純文学シナリオ『まわた』
○ プロローグ
少女の手の中にある、不気味なほどに美しい、二体の人形。きめ細かに再現された肌の質感と血色。関節の曲がる角度まで忠実で、一本一本丁寧に植えつけられている髪の毛は、人毛を使っているようにしか見えなかった。
どちらも痩せぎすの女の形をしている。同じ、腕や足の長さ、背丈。同じ髪型、顔立ち。同じ重さ。服装だけが違った。右手の人形は、肌着に裸足の姿。左手の人形は靴を履き、大人が出掛ける時のきちんとした身なりをしている。
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