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行政、議員、事業者、教育関係者 様々なステークホルダーと語らう防災の夕べ | 風水害24 (中編)

2021年8月30日。防災週間の始まりに『風水害24』というコンテンツを縁に集まった多様な立場の人々と、オンラインで防災について語り合う「防災の夕べ」を実施しました。
中編となる今回は、全国各地、多様なステークホルダーの皆さんにお集まりいただいたキートーク「防災への備え」の様子をお届けします。
(モデレーター:小菅 隆太 issue+design)

前編 | プログラム開発の背景と、行政の課題解決におけるデザインはこちら

後編 | トークセッション「体験ゲーム+α必要なこと」はこちら

CASE1:令和元年の風害、水害連続台風体験を経て

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篠田
茂原市は、千葉県の中心あたりに位置する人口8,600人ほどの市になります。
令和元年(2019年)の連続台風では、水害の復興に加え感染症への対策というのも同時に求められるようになり、復興がコロナの影響で阻まれる、避難所での感染予防策はどうするのかなど様々な課題に直面してきました。

市では、この災害で床下・床上浸水、家屋の全壊・大規模半壊といった被害が発生し、4,720件にのぼるご相談が寄せられました。被災住宅支援として、災害直後から職員が集まって対応策を検討。厳しい状況下ではありましたが千葉県庁や建築士会、行政書士会、様々な専門家の方と連携して災害発生から一週間ほどで相談窓口を設置することができました。

水害を経験して思うことは、日常との向き合い方が大切、ということです。
今、何が必要なのか。何をすべきなのか。有事の際に見極め決定する力を身につけるためには、平時からどう対応するのかを考えておくことが非常に大切であると感じています。

CASE2:議員活動、次世代教育を通じて構想する未来

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笹本
埼玉県狭山市は、人口15万人ほどの企業城下町として発展してきたまちで、令和元年(2019年)のハギビス台風で被害を被った地域になります。

消防団の活動を通じて地域の防災・減災という領域に関わっておりまして、「次世代教育で広げたい地域の未来」をテーマに、いただいた恩を次の世代につなげていく。という温かい優しい気持ちの連鎖を生み出していくことを目指し日々活動しています。

例えば、地域の寺子屋教室という形で高齢者と子どもたちが交流する機会を作っています。立場の違う人同士では、なかなかお互いの抱えている状況はわからないものですが、ここでゲームなどを活用して交流することで、世代間の分断を乗り越えていく、ということが起こっています。

風水害避難やSDGsについて伝えたいと思っても、真面目な勉強会では参加をしてもらいにくい現状があります。面白い、楽しいと思いながら参加でき、かつ自分の行動を振り返りながら学んでいけるという点で、ゲーム型プログラムの役割は大きいなと思います。

特にこの『風水害24』は、行動によっては自分が死ぬ、地域の人が亡くなってしまうという結果が生じます。普段の勉強では、なかなか誰かが死ぬという言葉は口にしづらい部分がありますが、ゲームだからこそ、タブーになりがちな事柄についても話し合える側面もあるなと感じています。

CASE3:SDGsから考える防災

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神田
私がSDGsについてお話する時に最初に聞く質問は「地球で起きている問題にはどんな問題があるでしょう?」なんですが、中学生から一番多く出てくるキーワードは「地球温暖化」で、危機感を感じている子どもが非常に多いな、というのを感じるところです。

SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略称で、日本語では「持続可能な開発目標」とされています。
持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さないことなどを誓っているもので、今日はこの17のゴールから防災に関係するものを2つご紹介したいと思います。

一つ目は、ゴール11「住み続けられるまちづくりを」です。
世界人口の半分以上が都市に住んでいるということもあり、人々が住んでいるところを安心・安全で災害に強く持続可能な場所にすることが求められています。

二つ目にゴール13「気候変動に具体的な対策を」です。
現在から何も対策をしないでいると地球の平均気温は今よりも4.8℃上昇すると言われていて、自然災害が増えることが予測されています。

学校の中で、「風水害24」を体験する機会や、気象予報士や防災士といった専門家の話を聞ける機会をコーディネートしていますが、これらの学びが「何をしていくべきか?」を自分たちで考えるきっかけになると思っています。
気候変動や地球温暖化というテーマは壮大でなかなか何ができるか?を考えることが難しい面もありますが、身近な取り組みから対策としてできるものがある、という話を繰り返しお伝えしています。

CASE4:中山間地の災害に備えるには?住民主体の防災

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重田
飛騨市では株式会社Edoが主体となってこれまでに『風水害24』の体験会を7回実施。市の防災士会、区の役員、教職員や小学生中学生など幅広い年齢層の方に受けていただいています。
この体験会を広める担い手としてファシリテーターの育成にも力を入れていて、様々な立場の市民ファシリテーターが12名誕生しています。

飛騨市はこれまで大きな災害が起きてこなかった平和な地でもあります。一方で防災に関心が向きにくい地域性というのもあったのですが、地域の防災力向上を目指して防災リーダーの養成、防災士資格取得費用の全面バックアップなどを行ってきたこともあり、現在防災士が200名近く在籍。令和元年度(2019年)には防災士会も発足し、ここ数年で防災・減災への関心が高まってきたなという実感があります。

中学校における防災教育では、市民ファシリテーターである高校生が『風水害24』の進行を担当しました。彼らは中学校の卒業生でもあり、中学生と非常に近い立場の高校生が伝えることで、体験する中学生や教員の先生方からの反響も大きかったのが印象的でした。

飛騨市は人口2万3000人、総面積の93%が森林という日本でも代表的な中山間地域になります。災害についても、幹線道路が不通になると孤立しやすい、発災時の逃げ場が限られているという特性があります。
一方で小さなまちだからこそ、地域自治会のようなコミュニティが根付いて共助が行われやすいという強みもあります。
防災士会と連携した地域における防災訓練、防災に関する生涯教育というものを通じて、飛騨市全体の防災力を高めていく構想で活動を続けております。

CASE5:建設業の防災対策と風水害24を活用した意識付け

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長野
私が所属する美保テクノス株式会社は、米子市にある総合建設業です。
地域建設業の役割には、地域の雇用確保、社会資本整備と維持管理、災害時の緊急活動などがあり、地域社会の安全安心の確保を担う地域の守り手として活動しています。
気候変動が顕著になってきている今、建設業の立場からお役に立てることも増えているように思います。

伊勢湾台風や阪神・淡路大震災、東日本大震災などを大きな転換点として変遷してきた防災政策は、行政だけではなく国民一人一人が防災を自分ごととしてとらえ、自律的に災害に備えることが求められるフェーズに入ってきています。

ハードの整備についても意識の見直しが行われており、これまでの「過去の実績に基づくもの」という考え方から、「気候変動による降雨量の増加などを考慮したもの」という考え方に変わってきています。
このハードの側面を担う建設業においては、図面通りに作るだけが街づくりではない、と考えています。ハードをつくる人のソフトの教育、という観点で『風水害24』を発災時に緊急対応する部署の研修や、新入社員研修といった場で活用しています。

体験された方の声としては、住宅営業の担当者から「お客様への土地提案段階からハザードマップを活用したい」、新入社員から「建設業の仕事と防災が深く関わっていることを知った」などが寄せられています。
風水害24は防災・減災のソフト教育にとどまらず、ハードとソフトをつなぎ、パーパス(存在意義)に気づくきっかけになると感じています。

ー登壇者の皆様、短い時間の中での想いのこもったプレゼンテーションをありがとうございました。
次回、後編ではキートークの登壇者の皆様、前編でお話いただいた神戸市広報室の本田さんにも参画いただいてのトークセッションの模様をご紹介させていただきます。

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