小説『千切る月』試し読み
『千切る月』あらすじ
夏休みのあいだ、伯父の家で暮らしている隼一は、慣れない土地に馴染めない。暗闇がにがてな少年・隼一は、深夜の線路道で、太陽がにがてな少年・初に出会う――。太陽とプールの水飛沫が輝く昼間と、深夜の線路道での初との遊び。光とも闇ともつかない、十才の少年の心のゆらぎをみずみずしく描く、純文学中編小説。
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1空ごとくずれ落ちてくるかのようなどか降りの雨と轟音が視界をけむらせ、ぬれた衣服が体にべとべとまとわりつく。傘を持っていない隼一