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〈CLASSICALロングレビュー〉鈴木大介【2020.2 144】

■この記事は…
2020年2月20日発刊のintoxicate 144〈お茶の間レヴュー CLASSICAL〉掲載記事。ギタリスト・鈴木大介さんの2020年3月18日発売の「シューベルトを讃えて」(録音:2019年10月30日&31日 浦安音楽ホール)をレビューした記事です。

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intoxicate 144


「シューベルトを通してギター・ミュージックの奥深さを追究する新作」(山﨑隆一)

鈴木大介j

【CLASSICAL】
シューベルトを讃えて

鈴木大介(g)
[アールアンフィニ MECO-1058] SACD ハイブリッド 〈高音質〉

 昔、訪れたウィーンのシューベルト生家博物館には、パーラー・ギターがさりげなく展示されていて、当時のウィーンでギターはひとつの流行りだった、という解説がなされていた。彼が持っていたギターの中には、アルペジョーネで知られるヨハン・ゲオルク・シュタウファーの手によるものもあったそうである。シュタウファーは当時かなり革新的なギターを作っていて、かのC. F.マーティンも彼の許で修業したルシアーのひとりである。そう考えると、18 世紀前半のウィーンというのはすごい。


 なんて、ロマンティックに過ぎる話はさておき。鈴木大介が新作に据えたコンセプトは、とかくギターとの関連性が語られがちなシューベルトの音楽、その秘密を探ることでギター・ミュージックにさらなる深みと色彩感を見出せるのではないか、という仮説の上に立っている。つまり、シューベルトとその周辺の音楽にどっぷりと浸かりつつも、その目はさらに先を見据えているのだ。


 ヨーロッパの伝統と南米の抒情が絡み合い、やがてひとつになっていくようなポンセ《ソナタ・ロマンティカ》で聴ける風通しのいい音作り。シューベルトと親交があったというヨゼフ・ランツの《2つのロンディーノ》は聴く機会がなかなかないが(こういう曲をさらっと入れてくるのも彼の魅力である)、軽やかな中にふと垣間見せる色気が絶妙だ。


 そしてシューベルトその人。『楽興の時』からの2曲と、ヨハン・カスパル・メルツの編曲による6つの歌曲では、瑞々しい歌心と伴奏の妙が一体となったような、まるで作曲家の心を探っていくような演奏が印象的。鈴木の演奏はストイックで求道者然とした佇まいを感じさせつつ、ポピュラー音楽のファンにも受け入れられる明快さも併せ持っていて、聴いていると月並みながら「ギターっていいな」と改めて思う。そして同時に、実はいちばんロマンティックなのは鈴木本人に違いない、と確信するのだった。

鈴木大介a

©︎Yoshinobu Fukaya



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