【最近見た映画】 PLAN 75
土曜日の夜に、夫と2人で映画を見ようとTUTAYAのDVDレンタルコーナーをうろうろ歩いていた。amazon prime videoやNetflixの会員ではあるけれど、30代前後のわたしたちには、DVDのレンタルコーナーを歩きまわってワクワクする好奇心が子どもごころにまだ残っている。
最新作の視聴者レビューが添えられたコーナーに「PLAN75」という映画があった。75歳以上が自らの生死を選択できる<プラン75>という架空の制度が施行された日本を描いた映画だった。ただの好奇心から今夜はこの映画を見ることに決めた。(amazon prime video で見ることができました。)
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あらすじ
早川千絵監督が、是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の一編として発表した短編「PLAN75」を自ら長編化した映画で、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門正式出品 カメラドール特別表彰を受賞した映画である。
夫と死別し、ひとり静かに暮らす78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は、ホテルの客室清掃員として働いていたが、ある日突然、高齢を理由に解雇されてしまう。住む場所も失いそうになった彼女は、「プラン75」の申請を検討し始める。市役所でプラン75の手続きの仕事をする岡部ヒロム(磯村勇斗)や、子どもの医療費を稼ぐためにプラン75に関連する高給な遺品整理の仕事につく外国人労働者のマリア(ステファニー・アリアン)など、プラン75に関わる様々な人々を描いている。
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架空の制度、だけど現実の話
見はじめて序盤からこれはホラー映画や!と思ってしまった。。<プラン75>という制度自体も恐ろしいのだが、そもそも映画の中での社会全体を覆う空気感が恐ろしく感じられた。
角谷ミチ(78歳)が目の当たりにする社会では、仕事も住む場所も失い、職業安定所でパソコンもうまく使えない様子を若い職員にあしらわれ、不動産屋さんで高齢を理由に部屋を貸してもらえず、友人の孤独死に直面する。
小さな絶望が積み重なる様子は、自分が存在してはいけないという社会からのメッセージが次々と送られてくるようだった。
映画の中では、角谷ミチの「孤独死に対する恐怖」や「生き続けることで他人に迷惑をかけたくない」という心情が描かれている。
わたしはこの社会全体を覆う空気感が、映画の中だけでなく現実にも存在するような気がした。この映画では、<プラン75>という制度の存在により「死」の存在感が際立っただけで、それ以前の高齢者の生きづらさのようなものの存在を伝えているのではないかと思った。
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映画の後半では、<プラン75>を利用した叔父さんの遺体をせめて火葬は自らで行おうとするヒロムが速度違反で警察に捕まるシーンがある。様々な社会システムが足かせとなり、叔父さんの最期を穏やかに看取ることができない。
「なんのための社会なんだろう」と思わずにはいられないような、社会によって蔑ろにされる人々を細かく丁寧に描いている。
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早川監督の言葉にもあるように、「社会の役に立たない人間は生きている価値がないとする考え方」は、すでに今の社会に根付いているのだろう。
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ホームレスの支援をしている「NPO法人 抱撲」という団体がある。
ちょうど映画を見た直後に知る機会があって、調べていたところ、その理念に「生産」とは何かについてこんなことが書かれていて、わたしはすごくいいなと思った。
「その人に与えられている力や個性が十分に発揮される社会」その考え方は、ここ最近すっかり忘れていた、お金や物質などの利益ではなく、相手を思いやる気持ちが優先される考え方だった。
年老いても、何かしらのハンデキャップを持っていても生きているだけで意味がある。そう感じられる社会であって欲しいし、自分たちでそうしていかねばと思わされる、大きな問いかけのある映画でした。
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日本社会はこのままで大丈夫なのか、、この先の未来どうなるのか、、不安に感じることもあるので、心に余裕があるときに見ることをお勧めします!でも見てよかった!
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