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読書(2023/11/6):『鍋に弾丸を受けながら』(3)感想

1.酒は毒であり、その上で「今はボク悪いことして楽しんじゃうんだ!」といういたずらっ子みたいな気持ちで楽しむ

青木先生は基本的にアルコールを飲まないし、飲むと気絶してしまう人なのですが、なんか成り行きでアガベ(超でかい甘いアロエ)から作られたアガベスピリッツ(テキーラ等)の工房、L〇S 〇SUNA(商標なので隠してはあるが実際何も隠れていない)を取材することになりました。

アガベ100%スピリッツはクリアで、ハイスピードでストレートに体の底まで入ってくる、『光』の味がする、とのことです。
良い酒は、体はこれを吐こうとしない。吐く前に入ってしまう。決して苦しめない。飲めば必ず気持ちよくなる。そしてその代わり、いきなり天国へ連れていく。
酒という原体験を昇華させている。美味しさよりも快感を追求している。美しい景色を見てきれいだと思うような酒ではなく、朝日を見て眩しいと喜ぶような酒。

うおお、そんなこと言われたら、(俺は呑む人なので)呑みたくなってくるやんけ…

そして、その上で。
お酒は人生の『毒』だ。ドラッグ、タバコ、ギャンブルと同じものだと認識すべきものである。
でも、体に良い物ばかり食っていても人生楽しくない。「今はボク悪いことして楽しんじゃうんだ!」といういたずらっ子みたいな気持ちで楽しむ。これを忘れないようにして、人生を楽しもう。
そういう話が成されます。

確かにとても大事な話をしていると思います。
毒なんだよなあ。
耽溺していると、いたずらっ子のヤンキーというより、スラム街でうずくまってるヤンキーになっちゃうんだよなあ。
俺は気を付けよう…

2.アメリカの人種差別と銃の危険なコンビネーション

アメリカの人種差別の話が出てきます。

アメリカでも基本的には人種差別は普通に「とてつもない悪」です。
んで、表向きそうであるということと、
「あいつらああだからどうしようもない二等人類だよなあ」
という話がクローズドな仲間内でされることは、余裕で両立します。
というか日本でもよくある話でしょう。

アメリカにおいては、もう一つ大きな問題があります。です。
アメリカ人の一部にとっては、
「治安と称して警察の恣意的な基準で市民が警棒で頭蓋骨をへし折られるのがそんなにハッピーか、平然と銃を調達できるギャングに市民が一方的に撃たれて死ぬのがそんなにハッピーか、銃は警察やギャングに対する当然の自衛である」
となるのでしょう(理解はできます)が、そうして銃を装備した後で、
「二等人類が一等人類の俺らのシマを荒らしに来たぞ! 「シマの治安のために」「地域全体の治安が悪化しようが何だろうが」ぶっ殺す!」
という話に至ることは極めて容易い。

だから、人種差別と銃のコンボがあると、事態は極めて危険になります。
アメリカについて、一応そこは認識しておいた方が良いでしょうね。
特に日本人である我々は、「黄色い非人間(イエローモンキー)」として、だから当然なんら人間扱いされずに猟銃で狩られるリスクを、警戒はしておかねばならない。

3.「何が食いたいか」から最終的に目指したいライフスタイルが立ち上がって来る

持ち込み中のヤング青木先生の話が出てきます。
貧乏で、出版社に見てもらうための交通費に喘いでおり、腹を空かせた20歳。
ある日、帰りの飛行機に乗り遅れてしまいます。詰んだ!
夜を過ごすためには、安くてカロリーの高い牛丼なりラーメンなりを食って凌ぐのが、本来は賢かったはずです。
しかし、ヤケになっていたのか、ファミレスでお高いクラブハウスサンドを食べていました。
美味しさが身に沁みる。
自分は一人でサンドイッチとコーヒーを食べるのが好きな人間なんだ。
こんなもんをのんびり食べていても、いざという時に力は出ない。バリバリ働かない人間の食い物だ。
それでも、これを食っていたい。

それをやれる職業。
バリバリ働かない自分に出来ること。

作家業を。
やるしかない。

そんな覚悟を決めた後で、すぐ、ヤング青木先生は最初の連載が決まったのでした。おめでとうございます。

妙な話ですが、「何が食いたいか」から最終的に目指したいライフスタイルが立ち上がって来る。という話、あると思います。
そういえば私は、安定した仕事量と安定したお給料で、好きな料理を好きなだけ食べるために、地方公務員になったのでした。
(他にもいろいろありますが、地方公務員が「定年までの延命に過ぎない。それでもそこにいる限りは精一杯やる」という認識でいることは確かです)

4.まだ4巻は出ていない

そういえば、まだ4巻は出ていないのです。
たぶん台湾編が収録されているはずなのです。

台湾かー…

屋台…

油条(油揚げとパンの中間みたいなやつ)を浸した海鮮粥…
魯肉飯(豚そぼろ飯)…
葱油餅(ネギパイ)…
胡椒餅(胡椒の効いた豚肉のパイ)…
大雞排(でかい鶏唐揚)…
香腸(甘いスパイスで仕上げたソーセージ)…
蚵仔煎(牡蠣オムレツ)…

一度は行ってみたいなー…

そんな感じで、豊かな海外旅行グルメ読書体験でした。
面白いですよ。『鍋に弾丸を受けながら』。オススメです。

(以上です)


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