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2020年映画ZAKKIちょ~ 20本目 『T-34 レジェンド・オブ・ウォー 最強ディレクターズ・カット版』

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2018年製作/上映時間:191分/G/ロシア
原題:T-34
劇場公開日:2020年7月31日
鑑賞劇場:新宿ピカデリー
鑑賞日:8月1日

自由をその手に掴み取れ!ロシア軍最強戦車に乗り込む男たちの決死の大脱出!

 本国ロシアにて、ロシア映画史上最高のオープニング成績を記録し、最終興行収入は40億円を超え、観客動員800万人という驚異的な数字を叩き出した、戦車アクションエンターテインメント大作。

【あらすじ】
第二次世界大戦下、ナチスドイツ軍の捕虜となったロシア軍士官イヴシュキンは、収容所で行われる戦車戦演習で、ソ連軍の戦車T-34の操縦を命じられる。T-34の整備を命じられた彼は、収容所の仲間とともに脱出計画を企てる!

 既に2019年10月に日本公開されていた本作。
正直、戦車ものは美少女戦車アニメの「ガールズ&パンツァー」を観ていたくらいで、実写の戦車にはそんなに惹かれないな~と思ってスルーしていたが、戦車好きだけではなく、戦争映画やアクション映画としても評判が高く、話題になっているのを聞いて、ちょっと気になってきていた。

 同年11月に、劇場公開版113分に26分の追加シーンを加えた139分の「ダイナミック完全版」が公開され、それもなんだかんだで観逃してしまい。

今年、Blu-rayも発売されて、もう配信で観ようかな~と考えていたところ、7月31日に、なんと78分の追加シーンを加えた191分の「最強ディレクターズ・カット版」の日本公開が決定。
完全版と銘打った作品を公開した後に更に長いバージョン出すとはどんだけ後出しじゃんけん商法なんだと若干呆れつつも、これはもう絶対観に行かねば!と勢い勇んで劇場へ足を向けた。

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○良かった点

良かった点は下記3点。

1.熱くなる!捕虜4人の決死の大脱出劇
2.
噴き出るアドレナリン!戦車 VS 戦車のドッカンバトル
3.感情移入する!友情・恋・宿敵、濃密な人間ドラマ

1.熱くなる!捕虜4人の決死の大脱出劇

 本作は戦争映画という体裁を取ってはいるが、実にシンプルな構成。
第二次世界大戦中の話ではあるものの、けしてややこしい話ではなく、自由を求めるロシアの男たちの、ナチスドイツ捕虜収容所からの脱出劇が主軸となっている。

113分版と139分版は未見だが、191分版である本作が凄いのは、長尺であるにも関わらず、観ていてテンポ感は損なわれず、まったく間延びしないところ。
見せ場である戦車アクション以外の、男たちが脱出計画を綿密に練ったりするところや敵の指揮官イェーガーとイヴシュキンとの対立などを描くドラマパートも超面白く、緩急の付け具合も見事でワクワクされっぱなし。

最初にこの191分版を観てしまったせいで、あとで113分版と139分版を観ても、短くて物足りなさを感じてしまいそうな気がする。
それくらい、191分版が本来の形なのではと思えた。

 脱出の為に、戦車に乗れる仲間を集め、綿密な作戦を練り、行動の為の仕込みをしていく行程は観ているだけで楽しい!
かつてイヴシュキンと一緒に戦っていて、先に捕虜となっていた髭の操縦手ステパンとの確執から同じ目的の為に再び仲間になる描写などのドラマもあり、そうしたそれぞれの思惑の積み重ねがあってからこそ、脱出劇パートは最後まで目が離せなくなる。

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2.噴き出るアドレナリン!戦車 VS 戦車のドッカンバトル

 本作最大の見せどころである戦車戦。
ざっくり分けて冒頭の村での攻防戦、中盤の脱出劇、クライマックスの市街戦と3回。
なんと本作で使用されたロシア軍戦車「T-34」は、本物の戦車車両を用いて、なんと実際にキャストが操縦するという本格さ。
更に戦車内に小型カメラを取り付けて操縦する様子や戦闘時のリアルな表情を映し出すなど、リアリティを突き詰めていく気合の入れ方が尋常じゃない。
わざわざキャストに操縦させなくても、戦車の外観部分からはスタントドライバーが運転してても分からないのに!

 更に、片輪走行にドリフト旋回する戦車の挙動や、ドッカ~ンと着弾・炸裂する砲弾描写や爆炎に至るまで、ロシア最先端のVFX技術を結集させた、内臓がちぎれそうなほどアドレナリンが噴き出る白熱の戦車バトルが展開する。
これは劇場のスクリーンと音響ならではの映像体験でこそ、より没入できる。

 特にクライマックスのT-34とパンターの橋の上でお互い向かい合った状態で突進していくカットは、本気で瞳孔開くくらい白熱。
まるで少年漫画的な宿敵との一騎打ちの戦いをダイナミックに見せていて、最高のカタルシスを与えてくれる。

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3.感情移入する!友情・恋・宿敵、濃密な人間ドラマ

 本作が傑作たりえているのは、その尋常じゃないほど本格的な戦車アクションのダイナミズムに加えて、濃密に描かれる人間ドラマのエモーショナリズムがあるからだろう。

 主人公イヴシュキンが企てる脱出計画の為に集まった3人の仲間たちとの絆・友情といえる関係性もとても良い。
特に戦車なんて操縦役、弾の装填役、弾の発射役、全体の指揮とそれぞれの役割がチームになって一丸にならないと上手く機能しないもの。
そのうえで本作はひとつの目的の為に力を合わせるチームものとしても、それぞれのキャラクターの個性をしっかりと打ち出し、戦車バトルでの感情移入度合いを高めていた。

 脱出する4人の男たちに加えて、収容所で通訳者として働くヒロイン、アーニャとイヴシュキンのロマンスは、戦車アクションである武骨な本作において一服の清涼剤的な、ほっこりさせる要素でもある。
「どうか2人とも生き残ってくれ!」とハラハラさせる。
さらにアーニャとイェーガーの関係性を見せることで、脱出劇をより面白いものにさせているのも抜かりない。

 さらに、冒頭、イヴシュキンとイェーガーとの初戦から始まる両者のライバル関係。
ロシア人とドイツ人で言葉が通じない中で、命を奪い合う敵対関係ではあるものの、戦車での戦いを通じて好敵手としての関係が描かれていく。
そうした関係性を積み重ねていきながらの、ラストは両者のタイマンバトル!
これで熱くならないわけがない。

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◆結論

 以上のように、戦車バトルと人間ドラマの要素がお互い化学反応で機能している奇跡的なバランスこそが本作の魅力と言える。
戦争映画と言っても、本作の主題は戦車バトルなので、四肢欠損などの人体破壊描写などの戦争のリアルな残酷さを見せつけるような要素は皆無。

某少年漫画雑誌のスローガンである「友情・努力・勝利」の言葉がこんなにふさわしい映画も珍しい。

本作は9月の爆音映画祭で上映されるようなので、大音響であればあるほどより没入感が高まり、最高の映画体験になることは間違いない。

それでは最後にみんなで予告編を観てみよう。


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