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正月休みのこと、素敵な宿とこれからの私たち

今年のお正月休みは、いつもより2,3日ほど長いことに気づき、夫と2人,一泊二日の宿泊を、旅行日の前日にバタバタと予約した。


何ヶ月も前から予約するような、楽しみを先にとっておく、そんな計画的な旅行も好きだけれど、"たった今ちょっと遠くに行きたい"と言う、心の欲求のままに行動できる喜びが胸を高鳴らせた。

それにはショートケーキのイチゴから食べてしまうような、ちょっとした背徳感も感じたけど、それらも含めて、冒険のようでわくわくした。


そんな今年の正月休みについての小旅行の記録です。(ちょっと長いです)


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予約した先は、有名な建築家が改修に携わっている木造の建物で、ちょっとしたギャラリーと立派なお庭がある海辺の旅館だった。

私たちにとって、ちょっと奮発した宿ではあったけれど、「せっかく働いて稼いだ大切なお金だ。よい経験をするために使われるべき。」などと言いながら、感染症の事もあり旅館内だけでも、ゆっくりと楽しめるようにと決めたのだった。


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当日の(といっても予約した次の日なのだが)午前中は家の掃除をして、ゆっくりと出発した。行き帰りの移動は夫と2人で運転を交代しながら、片道2時間ほどのドライブ。できるだけ下道を選び、できるだけ海沿いの道を通って。

天気が良くて海がキラキラと光っていた。

車を停められるところがあったので、停車してそこから少し海に近づくとサーフィンをしている女の子や、大きな真っ黒いバイクに乗った、ワイルドでかっこいいおじさん達が海を眺めていた。

みんな笑顔だった。晴れ晴れしい新年の休日。明けましておめでとうございます。


サーフィンをしている女の子、かっこいい


旅館に着くと入り口にはお正月の縄飾りが飾られていて、女将さんが出迎えてくれた。70歳くらいであろう小柄な女将は、綺麗に髪をまとめ上げ、真っ赤な口紅と、品のある声で、お荷物お持ち致します、と微笑んでいた。

建物だけでなく、おもてなしも丁寧で、落ち着きのある雰囲気に、いかにも新婚のような私たちは少し浮いているように感じた。

私は恥ずかしくなってドギマギしていたけど、夫は終始楽しそうにニコニコしていた。こういう時に堂々と隣にいてくれるだけで助かるなあと思った。


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館内の説明を聞きながら部屋まで案内をしてもらい、女将さんが丁寧に入れてくれたお茶を飲んだら、やっと気持ちが落ち着いて来た。軽く世間話をして、近くの美味しい晩御飯のお店を教えてもらえた。(前日に予約したため、晩御飯は宿で予約できなかった)

中庭には松がたくさん

荷物を整理して館内を散策し、夜になったので1時間ほどで外食をすませ、旅館に戻りお風呂に入った。


館内には自由にくつろげるラウンジとギャラリーがあり、美味しいコーヒーを自由に飲むことができた。客室数が少ないので、他のお客さんはそんなに多くはないことに加え、宿で晩御飯を食べているため、人のいない時間帯を夫と2人で、ひっそりと静かに過ごすことができた。


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ギャラリーは3部屋ほどに分かれていて、陶芸家の展示がされており、良く見ていくと3部屋にそれぞれ別の作家のものが展示されていた。さらに良く見るとその3人は家族で、父、母、息子の3人の展示だった。息子は私と同じ年齢であったため、急に親近感が湧いてきた。



そんな風に熱心に見ていると、館内の男性従業員が、こちらもありますよ、と別の部屋にも灯りをつけてくれたり、だんだん寒さも深くなっていたのでストーブをつけてくれたりと、とても優しく温かく見守っていてくれていたので、夫と2人しかいない、ポツンとした静けさから、じわっと温かい気持ちでゆっくり展示を見ることができた。



とても静かで、ノンカフェインのコーヒーを片手にラウンジでくつろぎながら雑誌を見たり、大きな窓から外の暗闇を見たり。


慌ただしくすぎる日常が嘘のようだった。本当は、夜は暗いし、静かだし、外はとんでもなく寒い。こんなにも夜を近くで感じられるのに、温かく優しいこの空間は、なぜだか私の心を癒した。

ラウンジの椅子の座り心地がたまらない

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夜はぐっすり眠れた。

朝になって、夫は1人で早起きし朝風呂に行っていた。
「夜は貸切風呂だったけど、朝はどこかの社長さんみたいなおじさんと2人風呂だったよ。」と言っていて、やっぱりお正月にこんな旅館に泊まりに来る人は、どこかの社長さんのご家族なのだろうか、などと話をした。


私たちはチェックアウトの時間ギリギリまで、ラウンジでコーヒーを飲みながらゆっくり過ごした。

客室から見える中庭

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ハツラツとした中居さんがお見送りをしてくれて、私たちの地元を伝えると「私の息子はそこで働いているのよー」などと世間話をしてくれたり、写真を撮ってくれたり、駐車場まで荷物を運んでくれた。


お仕事だから、当たり前のことなのだろうけど、素直にそういった気遣いが嬉しかったし、何よりそのやりとりが楽しかった。


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いつか私たちはこんな旅館にきても恥ずかしくないような夫婦に年を重ねることができるのだろうか。

帰ったら、今年はどんな一年が待っているのだろうか。

生活や仕事を積み重ねながら、たまにはしっかりと自分を喜ばせることができる時間を確保したいなあと思う。

美味しい物を食べ、あたたかくし、光と水にさらされながら、笑ったり話したり、新しいものと出会ったりしながら、きれいな景色を自分自身に見せてあげたい。そういうことのために生きているかもしれない。

そんなことを思いながら、
帰りもまた下道でゆっくり海を眺めながら家路に着いたのでした。



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今年の正月休みの思い出でした。
長々と読んで頂き、ありがとうございます:-)


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