CASE MaaSに関わる最新海外動向 (9月)

~2020年10月5日

この期間の重要な動向

■ COVID-19後、中国市場は概ね復活しむしろ今後再拡大が期待され、米国市場はパンデミックの穴からようやく抜け出す傾向が見られる。一方、欧州は復活が遅れている。(但し、欧州でEVは伸びている)

■ VWはTeslaと同等に2023年あるいは、それ以前に150万台のEV生産規模する事を目標としている。VWは戦略的にTeslaとEV市場を奪い合うのではなく、既存の内燃機関のユーザをEV改宗者にかえ、EV市場自体を拡大することに主眼を置いている。

■ 今年欧州で最も売れたPorscheの車種がTaycan (BEV)となり、今後計画通り2万台まで販売を拡大した場合、世界的に”よく売れたクルマ“の部類に入る。一方、同カテゴリーのPanamera (ICE)は8月売上が71%減少。ICEのMacanの売上高も62%減少しており、PorscheはまもなくEV Macanを発売する予定。市場格差が生まれハイエンドからEVへのニーズシフトが起っている可能性を示唆している。

■ TeslaのBattery Dayでは、バッテリーからコバルトを削減し、設計や製造工程をゼロから見直し、最終的にバッテリーを半額にするための画期的な技術説明が行われた。バッテリーセルとバッテリー製造の今後の努力の結果として3年以内に$25,000のEVを登場させる。そしてそのクルマは完全自動運転だと(小声で)言った。

■ 世界的なEVの拡大とそれに伴うバッテリー需要の高まりを受け、LG Chemのバッテリー事業ユニットがLG Energy Solutionとして12月1日に分社化する。IPOも検討しており、資本市場からの有利な投資資金調達が可能となり、技術開発、製造能力を更に拡大させる可能性がある。(世界的に自動車関連産業でも企業経営のあり方が根本的に変わってきている。日本企業は大丈夫か?)

■ 海外では大型バス・トラックのEV化開発が進んでいる。例: Tesla Semi、Daimler eActros Long Haul EV、eCitaro。(Nicolaは再起不能?)。また、Waymoのみならず、VWも大型トラックの自動運転化(TuSimpleを利用)も視野にいれている。(ここでも日本企業は大丈夫か?)

■ Daimlerは全固体電池を利用したEVバス(eCitaro G)を発表。出荷時期を明確にしていないが既にラインアップには載っている。また、燃料電池トラックのGenH2も発表。

■ カリフォルニア州知事は、2035年以降州内での内燃機関の新車販売を禁止するという州知事令に署名した。米国では乗用車向けのカリフォルニア州のProgressive Zero-emission Vehicleプログラムを採用しているに州が他に14州ある。

■ 米国大都市の自治体等からの要請もあり、Uber、Lyft等のライドヘイリング事業で用いるクルマを今後10年で完全EV化する動きがある。

以下詳細です

◎◎◎ 米国の動向 ◎◎◎

★ 9月23日、カリフォルニア州のGavin Newsom知事は、2035年以降、州内での内燃機関の新車販売を禁止するという州知事令に署名した。ちなみに、現在までに他の14州が1990年代初頭に開始された乗用車向けのカリフォルニア州のProgressive Zero-emission Vehicleプログラムを採用している。

★ 米国市場は価格が上昇し、自動車メーカーはパンデミックの穴から抜け出した可能性がある。台数はわずかに減少しているが、生産停止による在庫の逼迫により、取引価格は史上最高($35,655)になっており、割引とインセンティブが低く収益が改善した。ピックアップトラックとSUVが9月の小売売上高の76%を占め、前年の72%から増加している。

★ Fordの新しいFarley CEOが10月1日に着任し、CFOにFordの自動運転車部門を率いてきた30年のベテランであるJohn Lawler氏を任命。続いて、新しいCIOとCMOを任命する予定。Farley氏は、今後EVのフルラインナップを提供し、より「手頃な価格」の乗用車車種を追加し、継続的な収益を上げるために商用車サービスを拡大し、自動運転開発会社のArgo AIを利用してビジネスを創出する計画を明らかにした。

◎◎◎ 中国の動向 ◎◎◎

★ 中国おける乗用車の販売は過去2か月間増加し、2022年には中国が最初に2019年の販売レベルに戻ると予測されている。2009年以降世界最大の自動車市場である中国は、普及率が現状でもまだ低く、中産階級が拡大しているため、予見可能な将来に向けて成長が続く。中国はCovid後回復しただけでなく、ここ数ヶ月で前年比以上の成長を遂げ、外国の自動車メーカーは中国の収益性の高い成長に高く依存し、今後の地殻変動に備え中国に投資している。

◎◎◎ 欧州の動向 ◎◎◎

★ 欧州自動車工業会によると、4月以降3か月間連続して販売の下落が緩和し、7月の売上は1年前と対比しわずか3.7%減少だったが、8月に18%減少し、再生への希望がくじかれた。売上高は2020年に少なくとも20%減少する見通しであり、8月の後退が、7月の需要の回復が補助金によって支えられた短期的回復に過ぎなかったとすると、減少はさらに悪化する可能性がある。

◎◎◎ インド市場 ◎◎◎

★ トヨタはインド政府の高税率を理由にインド市場での成長投資を辞める。

★「インド政府の自動車やバイクへの課税が非常に高いため、クルマを多くの消費者の手の届かないところに置き、工場はアイドル状態となり、雇用は創出されず、各社事業規模を拡大するのが難しいと感じている」(トヨタ)。

★ GMは2017年にインドから撤退し、Fordは2020年にトップ3に入ろうと過去20年間販売拡大に苦心してきたものの、インドでの資産のほとんどをMahindra & Mahindra社との合弁事業に移すことに昨年同意した。

◎◎◎ EVの動向 (Tesla) ◎◎◎

★ 第3四半期の販売台数139,300台でのこれまでの販売記録を破り、年間販売台数の目標(50万台)に近づいた。但し、第4四半期に約181,650台グローバルで販売する必要がある。Muskは、Model Yが大きく販売を伸ばし、Teslaの他すべての車両ラインアップの合計販売台数を超える可能性があると予測している。

★ Battery Dayで$25,000のEVを出荷することを発表。新しいバッテリーセルとバッテリー製造の努力によって実現される。完全自動運転になり、200マイルの走行距離をもち、約3年で市場に出る。

★ Battery Dayで走行距離が520マイルを超え、最高時速200 mph、加速性能0-60mp 2秒以下のModel S Plaidを発表。オプション装着前で$139,990から始まる。但し、出荷開始は「2021年後半」に延期された。

★ 10月1日、CATLのバッテリーにより中国版Model 3を約10%値下げし、政府の補助金後249,900元($36,800)で販売される。Teslaの新しいパワートレインには、CATL製のコバルトフリーのリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーが利用されていると予想される。

★ TeslaのAutopilotは、欧州新車評価プログラム(Euro NCAP)がThatchamと共同で行った運転支援システムのテストで、テストされた10車種のうち、ドライバーエンゲージメントが最低点で、自動運転支援、安全バックアップの両方で最高点だった。このレポートは、運転支援、ドライバーエンゲージメント、安全バックアップの3つの主要なカテゴリに基づいてさまざまなシステムを評価した。

★ TeslaがSemiを発表した直後の2017年からほぼ3年たちTesla Semiの出荷は遅れているが、Walmartはビジネスを革新し、持続可能性を優先する継続的な取り組みの一環としてTesla Semiトラックの予約を130台に拡大すると発表した。

★ 今年の初め、研究目的で、同意したドライバーから画像と動画クリップの収集を開始した。ハッカーの分析によると、自動運転時のドライバーの安全監視に利用できる頭部や眼球の動きや、電話の利用等を検知している。現在、Euro-NCAP等からAutopilotの最大の弱点はドライバー監視機能と指摘されている。

★ 最近$8,000に値上げされたFull Self DrivingパケージにAutopilotカメラを用いたバードビュー機能を追加する見込み。Teslaの現在の8台のカメラには、バードビューを想定していなかったため、死角があるが、空間ベクトル変換を用いて死角も表示する機能を実現する可能性がある。

★ “Full Self-Driving”の代替として、最新の自動運転コンピュータの購入を必要としない、“Enhanced Autopilot”を$4,000で再導入。

★ $2,000でModel Yをアップグレードする ‘Acceleration Boost’を出荷。既に出荷時点で備わっていた加速性能に鍵が掛けられており、その鍵を外す‘Acceleration Boost’を購入すれば、ディスプレイ上で設定を変えるだけで加速性能が上がる。スマホ的な新しいクルマの売り方。

★ ドイツのバッテリー組立ラインのメーカー(ATW)を買収する。ATWは、バッテリーおよびトランスミッション製造用の組立ラインの構築を専門としており、BMWやダイムラーなどの主要なドイツの自動車メーカー向けに納入しているが、財務状況が悪化している。Teslaは過去数年間、Hibar SystemsやCompass Automationなど、製造エンジニアリングや製造機械を製造する企業を買収し、バッテリーや車体の製造能力を高めてきた。

◎◎◎ EVの動向 (Tesla以外及び一般情勢) ◎◎◎

★ VWは、250マイルの走行範囲を持つEV SUVのID.4を$40,000で販売開始。ID.4でTeslaとEV市場を奪い合うのではなく、トヨタのRAV4、ホンダのCR-V、スバルのForesterなど既存ICE SUV市場をEVに変えようとしている。

★ Porscheは、1年足らず前にTaycanを出荷開始し、$100,000のパフォーマンスカーにしては販売量が莫大になり始めている。一方、Taycanと同じカテゴリーのICEであるPanameraの売上は先月欧州で71%減少。また、ICEバージョンのMacan SUVの売上高は現在62%減少しており、PorscheはまもなくEV Macanを発売する予定。

★ BMWは、10月5日次世代EVパワートレインを積んだiX3 SUVの生産を開始した。今後数週間で欧州と中国で出荷が始まると予想される。中国で生産し欧州に輸出する(米国でiX3は販売されない)。PolestarなどのEVメーカーでも中国で生産し輸出する傾向が見られ始めている。

★ Fordは、EVピックアップトラックの荷台に装着可能なレンジエクステンダーの特許を申請している。着脱可能で、より長距離を走る場合、またはより大きな荷物を運ぶか牽引する場合は、レンジエクステンダーを追加できる興味深い解決策になっている。F150のオプションとする可能性がある。

★ Volvoは大きく期待されていたXC40 EV SUVの生産をベルギーのゲントにある自社工場で開始した。米国での価格は政府のインセンティブ前で約$55,000から始まる予定。

★ GMはBuickのEVクロスオーバーコンセプトを発表した。Ultiumバッテリーを用いて400マイル以上走行可能という。これを中国でSAIC-GMが発表したが、GMは「グローバルコンセプト」と呼び、新しいインテリジェントなEVの未来に対するBuickのビジョンを示すものとした。今回、彼らは車両の市場導入のタイムラインを開示しなかったが、GMは以前、BuickのEV SUVとEV CUVの2車種を市場に出す計画を発表している。

★ GMが中国でSAICと出したHongguang MINI EVは、現在中国で最も人気のあるEVで、発売開始後わずか50日で30,000台を超え、8月の販売はTeslaを超えた。MINI EVの航続距離は250km未満であるため、政府の補助金の対象にならないにものの、電動自転車や電動三輪車の代替となる2018年に中国で約4,540万台生産された中国固有の低速EV (LSEV)を置き換える可能性がある。

★ ホンダは、「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」方針の一環として、フォーミュラワンから撤退し、燃料電池とEVにフォーカスする。

★ ホンダのHonda-eは、期待、最先端の技術、クールなインテリア、そして超タイトな回転半径で最高の評価を得たが、価格と走行範囲に関しては期待に満たない。35.5kWhのバッテリーで100マイル程度しか走らない可能性があり、欧州でのエントリー価格が£26,600(€32,997)で高めだ。直接対決するVWのID.3はより大きく、価格が低く、走行範囲が長い。

★ ホンダは、北京国際自動車展で将来の量産モデルのコンセプトとして、「ホンダSUVe:concept」を発表した。しかし、仕様やスケジュールは明らかにしていない。

◎◎◎ EVバッテリーの動向 ◎◎◎

★ 12月1日をもって、LG Chemは、EV用バッテリー事業をLG Energy Solution Ltd.として分離する。IPOを検討しており10月30日に開かれる株主総会で承認が議論される。LG Chemからの分割により、新しい事業体はバッテリーに注力できるようになり、経営効率を高め、株主の価値向上につなげる事ができる。

★ TeslaのBattery Dayではリチウムイオンバッテリーの製造コストの半減が最大のテーマだった。

★ Teslaは、Battery Dayで、バッテリーの5つの重要な側面(セルのフォームファクタ、製造革新を伴う電池セル工場の設計、。新しいアノード材料、新しいカソード材料、新しいバッテリーパックのデザイン)でどのように大幅な改善を行ったかを説明した。これらすべてを組み合わせることで、TeslaはkWhあたりのコストを56%削減し、バッテリーコストの飛躍的な進歩を実現する。フリーモントのパイロットプラントで1年以内にバッテリー生産を10GWhに増やす。その後、新しい生産システムを大規模に展開し、2023年までに100 GWh、2030年までに3,000GWhの製造を目指している。

★ Teslaは、同時に北米に独自のカソード工場を建設する計画を発表正式に発表し、ネバダ州のリチュウム鉱床の採掘件を交渉中。カソード工場は、リチウム転換施設の隣に置く。また、Teslaは硫酸塩を利用しないプロセスに取り組んでおり、それによりコストが33%減少する。

★ Teslaは、最近ニッケルに非常に強い関心を持っており、世界最大のニッケル生産国の1つであるインドネシア政府と新しいニッケルベンチャー設立について話をしている。インドネシア政府は、ニッケル鉱石を現地で処理することを奨励するため、ニッケル鉱石の輸出を禁止している。そのため、Teslaがインドネシアのニッケルを確保したい場合、インドネシア国内での処理に投資する必要がある。一方、LG ChemとCATLとインドネシア国内にバッテリー工場を建設する契約を結んだ。

★ Daimlerは、世界最初の個体電池(441kWh)を積んだEVバスを発表した。エネルギー密度が25%増加し、速度、地形、および負荷に対する平均的な要求と、単純な気候条件で最大220kmの走行範囲を提供する。暖房が作動している冬でも走行距離170kmをカバーする。出荷開始時期を明確にしなかったが、販売ラインナップには載っている。

★ Daimler (Mercedes)は、eActros LongHaul BEVトラックと燃料電池トラックを公開した。BEVトラックの航続距離は「約500 km」となり「2024年に量産の準備ができる」としている。「最大1,000km以上」の航続距離を持つ燃料電池トラックであるGenH2も発表した。2023年に電気燃料電池トラックの顧客試験を開始する予定だが、量産はこの2025年以降になる。

◎◎◎ 自動運転の動向 ◎◎◎

★ トラックの自動運転化の動きが進んでいる。Waymoもトラックの自動運転化に取り組んでいるが、VWのトラック会社であるTratonが米Navistarを買収しする交渉中であるが、同時に両社とも自動運転パートナーとしてTuSimpleの少数株式を取得している。

◎◎◎ MaaS関連の動向 ◎◎◎

★ Uberは2030年までに米国、カナダ、欧州で、2040年までに残りの世界で、ライドヘイリングの「100%」をEVとする事を誓約。米国の多くの大都市が、ライドヘイリングサービスが他の交通手段よりも環境にやさしくないと見ており、より多くのEVを使用するように要求している。

★ GMはUberと組み、ドライバーにChevy Bolt EVを$26,500と大幅ディスカウントで販売する。

◎◎◎ その他 ◎◎◎

★ Elon Muskは希望していないが、Teslaはクルマを電力網に繋げるVehicle-to-Gridの導入を約束した。これにより、EVが電力網から電力供給を受けるだけでなく、EVが電力網に電力を戻せるようになり、最終的には市場での出荷台数が多いTeslaがエネルギー裁定者(arbiter)のようになる可能性がある。
★ Teslaの共同創設者JB Straubelは現在Redwood MaterialのCEOであり、バッテリーリサイクルベンチャーとしてAmazonやBill Gatesから投資を受けている。Amazonは製品とサービスが低炭素経済に力を与えることができる先見性のある企業にAmazonのClimate Pledge Fundを通して投資をしている。





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