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行政、議員、事業者、教育関係者 様々なステークホルダーと語らう防災の夕べ | 風水害24 (前編)

2021年8月30日。防災週間の始まりに『風水害24』というコンテンツを縁に集まった多様な立場の人々と、オンラインで防災について語り合う「防災の夕べ」を実施しました。
ゲストの皆様にたっぷりお話いただいた内容をこの記事から前編・中編・後編と三部に分けて皆様にお届けしたいと思います。
(モデレーター:小菅 隆太 issue+design)

中編 | キートーク「防災への備え」はこちら

後編 | トークセッション「体験ゲーム+α必要なこと」はこちら

風水害24とは
大規模風水害の接近から直撃・通過までの24時間をリアルに体験することを通じて、風水害発生時に必要な知識を学び、適切な判断や行動ができるような、風水害リテラシーを高めるプログラムです。


「風水害24」プログラム開発の背景​

ーまず開始にあたってということで、開発担当の一人、issue+design佐藤からこのプロジェクト全体の成り立ちを紹介してもらおうと思います。

佐藤
よろしくお願いします。
令和元年(2019年)に千葉県を襲った連続台風は記憶に新しいかと思います。
この時、開発メンバー自身も情報収集に努めたり、場合によってはオフィスに避難したりしていたのですが、それぞれが離れて暮らす家族に連絡をして得られた共通の回答は「今までも大丈夫だったから今回も大丈夫」でした。

風水害による被害は、地震など他の天災と違って到来が予測され、行動する時間が残されていることが特徴でもあります。
にも関わらず、「危機に気付かず、命が失われていく状況を変えるため、私たちに何が可能か?」という問いからこのプロジェクトはスタートしました。

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ー具体的には、どのようにプロジェクトが始まっていったのでしょうか。

佐藤
まずはリサーチとして新聞記事の読み込みからはじめました。
平成29年(2017年)から令和元年(2019年)にかけて日本各地を襲った5つの風水害について調査を進め、刻一刻と台風が迫る中、どう情報を収集し、どう判断し、どう行動するのか?これを自分ごととして学べるプログラムとして、ゲーム型のコンテンツを開発するに至りました。

ただし、このプログラムを世にリリースしたとしても、実施できるのがissue+designのメンバーだけになってしまうと、どうしても広がりには限界があります。
そこで、全国各地でこのプログラムを実施いただくため、ファシリテーターを育成する養成講座を実施。受講者とプログラムの運営方法・ツールを共有し、各地で実践を広げていただく設定としました。
今日現在で全国に86名のファシリテーターが誕生。教育、地域防災、企業や自治体での研修など幅広くご活躍いただいています。

行政の課題解決におけるデザインの大切さ

ー本日のイベントの共催パートナーでもある、神戸市市長室広報戦略部広報コンテンツ担当課長 本田亙さんにもここからご参画いただきます。

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ーissue+designの設立当初から10年以上にわたりお世話になっていて、もはや生みの親、お母さんといった感覚もありますね。これまでのissue+designと神戸市の関係といったところを、ご活動も踏まえてお話いただけますでしょうか。

本田 
よろしくお願いします。
ちょうど神戸市がユネスコの創造都市ネットワークのデザイン都市認定されたあたりからのお付き合いになりますかね。
「デザインの力で社会全体の力を底上げしていく」ことを目指し、私たちが行政職員として日々行なっている日常の業務にデザインの考え方を生かせないか?と取り組みを探す中で代表の筧さんに出会い、共鳴する部分がすごく多いなということで色々とご一緒するようになりました。

大きな転機は、東日本大震災だったかと思います。自分が災害派遣で仙台の避難所を訪れた際、震災+designという取り組みから生まれた「できますゼッケン」が瞬く間に広がっていく様を目の当たりにし、行政の課題解決におけるデザインの大切さというものを改めて感じました。

神戸市としてご一緒してきた取り組みとしては、他にハザードマップをわかりやすくお伝えする「ココクル」、精神疾患についてゲーム感覚でストレスの度合いを算出できる「ストレスマウンテン」などがあります。

どうしても行政は「これしちゃいけませんよ、これしないとあかんで」という義務に近い発信になりがちなんですが、このデザインという要素を取り入れることで市民の方に「面白そうやな、やってみようかな」と思っていただき課題解決につなげていく。そんな取り組みをご一緒してきましたね。

ー風水害24についても、神戸市で体験会開催にご尽力いただきましたね。

本田
会場になった灘区民ホールは、隣に都賀川という大きな川が流れているんですね。ここは平成28年(2008年)の水害で亡くなられた方がいらっしゃる川でもあるんです。
神戸市は山と海が近いということもあり、昭和13年(1938年)の阪神大水害に代表されるように一度大雨が降ると非常に危ない地域でもあります。若い世代の方はこのプログラムにどんな反応をするんだろう?という思いもあり、子育て世代を中心にお声がけをしました。

ご家族で参加いただいた方も多く、子どもさんがゲームとして楽しんでいるのを大人も一緒に真剣になって取り組んでいる、という印象でした。

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佐藤
神戸市ということで、阪神淡路大震災を経験された方も多かったですね。「自分は最後まで生き残ることができたが、同じ地域にまさかハザードマップを確認することなくゲームを終える人がいるなんて思いもしなかった」という、住民間の防災意識の違いについての感想もありました。

ゲームの中には「地域住民に避難の声かけをする」という選択肢も出てきます。ご家族と一緒に参加してくれた小さなお子さんが「もっとたくさんの人を助けたかった。どうしたら助けられる?」と問いを持ってお帰りになる姿に、改めてこのプログラムの価値を確信させてもらった思い出深い回です。

ー全国各地、多様なステークホルダーの皆さんにお集まりいただいたキートーク「防災への備え」の模様は中編、「体験型ゲーム+α必要なもの」というテーマで展開したトークセッションの模様は後編にてご紹介してまいります。



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