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〈CLASSICALお茶の間ヴューイング〉阪田知樹インタヴュー【2020.4 145】

■この記事は…
2020年4月20日発刊のintoxicate 145〈お茶の間ヴューイング〉に掲載された、阪田知樹のインタビューです。

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intoxicate 145


阪田知樹a

©Hideki Namai

ピアノという楽器を通して幻影を表出したい

interview&text:伊熊よし子(音楽ジャーナリスト)

 阪田知樹は非常に個性的で創意工夫に富むプログラムを組む人である。小学生のころから昔の演奏家の録音を聴き、編曲作品に興味を示し、やがてオリジナル楽譜を探して研究・分析などを行うようになる。すべては自身の演奏が肉厚になるために行うことである。


 「アルバムタイトル“イリュージョンズ” は、僕が編曲作品を好むことと、ピアノの幅広い表現を鑑みて付けたものです。聴いてくださる方が各自のイメージを存分にふくらませ、幻影を見てほしいのです」


 子どものころから作曲の勉強も行い、CDには自身の編曲作品も2曲収録。これらは世界初録音である。


 「ラフマニノフが大好きで、今回は数多い歌曲のなかから2曲選びました。編曲は原曲に忠実に行う場合と、より自由に自分の考えを入れ込む場合があります。ぜひ収録したかったのは、旧ソ連の名ピアニスト、サムイル・フェインベルクの編曲によるチャイコフスキーの交響曲第5番《ワルツ》と第6番《スケルツォ》。今年はチャイコフスキー生誕180年、フェインベルク生誕130年にあたります。フェインベルクはピアノのための効果的な編曲に仕上げているため、オーケストラとは異なった魅力を感じていただけると思います」


 阪田知樹は2016年のフランツ・リスト国際ピアノコンクールの覇者ゆえ、リストを聴きたいというファンも多い。ここでは《リゴレット・パラフレーズ》と《ハンガリー狂詩曲第2 番》(カデンツァ:阪田知樹)が選ばれ、超絶技巧をごく自然に披露している。


 「リストの時代にはいまのガラコンサートのようにピアノ・ソロ、室内楽、オペラ・アリア、コンチェルトなどさまざまな形態の作品がひとつのコンサートで演奏されていました。今回はその時代を彷彿とさせるようなアルバムにしたかった。多種多様な作品群をピアノ1 台で豊かに表現するものにしたかったのです」


 阪田知樹の演奏は真のピアノ好きの心をとらえてやまない。これらの編曲作品は難度の高いものばかり。しかし、その難しさを微塵も感じさせず、実に楽しそうに雄弁に美しい歌をうたうように奏でていく。冒頭のバラキレフ「東洋風幻想曲《イスラメイ》」からそのかろやかなステップは全開、圧倒的な技巧を示す。


 「《イスラメイ》は15歳のときにハマった曲で、あらゆる録音を聴きました。今回は久しぶりに弾くことになり、新たな解釈が加わったと自負しています。バラキレフ編のショパンのピアノ協奏曲第1番第2楽章《ロマンス》は美しく聴こえますが、オーケストラパートも弾かなくてはならないため難易度がハンパではない(笑)。でも、バラキレフはピアノの名手だったため合理的な編曲で効果的で、新たな表現が堪能できます」


阪田知樹j

『イリュージョンズ』
阪田知樹(p)
[King International KKC062]


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