お隣さんのお宅に赤ちゃんが生まれて
我が家はマンション住まいだ。住人には子持ちファミリー層がとにかく多い。
左隣は偶然にも、小3娘と同じクラスの男子を含めた3人兄弟がいるご家族。
そして少し前に引っ越してこられた右隣のお宅に、赤ちゃんが生まれたらしい。
ある日子どもたちと帰宅すると、玄関のドアのところにビニール袋がさがっていた。
中をのぞくと、マスク1箱とお手紙のようなものが入っている。
「何それ~?」
「なんやろな~」なんて言いながら、手紙を読んでみると以下のように書いてあった。
こんなお気遣いいただかなくても、我が家の方が絶対うるさいやろうに……と少し居た堪れない気持ちになる。
「あ~お隣さん赤ちゃんが生まれたんやって!おめでたいなぁ」
「え~!そうんなんや!赤ちゃん!」
「やった~!」
結構なテンションで喜ぶ子どもたち。
「マスクはなんで?」
「赤ちゃんの泣き声が聞こえるかもしれないから……って」
「え~赤ちゃんの泣き声~♡♡♡」
「わ~!聞こえるかな~?」
息子はお隣さんとの壁に耳をつけようとしている。
「こらこら、やめいやめい」と言いながら、2人の反応を新鮮に感じていた。心から赤ちゃんの泣き声を聞きたい!と思っている様子。
いや、わかるよ。赤ちゃんの泣き声って本当可愛いもんね。
「赤ちゃんの泣き声、聞こえたら嬉しいんや?」
「うん!聞きたい!」
「赤ちゃんは泣くもんやからな」
娘と息子がそう答える。
ああ、ほんまにそうよな……。赤ちゃんは泣くのがお仕事やもんな。
我が子にも夜間授乳をしている時、夜泣く時期があった。
夜中ふんふん言い出したと思ったら、「ふぇぇぇ~ん」と泣き出す。その頃の私は眠りがいつも浅く、一刻も早く泣き止ませようと速攻で起きて乳をあげていた。
「泣き声を響かせてはならぬ!!!」と。
武士のような志で、そう思っていた。
しかし、我が子の反応を見て、「そうよなぁ。そもそも赤ちゃんってとてつもなく可愛くて祝福される存在で、泣くのがお仕事やもんなぁ」と胸の辺りがじんわり温かくなるのを感じた。
あの頃泣かせまいと必死になってた自分が、頭をよしよしされたような感覚。
もちろん、だからって「気にせず泣かせたら良い!」と主張したい訳ではない。赤ちゃんの声が聞こえて迷惑に感じる方もいると思うし、周囲への配慮は必要だと思う。
しかし、「可愛いなぁ。赤ちゃんの声聞こえるなぁ」と思ってくれる人もいるかもしれない。温かい目も周囲にはあるはずなのだ。
そういえば、我が子が赤ちゃんの頃、外を歩くと見知らぬおばさま・おじさまによく話かけられたのを覚えている。「可愛いね~何か月?」とみんなニコニコ笑顔で近づいてきれくれていた。
赤ちゃんを育てていて、自分に余裕がないと、そういった温もりが見えなくなる時がある。
「うるさいと思われてないかな。邪魔になってないかな」
今もしそんなマイナスの気持ちが膨らんでいるお母さんがいたら、「赤ちゃんとっても可愛いですね!」と伝えたい。私に当時声をかけてきてくれていたおばさま・おじさまのように駆け寄って伝えたいな(ビビられるかもしれない)。
その後、お隣さんから赤ちゃんの声が聞こえることはほとんどない。まだ小さいから声も小さいんだろう。
今度もしお隣さんと遭遇したら、「我が子が赤ちゃんの泣き声が聞こえるのを楽しみにしてます」と伝えよう。
あ、それと同時に、うちの家こそ姉弟の騒ぐ声・喧嘩して泣き叫ぶ声・私の怒る声のほうがよほどうるさいであろうことを詫びなくては。残念ながらそこに可愛さは一切ないもんで。
赤ちゃんはとにかく可愛くて、泣くのがお仕事。
5歳と8歳の我が子に、改めて教えてもらったような気がしている。
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