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「みんなちがって、みんないい?」日本企業の多様性の誤解と本質を考える。


はじめに

日本企業における「多様性」という言葉は、近年、ますます重要性を増しています。その中で、「みんなちがって、みんないい」というフレーズは、多様性とインクルージョンを象徴するキャッチフレーズとして広く受け入れられてきました。

多様性の誤解について

「みんなちがって、みんないい」という言葉の背後にある意図は、多様性を肯定的に捉え、それぞれの個性や能力がチームや組織にとって価値あるものであることを認識することにあります。

しかし、日本企業の中には、この言葉を誤解し、「多様性」という概念を、既存の枠組みや慣習を変える必要がない、という言い訳として利用してしまう場合があります。

特に年長者や立場の強い一部の層に見られるこの傾向は、多様性の本来の意義を見失わせ、組織内での革新や成長の機会を損なってしまいます。

例えば、若手社員が新しいアイデアや変化を提案したとき、それが「多様性だから」という理由で単純に受け入れられず、「みんな違って、みんないいのだから、私たちもこのままで良い。」と、既存のやり方や上層部の意見を尊重する風潮が強い企業があります。

このような状況は、実際には多様性の理念とは逆行しており、新しい視点やアイデアが生きづらい環境を作り出してしまいます。また、性別や年齢、出身背景といった多様な要素に基づく偏見や固定観念も、多様性を正しく理解し実践する上での大きな障壁となり得ます。

例えば、女性社員やLGBTQ+の社員が自らのアイデンティティや、本当は大切にしたい価値観を隠さざるを得ない、またはそれがキャリア上の障害となるような企業文化は、真の多様性の実現を妨げる要因です。

BeingとDoingの重要性

「みんなちがって、みんないい」。この言葉には、多様性に対する深い尊重と理解が込められています。Being(在り方)とDoing(やり方)の構造を理解することで、その真意を考察してみましょう。

多様性におけるBeingとは、個々人の存在を認め、その多様性を価値あるものとして尊重することを意味します。例えば、日本では、LGBTQ+の人々が社会的に「存在しない」とされる法律や規範がまだ見られます。これは、ライオンが、ライオンであってはならない、と言うことに等しく、存在そのものを否定することです。この状況に対して、「みんなちがって、みんないい」という言葉が、存在を認め合うことの重要性を問いかけています。

一方でDoingは、Beingを土台とした具体的な行動や方針を指します。

「ライオンはライオンである。」という存在承認が、Beingの部分で、「みんなちがって、みんないい」の表現している部分です。

一方で、例えば、ライオンとウサギが共存していく上で、「ライオンは、ウサギを食べない。」という具体的な「行動規範」や「ルール」がなければ、ウサギにとって安全な環境は生まれません。つまり、「みんなちがって、みんないい」はDoingの部分を指していません。

Beingが異なるからこそ、お互いを尊重するDoingのためのルールが必要となってきます。

同様に、職場においても、多様な個性やバックグラウンドを持つ人々が共に働き、成長するためには、相互理解と尊重に基づく「行動規範(ルール)」が必要になります。

日本企業の多様性の取り組みにおいて、この「Doing」と「Being」の部分が混同されているケースがしばしば見受けられます。

多様性を表面的に受け入れるだけでなく、具体的な行動や方針を通じてそれを組織の成長や成熟にどう活かすかが重要です。

Beingは違うという理解の元、個々の違いが尊重されたDoingを生み出すサイクルが回っている時、初めて多様性は組織にとって真の力となり、持続可能な成長とイノベーションを促進する源泉となります。

これを可能にする一つの方法が、対話です。多様性が活かされる組織とは、異なる価値観、意見を持つ者達が、お互いを聴き合う行為が日常にある組織です。

おわりに

日本企業における多様性の誤解に着目し、多様性が真に組織文化の一部となるために必要な「Being」と「Doing」の構造について考察してきました。

企業における多様性とは、単に異なる存在を許容するだけでなく、それぞれの違いを認め、尊重し、さらにはそれらを組織の成長や成熟に活かしていく行動と方針が伴うものです。

そして、その行動と方針は、対話を通して組織を構成する多様な個を反映する形で変化していくことで、磨かれていきます。

日本企業における多様性の理解は、現在進行形で深まっているものの、まだ誤解されている側面があります。

多様性(Diversity)とは、さまざまな背景や属性を持つ人々が受け入れられる状態を意味し、この多様性が尊重され、全員がその能力を最大限に発揮できる環境、すなわちインクルージョン(Inclusion)を整えていくことが重要です​​。

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