ月半が経ちました。


晴れを忘れてしまうほど
長く続いた梅雨の時期を
通り過ぎたかと思えばこの猛暑

皆さんはいかがお過ごしでしょうか


僕の方は、養成所の授業とバイトと
家との往復を繰り返すという
忙しくも退屈な日々を
過ごしております。

東京に来る直前、
大阪に住んでいる大学の後輩から
こんなことを言われました。


「壱歩さん、東京行っても
僕たちのこと忘れないでくださいね。
僕たちはずっと関西にいますから」

他にも中高の同級生から
こんなことを言われました。


「大阪帰ってくることもあるやろ。
そん時は連絡くれよ。
ライブも見にいくし」


この2人が一体どのくらいの熱量で
どのくらいの思いで
僕にこんな言葉をかけてくれたのかは
今となっては明確には
わかりませんが
上京する人間に対して
ある面ではあくまで形式的に
ある面では個別的かつ感情的に
思いを伝えてくれたのだと
僕は受け止めています。


上京したての4月のことでしょうか


僕が大阪にいた頃から仲が良かった
東京のサークルの先輩に
会う機会がありました。

その先輩と会い、
話をしている最中に
こんなことを言われました。


「お前さ、会話の途中に
『気悪い』ってたまに使うだろ?

それやめた方がいいよ。

こっちの人引くよ?

関西の人は結構使うのかもしれないけど

こっちでは使わない方が良いよそれ」


衝撃的でした。

確かに僕は
『気悪い』という表現を
割と頻繁に使ってしまっていました。


ただ、その言葉を使うことに対して
注意されたことなど
今まで一度も無かったし

関西の人が使うこの『気悪い』という
台詞を関東の人がよく思っていない
ということもその時はじめて知ったのです。

その指摘をされた僕には
「直さないといけないな」
という感情と同時に
「気悪いなぁ」
という感情が湧き上がってきました。


僕はどこまでいっても関西人なんだなと
思いました。




この呪縛からは逃れられないし
逃れようともしないんだろうなと

5月の終盤ごろでしょうか
この記事にも書いたんですが



僕の身の回りで
ある印象的な
出来事が起こりました。

もうこの記事を読んでくださった方も
いると思うので
簡単に説明しようと思います。

僕がバイト先でレジを打っている時の話です、


あるお客さんが僕の目の前にきました。


僕と同い年くらいで
大きな大きなリュックサックを
背負ったお客さんでした。


接客中、そのお客さんが
話しかけてきたのです。


「お兄さんは、
関西のどちらですか?」


そのお客さんも関西の方だったのです。


しかも、よくよく話を聞いてみると
同じ大阪

「東京には何をしに来られたんですか?」

と尋ねると
彼は真っ直ぐな目で
溢れるような自信を滲ませた笑顔で
こう答えました。


「夢追いです。」


正直、言われた瞬間
圧倒されてしまいました。

日常生活での表現で
たまに「かます」という
言葉を使う事がありますが
その時、その瞬間、
僕は確実にその男性に
「かまされた」のです。

彼にとってはただのコンビニ店員との
会話ですから
「かます」必要なんて
これっぽっちもないはずです。

しかし、そんな状況でかまされたのです。

面食らっていると
同じ質問を返されました。

「お兄さんは何で
上京して来られたんですか?」

「僕も夢追いです」


考えるよりも先に言葉が
口から出てきていました。


「そうですか!お互い頑張りましょうね!
じゃあ!」


彼は面食らった様子も無く
さっきよりも純度100%に近づいた笑顔で
その場を立ち去りました。


「良かったらまた来てくださいね!」


大きなリュックサックを背負った
背中に僕はこんな言葉しか
かけることができませんでした。


何もできなかった。

何もかませなかった。


でもね、
嬉しかったんですよ、


この時僕、
嬉しかったんです


その嬉しさの正体はわかりません

でも家に帰ってからも
しばらくその日の出来事を
忘れることができませんでした。


この東京という街で
大阪という同じ街から来た
同い年くらいの人間が

僕と同じように夢を追っている

ただそれだけのことが

僕には何だか嬉しかったんですよ。

ここから数回、
似たような出来事が起こりました。



これらの記事にも
書かせていただいたのですが
色々な関西の方が
僕に話しかけてくれたのです。

僕は接客にただ関西弁を
織り交ぜているだけだったのですが
それに気がついたお客さんが
話しかけてくれるように
なったんですよ。


今までは受け身で見つかるのを
ただ待っていただけだったのが
もはや僕の方から積極的に
探すようにまで
なったのもこの頃のことでした。


そして、つい数日前にも

あるお客さんが来ました。


そのお客さんは
僕の両親よりも少し年上くらいの
男性でした。


接客が終わりかけた頃、
僕にこんな言葉を
投げかけてくれたのです。


「兄ちゃんも関西やろ!

なんか、安心するわ」


その時僕は気がついたのです。


そうか、安心するのか



そう、安心するのです。


東京に働きに来た大阪人は
他の大阪人を発見すると
安心するのです。


これは他の都道府県から来ていても
もしかしたら同じなのかもしれません。

でもそれは僕には確かめようもないことです。
わかりません。


でも、確実にわかるのは
大阪の人間が他の街で
大阪の人間と出会うと
安心するということ

僕は今まで
関西の人間に話しかけられる度に
安心していたんだなぁと
その瞬間全てが解決したような
気がしました。


更に逆の立場で考えれば
安心は得ると同時に
与えるものでもあることに
気がつきました。

そうか、
自分が安心を与えられていた
この数ヶ月間の
あの数回の出来事で

自分自身も
安心を与えていたのかもしれない。

そしてこれらの一連の出来事から
僕は改めて痛感したのです。


僕は関西の人間なんだと


僕は大阪が好きなんだと



大阪という街で生まれ育って
今は離れているかもしれない


でも『大阪』という街を
僕はこれからも愛し続けるんだ


そのくらい僕の心の中は
大阪への温かい愛で溢れている


溢れていた、、

溢れていたと思っていたのです、、、





上京して2ヶ月ほど経った頃でしょうか

その日僕は、アルバイトを終えると
家にはまっすぐ帰らず
コンビニに寄ることにしました。


晩御飯を調達するためです。

バイトの休憩中
何も食べないと
お腹が減り過ぎてしまうので
軽食は摂るのですが
それだけだと足りないので
家に作り置きなどが無くなり
これから自炊するような元気もない時は
こうしてコンビニに寄るのです。


いくつかのお惣菜を選んで
レジに行きました。


この時まだ同居人である
キイロイゾウサンの2人は
日本一周から帰ってきておらず
家に帰っても1人

1人で何をしようかなぁ
なんて考えながら
少しぼーっとしていると

店員さんに話しかけられました。


「お客さま、お支払いはどうしましょう」


「あ、すいません」


僕は、先ほど駅でチャージしたばかりの
ICOCAで支払いをしようと
思いました。


「交通系ICでお願いします。」


「Suicaですね、かしこまりました。」


商品を受け取って
店を出ました。

皆さん今のこの一連のやり取りに
少しだけ違和感を抱いたのではないでしょうか


では、その違和感の正体を解き明かしたいと
思います。


まずはじめに
それはおそらく
僕が、

『ICOCA』

のことを

『交通系IC』

と表現したことにあるでしょう


ではなぜ僕は
『交通系IC』と表現したのでしょうか


これにはいくつかの理由があります。


まず1つ目

僕自身もコンビニでアルバイトをしているので
わかるのですが
1日中レジを打っていても
やはり交通系ICカードで支払いを
するお客さんは非常に多いです。

全体の2割くらいは
占めているのではないでしょうか


しかし、交通系ICで支払いをしている人のほとんどは
SuicaかPiTaPaです。

これは僕の体感なので
はっきり調べたわけではないですが
東京ではICOCAを使っている人など
ほとんど見ないのです。

ゼロなのではないかと思うほどでした。

大阪ではメジャーなICOCA
東京ではかなりマイナーに
なっているのです。


ですから、今回の買い物でも
僕が使うのはICOCAであり、
僕は「交通系IC」としか言っていないにも関わらず
勝手にSuicaであると断定されたわけです。


もし、
「ICOCAで」と言ったとしても
おそらく通じるでしょうし
スムーズにお会計は進むでしょうが

それでも
「ICOCA?あー、交通系ですね」
となる確率が少しでも残っている以上

僕としては
「交通系ICで」と申告した方が
確実なのです。
だから僕は広いジャンルで
言うようにしていたのです。


次に2つ目の理由です。

もしかしたらこっちの方が
大きな理由かもしれません。


それは

「ちょっと恥ずかしい」

と言う点です。

1つ目の理由でゴチャゴチャと
詭弁を垂れ流しましたが
本当は
こんなに使っている人が少ない
『ICOCA』というものを
東京に来て数ヶ月経っているのに
まだ使っているという事実が

少しだけ恥ずかしいというか

「ICOCAで」

と胸を張って言うことが出来ない
一つの要因になってしまっていたのです。




『ICOCA』

って

『行こか』

から来てるよなぁ

関西弁丸出しやん

でもこの関西弁丸出しのネームングと
なんとも言えんこの水色と
この別に可愛くもないペンギンの
イラストが
なんか良いなって思ったりもするんよなぁ




家に着きました。

今更Suicaに変えるのもなぁ。


僕の使っているICOCAは
確か2代目

僕が大学入学時に
入学祝いとして
僕の叔父さんから貰ったものでした。


中にはあらかじめ10000円が
チャージされていました。


それを使わず
何かあった時のために
そのまま置いていたのですが
大学2回生の時、
財布を無くしてしまい
1代目のICOCAも
一緒に居場所がわからなく
なってしまった時から今まで

約5年間
ずっと活躍し続けてくれたのです。

確かに最近少し反応が悪いかもしれない。


改札は何なく通れるが
パスケースの中にレシートが
溜まっていたりすると

自動販売機でジュースを
買うときなどは
反応が鈍かったりする。


もう変え時なのだろうか

それからまた1ヶ月ほど
ある日のことです。


その日僕は
ネタ合わせをするため
りつきが住んでいる
シェアハウスへと向かっていました。


駅に着き、
改札を通るため
カバンの中から
パスケースを探しました。

あれ?


見当たらないのです。

その時に気がつきました。

うわ、ICOCA忘れた。

皆さんも経験したことが
あるのではないでしょうか


その頃僕はパスケースを
生活に導入したばかりでした。


今まで
財布とスマホさえ持っていれば
何とか出かけることが
出来ていたはずなのに

ICOCAを入れるパスケースを
買ったことにより

まだその持ち物を
持ち歩くという作業に慣れきっておらず
忘れる
という


新しい持ち物増やした時あるあるが
その時の僕にも
襲いかかってきたのです。

時計を見ました。


僕が乗るはずの電車の発車時刻が
迫っていました。

しゃあないなぁ


切符売り場の前に立つと
蜘蛛の巣のように張り巡らされた
路線図を見ました。

そもそもここはどこやねん!

駅の路線図ってなんであんなにも
ややこしく作られているんでしょうか


僕は路線図から
切符の料金を割り出すことを諦め、
スマホで検索することにしました。

178円

よし、178円やな。


タッチパネルを操作し
目当ての切符を探します。

しかし、
178円の表示が見つからないのです。

あれ?

なんでやろ


180円はあるのですが

それより下が見つからないのです。


もうええわ


180円の切符を買うと僕は
改札を通り抜け

電車に乗り込みました。

ギリギリやったなぁ

切符を買うのに戸惑ってしまったせいか
僕がホームへの階段を降りた瞬間
電車が滑り込んできました。

長い間、ICOCAやSuicaなどの
交通系ICを使った生活に慣れていると
昔、切符生活を経験していても
切符を買うことに煩わしさを覚えるものです。

切符めんどくさいなぁ

ていうか何で178円無かったんやろ

電車が動きはじめて
僕の上がった息も整った
その時、思い出しました。


電車の運賃はICカードの時は1円単位
切符や定期の時は10円単位で
運用されているということに


そうや、そうやった


昔何かの機会に調べて
頭の片隅に残っていたのです。


しかし、今日はICOCAを忘れ
電車の時間も迫っていたことで
気が焦ってしまい
そんな簡単な事実にも
気がつかなかったのです。

そうか、俺はそんなに焦っていたのか


しばらくすると
りつきの家に着きました。


そこから数時間後

一通りネタ合わせを終えた僕たちは
お互いに用事があったため

駅まで一緒に行くことにしました。

改札を通ろうとして
あることに気がつきました。

あ、そうや

俺今日ICOCA忘れたんやった

「りつきちょっと待って
俺今日ICOCA忘れてん
切符買わなあかんわ」

再び切符を買います。


面倒臭いなぁ


ここまで来ると
昔の僕はよく毎回毎回
切符を買っていたもんだなぁ
と思いました。

切符の方が毎回買わなあかんから
面倒臭いし
運賃も調べなあかんし
無くしやすいし

今切符で生活してる人は何!?


頭の中で文句を垂れ流しながら
改札を通ります。

りつきと一緒に電車に乗り
ネタのことを話しながら
しばらく揺られていると

目的地が来たりつきが
先に降りました。


「お疲れー、気つけてな」


「お疲れ」

1人になりました。


窓の外を通り過ぎていくビル街
中でどんな人が何の仕事をしているのかも
わからない

そんな味気のない景色を
あてもなく眺めていると

ある悪魔的な考えが
僕の頭の中を支配しました。




今日、Suicaに変えよう





その考えを思いついた瞬間、
自分自身に一番驚きました。


え、今?


今日変えてしまうのか


忘れたことをきっかけに?


いや、今日じゃなくてええやろ


何で今日?

でも、変えるとしたら今日なのか?


でもICOCAの中に残った
金額はどうしよう


そんなもんは適当にどこかで
買い物すれば大丈夫か

え、ちょっと待って


変える方向で
話進んでない?




僕が色々なことを
考えている間にも電車は
定期的に駅に停車し
数人の乗客を吐き出し
数人の乗客が乗ってくる


その単純作業を繰り返しています。

でも、まだICOCAは使えるし

あれは叔父さんに貰ったやつやし


僕には『おじさん』と呼ぶべき人物が
全部で4人います。

でも今どこで何をしているのか
どう過ごしているのか
わかるのはたった1人だけです。

他の3人は何をしているのか
全くわかりませんし
1人に関してはまだ喋ったことも
ありません。

僕が小さい頃話しかけても
無視をされたのです。

でもそういう人なんです、

そういう人達なのです。


でも、そんな中でたった1人だけ
僕のことを可愛がってくれた
叔父さんがいます。

それが大学の入学祝いに
ICOCAをくれた
あの叔父さんだったのです。


僕のnoteでは度々登場しています。


貰った時ICOCAに入っていた
あの10000円は
もうとっくの昔に使い切ってしまいました。


でもそこから、継ぎ足して継ぎ足して

それこそ老舗の鰻屋のタレのように
何とか残金が絶えることのないよう

僕はICOCAを使い続けてきたのです。


そういう意味では
あの10000円のうちの
もしかしたら
1円くらいは残っているのかもしれません

そのICOCAを

そのICOCAを捨てて

僕はSuicaにしてしまうのか?

上京する時、
色々な人からメッセージを頂きました。

「壱歩、お前東京行っても染まんなよ!」


「壱歩が大阪帰ってきて
標準語なってたら、嫌やなぁ」


その度に僕は思っていました。

そんな事になるわけがない。

俺が染まるわけがない。

俺に限ってそんなこと
あるわけない。




ピンポン ピンポン ピンポン


気がつけば乗り換えのために
降りる駅に
到着していました。


膝の上に抱えて持っていたリュックサックを
肩にかけ、急いで電車を降りました。

切符を握りしめ改札を通り抜けます。

視線を上にあげ、
乗り換えるべき路線の方向を
探します。


こっちか

数100メートル進むと
再び改札が見えてきました。


改札の横には
切符売り場がありました。


買う




今から俺はSuicaを買うんだ。




券売機の前まできました。

大阪時代にお世話になった人たちの顔が
思い浮かびました。

やめるとしたら今だ

今しかない。

もうタッチパネルを押したら
後戻りできないぞ?

でも…

Suicaにした方が…

2円くらい安いし…

切符やと、
10円単位でお金取られるし…


切符よりSuicaの方がはやいし


ICOCAやとちょっと………


恥ずかしいし、、、





気がつけば僕は
5000円札を券売機の中に
吸い込ませ


5000円分チャージされた
Suicaを右手に握りしめていました。

Suicaの表面には
『タカハシ イッポ 様』と
僕の名前がしっかりと
印字されていました。




僕が
無記名のものではなく

記名式のMy Suicaを選んだのは

僕自身がこれからはSuicaを
使っていくのだという
決意の現れ以外の何者でもありませんでした。


ついに


ついにやってしまった。

変えてしまった。




その時、
僕はある曲の歌詞の一部を
思い出しました。


恋人よ 君を忘れて
変わってく ぼくを許して

これは僕の好きな太田裕美さんの名曲
『木綿のハンカチーフ』


その中でも特に好きな歌詞でした。

約5年間
辛い時も悲しい時も
楽しい時も
いつも一緒にいたあのICOCA

家で僕の帰りを待っているのだろうか


どんな時でもいつも一緒にいた
あのICOCAは

もしかしたら僕にとっては
恋人のような存在だったのかも
しれません


僕は

僕はもしかしたらもう既に
都会に染まってしまったのかもしれません。




あれだけ染まらない自身があったのに



でも見てください

見間違うような Suica持つぼくを


え?

ICOCA持つぼくが好きだった?


許してください

変わっていく ぼくを




変わっていく ぼくを許して

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