見出し画像

久しぶりに百貨店で靴を買ったら、心がホクホクした話

先日、髪を切りに心斎橋まで出かけた。

私はいつも、昔からの友人で美容師になった子に切ってもらっている。髪型も良いようしてくれるのはもちろんだが、友人に会って近況などを話すのが楽しみで通っていると言っても過言ではない。その子が心斎橋のヘアサロンで働いているので、その店へ行く。

最近、私自身、繁華街へ出向く機会自体がほとんどなくなっている。髪を切りに行く時くらいかもしれない。
せっかく心斎橋に来たし、今日は百貨店で靴を買おう、そう思っていた。少し前に、長年修理しながら履いてきた黒いローファーがダメになってしまったのだ。

髪を切ってもらい、一人ランチを済ませて百貨店へと向かった。久々に味わう高級感に少し身を引き締めながら、靴売り場を探す。

靴売り場に着き、ディスプレイしてある靴を一通り見て回る。どれも可愛い。なんとなく、ダメになってしまった靴と似たものを探している自分がいる。長く使っていたし、どんな服にも合わせやすくて、愛着があったのだ。

「お、これ良さそう」

そう思って、ベージュのローファーを手に取る。

すると一人の店員さんが話かけてきてくれた。

「どうぞ、試着してくださいね」

「ありがとうございます。これの24㎝ってありますか?」

「確認いたします。少々お待ちくださいませ」

ベージュは欠品だが、在庫があったという黒を持ってきてくれた。そして、その横の似たデザインの靴もサイズがあるので持ってきてくれることに。白と黒の二色展開。まず白から履いてみる。

「あぁ~白可愛いですね~。良いなぁ。けどこれ、汚れ目立ちますよね……」

「そうなんですよ。可愛いですよね。白は最近は夏だけでなく、秋冬も履ける流行りですよ。汚れは……確かに目立ちますね」

おそらく50代くらいと思われる女性の店員さん。メイクも色味を上手に使っていて、おしゃれでなんとも素敵。

「これ当然水洗いなんてできないですもんね」。苦笑いでそう質問すると、「それは……できないです(苦笑)。履き始める前に防水スプレーをしていただくのが1番ですね」と的確な返答をくれる。


「それは革の風合いが良いですよね。独特で履くごとに味が出てくるというか」

「くるぶし上あたりのシースルーの靴下にワンピース、なんて着こなしも合いますよ」

「そちらはカジュアルでもいけますし、お仕事でも両方いけます。パンツでもスカートでも合うお靴ですね」

私が靴を履いてみる度に、それに合う着こなしと、靴の説明をしてくれる。知識量がすごくて、しかも押しつけがましくなくて。

最近、靴を買う時はネットショッピングばかりだった私。
スニーカーもパンプスもネットを見て、今ある服に合いそうかな~使えそうかな~という観点でチェックをし、サクッと購入することが続いていた。そこには心の動きも、思い入れも特にない。

しかし、この女性の店員さんと話していると、これはただの買い物ではなく、出会いだな、という気持ちになってくる。

店員さんとの出会い。そして、靴との出会い。

「その靴は、メーカーが何年も作ってきているデザインです。私も持っているんですよ」

お茶目に微笑む店員さん。ああ、もう、これ買うしかないでしょ。自然とそんな気持ちになって、それがなんだか嬉しかった。

「これにします」

そう言って、靴を店員さんに渡す。シンプルで可愛い黒いローファー。「ありがとうございます」と言って、袋に入れにいってくれた。私の心は、不思議なくらいホクホクしている。

そして、商品を渡してもらう際、

「最近アルコールで消毒される機会が多いと思うんですが、靴にたれてしまうと傷みになったり変色につながるのでお気をつけくださいね」

そう言って笑顔で見送ってくれた。

「ありがとうございます!」

最後までこの気遣い。ああ、あの店員さんから買えて良かったな。
靴、大切に履こう。

お礼を言って靴売り場を後にする時、私は嬉しい気持ちでいっぱいになっていた。


これはネットショッピングでは絶対に得ることができない心の動き。ネットでの買い物は、便利で大助かりなんだけれども、そこには出会いの感動も購入に至るエピソードも特にない。ただ、消費をしたという感覚が残るだけ。

こうしてちゃんとしたお店で出会いを楽しみながら買い物をすること。それは時間も手間もかかるけれども、貴重で豊かな時間なんだなぁと噛みしめた帰り道。

この靴を履く時、あの素敵な女性の店員さんを思い出すんだろう。そういうのって、なんだかとっても素敵だ。

久しぶりに百貨店で素敵な靴が買えた。そして、心がホクホク豊かな気持ちになった。

新しい靴、大切に長く履いていこうと思う。


#買ってよかったもの

#買うときのこだわり

この記事が参加している募集

買ってよかったもの

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?