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NEW AGE新譜レビュー【2020.2 144】

2020年2月20日発刊のintoxicate 144、お茶の間レビュー掲載のNEW AGEの新譜7枚をご紹介!

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intoxicate 144 


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①【J-POP】
tiny pop – here's that tiny days
 /タイニー・ポップ – ヒアズ・ザット・タイニー・デイズ

v.a.
[P-VINE PCD-4644]

新たなポップス「tiny pop」の胎動を伝えるオムニバス盤。監修は、提唱者でもあるサックス奏者/トラックメイカーのhikaru yamadaだ。「シーン」や「ジャンル」と呼ぶにはささやかすぎるこの音楽は、ひとまずネットで発表される小さな宅録ポップスだと言っていい(惹句は「ネット世代のDIY歌謡曲」)。が、その核心は「tiny」より「pop」としての強度の方にあり、それがmukuchi、SNJO、wai wai music resort、ゆめであいましょうというバラバラな個性の4組を繫留する。なかでも時代から切り離されたニュー・ミュージック歌謡《誰もが誰かに》(ゆめであいましょう)やアフロ・ブラジリアン調の《Blue Fish》(wai wai music resort)は聴く者に衝撃を与えるはず。(天野龍太郎)

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②【NEW AGE】
パーク・ライヴ

Slawek Jaskulke(p)
[コアポート RPOZ-10053]

目を閉じて耳を傾けて聴いていると、まるで目の前に美しいまでの情景が広がっているように感じるソロ・ピアノ・アルバムだ。ポーランドのジャズ・ピアニスト/コンポーザーであるスワヴェク・ヤスクウケが2019年7月にポーランド北部の海沿いの町ソポトにある歴史博物館にある野外庭園で行ったライヴを収録した一枚。当初はアルバム発売の予定はなく録音されたが、聴き返してみると、鳥の鳴き声や聴衆の子供たちの声などが、ピアノのサウンドとあまりにも美しく融合・調和しており、急遽リリースすることを決めたという。意図せずして生み出されたサウンドスケープはこの世の美の極致。 (馬場雅之)

Eno_MixingColours_ジャケ写 大

③【NEW AGE】
MIXING COLOURS

Roger Eno, Brian Eno
[DG Deutsche Grammophon 4837771] 〈輸入盤〉

ブライアンとロジャーの〈イーノ兄弟〉による名義では初のアルバムがドイツ・グラモフォンからリリース。1曲を除き色に関するタイトルがつけられた計18曲は、主に弟が楽器で作曲した素材を兄が加工して戻すという、さながら2人の会話を音にしたようなもの。その中には2005年頃に書かれ曲もあるというから、およそ15年の歳月を経て完成したことになる大作だ。ピアノを筆頭に楽器の催眠的かつドラマ性ある演奏が、それらを包み込むシンセや抽象的な音響の処理により瞑想へと導かれ、アルバムを聴き進めていくほど音の奥底へと潜り込んでいく感覚にさせられる。美しくも極めてディープなアルバムである。 (青木正之)

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④【CLUB】【CD/LP】
SCIS

Oval
[HEADZ HEADZ243] [Thrill Jockey THRILL514LP]

前作ではオヴァルなりのポップな作風を試みたが、それを更に推し進めたのが今作『SCIS』。声の素材こそほぼ皆無だが、ビートメイカーにも負けない肉感的グルーヴ、随所で耳を奪われる美麗かつ心躍るメロディ、プリペアド・ピアノ/木管楽器/ストリングスなど優しい音色をビートの素材として使用といったことが相まって、間口の広さは前作と同等かそれ以上だろう。しかし、まるで即興演奏のように予測の出来ない複雑なリズムと先述した要素が緻密に重なり合う楽曲は、取っ付き易さとは裏腹に腰を据えて何度でも聴き直したい面白さを秘めている。日本盤CDにはEP『Eksploio』を全曲をボーナス・トラックとして収録。 (青木正之)

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⑤【NEW AGE】【CD/LP】
Une Collection des Chainons I and II: Music for Spiral

尾島由郎
[WRWTFWW Records/ritmo calentito WRWTFWW031CDJ(2CD)
[WRWTFWW0311(LP)

シアトルのLight in the Attic発のコンピレーション『KANKYO ONGAKU』がグラミーにノミネートされたこと(惜しくも受賞ならず…)でいよいよ8 〜90 年代の日本の環境音楽への再評価は確固たるものとなったが、志を同じくするスイスのWRWTFWWによる好仕事も続く。件のコンピにも楽曲が収録され、ヴィジブル・クロークスとの共演盤も記憶に新しい尾島由郎が88年、青山スパイラルの為に制作したBGM集をリイシュー。施設の特性もあり当時のアートシーンやアカデミズムを感じさせる神秘的かつノスタルジックな音配置、レイヤーが全身を支配する感覚は甘美である。 (渋谷店 片切真吾)

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⑥【POP/ROCK】【CD/LP】
アイオワ・ドリーム

Arthur Russell
[P-VINEP CD-17811(CD)AudikaAU10171(LP)]

NYアンダーグラウンドの優しきアイコン、アーサー・ラッセル。ワールド・オブ・エコー、ダイナソーLなどのレフト・フィールド・ディスコ、はたまたチェロを駆使したアシッド・フォークや即興セッション、前衛とポップの際を飄々と駆け抜けた彼の発掘音源はまだあった! 今作はアーサーの幅広い音楽性を網羅し全貌を堪能するのにうってつけでありつつ、新しい側面も見せてくれる。特にモダン・ラヴァーズのメンバーと繰り広げるVUフォロー的楽曲には納得と意外が同居。ポートレートの長髪姿も彼の新たな一面を象徴しており、アイオワから都会を夢見、羽ばたいた青年の純粋な眼差しに心ときめく。(渋谷店 片切真吾)

上海の芥川龍之介

⑦【O.S.T.】
NHK スペシャルドラマ「ストレンジャー〜上海の芥川龍之介〜」
オリジナル・サウンドトラック

稲本響
[ アイデアルミュージック NGCS-1104]

松田龍平主演のNHKスペシャルドラマ『ストレンジャー~上海の芥川龍之介〜』。100年前の中国を文豪・芥川龍之介はどのように見て、感じたのか。大阪毎日新聞特派員として憧れを抱いていた上海で過ごした4か月。理想と現実のギャップに絶望しながらも、したたかに生きる人々に出会う。この時代の混沌とした猥雑感、混迷の雰囲気を、ピアニストであり作曲家の稲
本響が優しく包み込む。憂愁のある美しいメロディ、人々の慟哭のようにも聴こえるメロディ、混沌とした不穏な雰囲気を感じるメロディ、力強く生きていくエネルギーに満ちたメロディ…映像に寄り添いながらも、音楽からもイマジネーションが溢れている。 (上村友美絵)

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JAZZ新譜レビュー前編【2020.2 144】


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