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渡邊琢磨 『ラストアフターヌーン』制作の軌跡を巡る鼎談

渡邊琢磨 『ラストアフターヌーン』制作の軌跡を巡る鼎談

[4月13日zoomにて] テキスト/構成:平島悠三 写真:三田村亮

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渡邊琢磨の新作アルバム『ラストアフターヌーン』が、5/7イギリスの新進レーベル Constructiveからリリースされる。渡邊の音楽は緻密な譜面を介した演奏だけでなく、演奏者との多岐に渡る共同作業を抜きに語ることはできない。本作は、国内屈指の弦楽器奏者たちと、アメリカの音楽家、ソフトウェア開発者、アキラ・ラブレー、声楽家のジョアン・ラ・バーバラもゲスト参加している。マスタリングは、ジム・オルークが手がけた。私ごとになるが、運営に携わっている水戸短編映像祭おいて、本アルバムにジャケット写真を提供している、写真家アンダース・エドストロームの映像作品をライヴ上映した。その際、編成された弦楽四重奏団は、本作に繋がる活動起点の一つとなっている。その弦楽アンサンブルのメンバーである、須原杏(ヴァイオリン)と、千葉広樹(コントラバス)のお二人を迎え、『ラストアフターヌーン』制作に纏わる鼎談を行った。

──まず、琢磨さんの弦楽アンサンブルに、須原さんと千葉さんが参加された時期や切っ掛けを教え てください。

渡邊琢磨 (以下、渡邊)「千葉くんに参加していただいたのが…」

千葉広樹 (以下、千葉)「僕はね、多分2回目 (弦楽アンサンブルの公演)の水戸の映像祭からですかね」

渡邊「あ、そうでした。14年の水戸短編映像祭で(註1)、スウェーデンの写真家アンダース・エドストローム(註2)の、 "Some Paints"という映像作品をライヴ上映する機会があって、その際、千葉くんにお声がけを したんですね。元々、私の知人であったチェリストの徳澤青弦くんから、ヴァイオリンの梶谷裕子 さんをご紹介いただいて、梶谷さんと青弦くんお二人から、杏さんをビオラで推薦いただいたんです」

渡邊「杏さんは、3回目からですかね。アラバキロックフェスから?」

須原杏(以下、須原)「いやその前に、あれ?神戸とか北九州まわったのって」

千葉「多分、その前に大分じゃないかな?」

渡邊「九州ツアーがアラバキの前にあって、そのツアーを行うにあたって、 杏さんにお声がけしたのが(演奏に参加した)最初ですかね」

千葉「それはいつになりますか?」

──アラバキが、2015年の4月みたいです。

渡邊「ということは、ツアーをやってきて最終的にアラバキロックフェスで演奏するという流れだったのかと。そういう過程で、弦楽のメンバーが固まってきました」

──それから、16年に渋谷WWWでライヴされてますね。

千葉「あぁ、牧野さん(註3)との」

渡邊「渋谷WWW公演の前年に、僕らが出演したアラバキロックフェスのステージが音と映像を趣旨とした場所で、要するに、映像メディアのアーティストとミュージシャンが共演する企画だったので、兼ねてよりご一緒したいと思っていた映像作家の牧野貴さんにお声がけしました。 ゲスト・パフォーマーには、染谷将太くんをお迎えして。そのアラバキで、牧野さんとコラボレーショ ンした作品を発展させたものが、WWW公演時に初演した"Origin of The Dreams"という作品になります。その際に、後々の機会でもご一緒する演奏者の方々が参加されて、13名編成になりました」

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──そういう活動をしている中で、今回のアルバムの音もレコーディングされていたんですか?

渡邊「その機会毎のリハーサルをレコーディングしていましたね。アーカイヴ的にも必要だと思っていたので」

千葉「だから、具体的にスタジオに入って録音とかやっていないですよね」

渡邊「そうですね。エンジニアの中村督さんに録音機材をリハーサルの現場に持参いただいて、 簡易的なレコーディングを行ったり、京都の同志社大学のハーディーホールで演奏したときは、ライブレコーディングも行いました。そういう機会と現場で録音した弦楽がアルバムに入っているので、中村さんの録 音環境におけるセンスというか技術あって(アルバムが)できた部分もかなりあります」

──現場での印象というか、実感がアルバムに反映されていると。

渡邊「そうですね。現場での出来事や公演毎に新曲を書き下ろして初演を行ってきたので。 元々、弦楽に関するメチエはある程度持っていたつもりでしたが、演奏者の方々から実際に楽器の特性や、ディヴィジ(声部の分割方法)の適切さであるとか、運指上の問題などのご意見をお伺いして作曲に反映するようになったことは、アルバム制作以上に勉強になりました」

──その演奏者の方々というのが、ツアーなどを行ったメンバーでしょうか。

渡邊「ツアーを行ったのは、2014年に結成された”変則的な弦楽四重奏”で、変則的というのは通常のヴァイオリン2名、ビオラ、チェロというカルテット編成ではなく、ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスという、各声部につき一人の演奏者になっているからですが、少し歪な編成なので、演奏者の個性と楽器の特性がより明確に出てくるのが面白いなと」

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──すこし歪で、演奏者の個性や楽器の特性が出るというのはどういうことですか?

渡邊「通常の弦楽四重奏というのは、やはり完成された編成というか、音色のバランスも過不足なく声部の割り振りも容易ですが、この編成(vn,va,vc,cb)の場合、各楽器が、本来の特性とは異なる声部や役割を担うことも多々あって、それは常に代替的です。例えば、千葉くんのコン トラバスのハーモニクスが、ある和声のトップの音を受け持っていたり、梶谷さんのバイオリンが内声部を受け持っていたり、演奏面だけではなく作曲の上でも工夫が必要になるのですが、それでかえって音色やテクスチャーが面白くなることもありますし、その工夫も合理性を得る為というよりは、ある種の歪さを含めた音をつくりたいからかもしれません。楽器の編成以前に、この4 人にしか出せない音というのがあると思いますし、作曲者が演奏者に譜面を渡して、はいお終いというのもね....」

千葉「初期の頃、2014年くらいに演奏していた曲は割とミニマルというか。僕の印象ですが」

渡邊「そうですね。初期の頃はミニマルに関わらず、ある特定の書法を自分なりの解釈で作曲に転用するということがあったかもですね」

千葉「そう。そのあとに映画音楽などに関わって、よりテクスチャー寄りの音楽を(弦楽アンサンブルで)演奏するようになったというのは、経過的にはわかり易いなと」

渡邊「そうですね。ただ、通時的な変化というか最初の公演から7年以上経っているので、自分の音楽に限らず、音楽を取り巻く状況自体、変化したと思うけど、お二人はそういう変化に伴う影響などはありましたか?例えば、公演やレコーディングの現場で必要とされる演奏のニュアンスの変化とか」

須原「あぁ...ここ数年で、アーティストの音像に対する意識が高くなってきたような印象はありま すね。録音の仕方なども各々模索している感じというか」

渡邊「杏さんは、ご自身で音を録ったりもするんですよね?確か、そんなことをお伺いした記憶が」

須原「してます(笑)家で録ったり、現場でも自分のニュアンスを伝えて録音したりもします」

渡邊「ニュアンスを伝えるというのはレコーディングエンジニアとか、PAの人にですか?」
  
須原「そうですね。」

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渡邊「個人的な印象ですが、ポップスや各々のジャンルにおける弦楽器の立ち位置というか担っている音は、ここ数年でまた変わってきたと思いますね。一頃のシンセパッドをそのまま生演奏に差し替えるようなことではなく、もう少し楽器の特性を活かしている用法というか」

千葉「それは、ポストクラシカルのような音楽のことですか?」

渡邊「ポストクラシカルに限ったことではないですが、先日、別の取材で"インディークラシック" というジャンルのことをお伺いして...」

千葉「それは、チェンバーミュージック的な?」

渡邊「僕も詳細には分からないですが、基本的にはマーケティングというか、ジャンルの括りなんだと思うけど、クラシック演奏者によるアンサンブルや団体を自主運営するようなことも含まれているようで、DIYというか。だからそういうジャンル自体というより、以前とは違った形でクラシックや弦楽器を使った音楽の間口が広がっているのかなと」

千葉「へぇ」

渡邊「僕らもアラバキロックフェスで演奏しましたが、PAシステムとか音響機材の進歩も要因としてあるかもですね。杏さんも多岐に渡って、いろいろな現場に関わっていると思いますが」

須原「私は初めてバンドというか、特定のメンバーと時間をかけて音楽を作ることになったのが、巡礼(ASA-CHANG&巡礼)だったし、巡礼はちょっと変わっているというか….」

須原「あとはロックの人とかバンドをやっているアーティストが(弦の)音源を使ってヴァイオリ ンを打ち込めるようになってきたし、ライヴでヴァイオリンを使うときも、昔はすぐにハウリング が起きて大変だったので、エレキヴァイオリンを使ったりすることもあったけど、いまは、ライヴPAでも全然対応できるようになりましたね」

渡邊「僕らの演奏のときも、コンタクトマイクを使ったりしますし、いままでライヴPAをお願いしてきたエンジニアも、ZAKさんや、中村さんのような、あらゆる音楽性や現場に関わっている人たちでしたから、そういう生楽器をアンプリファイする際のストレスは、殆ど感じたことがなかったですが、根本的な技術や機材の水準は上がりましたね」

須原「昔は、弦楽器奏者が自分でモニター用のアンプを持ち込むこともあったらしいですからね。そういう環境的な変化もあって、バンドで演奏しているアーティストがストリングスを入れたりする機会も増えたかもしれないです」

千葉「ま、なにか一つの流行りみたいな部分もありましたよね」

須原「そうですね。さっき琢磨さんが言ったような、シンセパッドを使ったようなことから、もう少し違うアプローチができるようになったというか」

渡邊「ソフトシンセなどを使ってシミュレーションすることも簡単になりましたね。千葉くんはベーシストとして、アコースティックもエレキも演奏しますけど、アコースティックベースに関して言えば、クラシックでもジャズでも頻用される訳ですが、同じ楽器でもアプロー チは変わりますよね?」

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千葉「厳密に言えば、そうですね」

渡邊「と、お伺いしたのも、昔そんな話しをしたことがあったからなんですが、僕の身近でベーシストというと、千葉くんと鈴木正人(註4)さんなわけですが…」

千葉「(笑)」

渡邊「お二人は演奏のアプローチが良い意味で全く違うと思うんですね。千葉くんはやはり、クラシックが素地にあると思うことがあって。特にスコアがある場合」

千葉「それはあるかもですね」

渡邊「その点、千葉くんは作曲者がアプローチの方法を示唆する方が演奏し易いですか?」

千葉「ぼくはそれが楽しいというのもあるし。ベースってどの現場に行ってもわりと“お任せ”が多いんですよ(笑)」

渡邊「コードが書いてあるスコアだけもらうとか、そういうこともありますよね」

千葉「そうそう。やっぱり(ベースは)ヴァイオリンなどに比べても情報量も少ないので、まずは作曲者の解釈を踏まえたいというか」

渡邊「なるほど。クラシックの演奏というのは、基本、譜面に書いてある音符ありきじゃないで すか。近年アーティストや作曲者は、どういう風に弦奏者に演奏のニュアンスや解釈を伝達していますか?」

須原「最近のトラックメーカーの人たちは、トラック通り。シンセで打ち込んであるニュアンス通りに演奏して欲しいみたいな方もいます」

渡邊「それは、音色も含めて?」

須原「例えば、あえてビブラートをかけずにシンセのような音にしてくださいとか、打ち込みのニュアンスに寄せてくださいという場合と、これ(デモ音源等々)はあくまでサンプルやシンセなので、実際の録音時にはもっと(演奏者の)ニュアンスを出して欲しいという場合と二極化してますね。以前は、後者が多かったですが、最近は、自分のなかで鳴っているイメージはこれなので、この通りに演奏してくださいというリクエストが増えているような気がします。」

渡邊「ノンビブラートの指定というのは、現代音楽などでも頻用されますが、そういう書法上のことではなく、デモと録音の差がない演奏ということですね」

須原「デモの時点でかなり作り込まれているので」


──そういう音楽の制作方法と琢磨さんの音楽の相違のようなことはありますか?

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須原「琢磨さんの曲では、ものすごく小さい音の指定がありますけど、あれは昔からの趣向というか、どういうコンセプトなんですか?」

渡邊「小さい音が単純に好きなこともありますが、小さい音というのは、ビットに換算すると音質的に非常に不利ですよね。だからといって、音圧をあげてダイナミクスを損なうようなことをすれば、曲全体が平坦になってしまうし。だから、録音に際して相応の技術とセンスが必要になると思うのですが、エンジニアの中村さんは、こちらのイメージを汲み取って補足してくれる。そういう彼の録音技術とセンスで、ピアニシモの弦の響きとダイナミクスのある電子音やノイズが渾然一体となっ たアンサンブルが具体化できるようになりました」

──やはり演奏者であるとかエンジニアの中村さんとのやり取りや、その現場での実感とかそういう相互作用できたのが、今回のアルバムなんでしょうかね。

渡邊「そうですね。実際このカルテットが演奏している状況をイメージして書いた曲もありますし。だから演奏の難易度が極端に高い曲とか、解釈が難しい曲をあまり書いてないのも、技術的な問題ではなく、その時々の現場における作品のリアライゼーションを意識してたのかもしれません」

千葉「ちなみに、カルテットでの活動以前にも弦の曲は書いていましたよね?」

渡邊「そうですね。ただ、謂わゆるインペグ(註5)からご紹介いただいた演奏者の方々が多かったので」

千葉「あぁ、なるほど。」

渡邊「録音内容にもよると思いますが、弦奏者とのスタジオレコーディングって時間刻みだし、 録音が終わるとアッという間に撤収しているんですよね」

千葉「挨拶する間もないくらいですよね...」

渡邊「そうですね。要するにプロフェッショナルですよ。僕の現場などはサウンドチェックしたら即レコーディングがスタートして、あとは多くても2テイクくらいでOKですよ」

千葉「次の現場に行かれる場合もありますからね」

渡邊「なので、コミュニケーションを取る機会はあまり無かったですね。ストリングスのアレンジや書く仕事はやっていましたが」

千葉「ま、だから、まとめみたいになりますけど、やはりメンバーとのコミュニケーションとか関係性で生まれた音楽でもあると」

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渡邊「それは大きいですね。ただ、突然パッとできた音のような新鮮さも演奏の度にあるわけですよ。4名の演奏者の技巧と音楽性があってこそですが。メンバーがそれぞれの活動をやっていますし、レコーディングや公演に際して、演奏者や作曲家が集まって、短期的に注力してあとは三々五々という感じも性に合ってます。今日も1年ぶりくらいにお会いしましたけどね、 やはり新鮮というか(笑)。演奏のときも自分でつくった曲なのに、彼らが演奏をはじめると良い意味で、まったく別の音楽に聴こえてくる、という言い方は無責任すぎるかもですが(笑)でもこれは公演の度に話すことですが、自分は演奏に参加する必要ないんじゃないかなと。ましてコンダクトなんてと常々思っているんですよ。実際、指揮者がいなくてもアンサンブルの演奏は成立しますからね」

須原「でも、琢磨さんがステージでコンダクトやっているのとやっていないのでは、結構、違いがあると思いますよ」

渡邊「という風にフォローしていただけるんですけどね(笑)いやぁ、私必要ないと思いますよ」

千葉「(笑)」

須原「指揮というか、フィルターみたいな感じですよ」

千葉「以前、大分で初心者の弦楽器奏者を応募して、公演やったじゃないですか(註6)

渡邊「あれは中々面白かったですね」

千葉「あの公演などは最たるもので、コンダクトというか琢磨さん抜きでは絶対成立しないですよね」

渡邊「あれは企画のお話しをいただいた段階から、弦楽器を持ったことが一度もない演奏者がいることや、譜面をどう書けばいいのかとか、そういうリミットをいかに面白く逆用して作曲するかという課題があって、それがかなりモチベーションになりましたね。まず作曲の方法というか、 伝達手段を発明することが必須で、それは要するにワークショップのような段階を経て、作品を組み立てていくというよりも、その’譜面’を読んで、あとは各々の演奏者が解釈すれば成立する作品を書くということですから、ある程度、音の情報を含有しつつ、それを音符に特化しない記譜法で作曲するということなので。本番のパフォーマンスやリハーサル以上に、作曲段階が 一番トライアルでしたよ」

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──僕もあの公演で演奏者として参加しましたが、とてもエキサイティングでした。琢磨さんから当日に渡された譜面も、あまり目にしたことのないアブストラクトな図形譜のような感じで、それを各々が手探りで演奏するというスリリングな体験でしたね。僕もヴァイオリンを弾いたのはあの時が生まれて初めてでした(笑)

渡邊「当日まで少々不安だったですが、本番になったら聴いたことがないような音像が聴こえてきた(笑)具体化する曲はあるんだけど、 それをどう具体化すれば良いという指標はなくて、僕自身も明確にイメージできてなかった訳ですから(笑)ただ音が鳴り出した瞬間に、あぁ、この曲おもしろそうという実感はあって、演奏がすすんでいくという。なんでしょうね、ステージにいる演奏者や作曲者だけじゃなく、お客さんも疑心暗鬼というか、何が起こっているのか不明瞭だからよかったのかもですね(笑)」

──会場を漂っている不可思議なムードが、そのまま音楽なっていくような時間でしたね。最後に、厳しい昨今の状況ではありますが、今後の予定というか、活動などについてみなさんのお話をお聞かせいただいてこの鼎談を終えたいと思います。では、千葉さんから。

渡邊「千葉くんは、確かご自身のアルバムを制作中なんですよね?」

千葉「そう。実は、去年アルバムは一先ず完成していたんですけど、一旦保留にしようと思っていて...」

渡邊「それは、演奏含め自己完結しているアルバムなんですか?」

千葉「そう。の予定だったんだけど、ゲスト・ミュージシャンを何名か入れようかと思っていて。 それからレーベルを探そうかなと。ただ、次のアルバムにも着手していて」

渡邊「次の、次ということですか?」

千葉「そうです。時間はありますからね。地道にやるしかないですね...」

渡邊「杏さんの今後のご予定は」

須原「私はこの状況になって、バンドなどが一時活動休止になったこともあって、自分の時間というかライフワークができる時間ができて、のんびり、ゆっくりいこうかなと。ただ、自分のソロアルバムもまだ出していないから」

渡邊「アルバムの構想というかアイディアのようなものはあるんですか」

須原「なにか特定のアイディアがあるというよりは、いまコツコツ曲を作ってストックしている段階ですね」

渡邊「千葉くんは、杏さんのオリジナル曲は聴いたことがありますか」

千葉「ないですけど、昔から杏ちゃんにアルバムつくったらいいのにと言ってますね。早く聴きたいですね。」

須原「弦もですけど、最近は電子音も面白くて、いろいろ試してます」

渡邊「楽しみですね」

須原「…いま、琢磨さんの家で、鳥が鳴いてますか?」

渡邊「え...あっ、鳴いてますね。」

須原「それ、本物の鳥ですか?」

渡邊「たぶん本物だと思いますけど..どうでしょうね...」


註1:水戸短編映像祭は、例年秋に水戸芸術館ACM劇場を会場に開催されていた映画祭(現在休止中)国内における商業映画監督の登竜門の一つとして定評のあったコンペティション部門では、公募された自主制作のショートフィルムが上映され、冨永昌敬、沖田修一、今泉力哉、中野量太など数多くの映画監督を輩出している。過去には招待作品部門の企画として、バスター・キートンのサイレント映画に渡邊琢磨がピアノ伴奏をつけ、俳優の染谷将太が活動弁士を担当したライブ上映企画なども行なっている。
註2:アンダース・エドストローム:1966年スウェーデン・フロソ生まれ、ストックホルム在住。写真家。映像作家。『Elysian Fields』(ポンピドゥ・センター / 2000)、『Chic Clics』(ボストン現代美術館 / 2002)をはじめ、パリ市立近代美術館、フランス国立写真センター、ヴォルフスブルク美術館(ドイツ)、ヴィンタートゥール写真美術館(スイス)、東京都写真美術館、フランクフルト現代美術館などの展覧会に多数参加。 2001年よりC.W.ウィンターと共に映画を製作し、音楽家デレク・ベイリーを捉えたドキュメンタリー映画『One Plus One 2』(2003)、ロカルノ映画祭にて金豹賞およびロサンゼルス映画批評家協会インディペンデント・実験映画賞を受賞した『The Anchorage』(2009)などがある。 写真集に『safari』(Nieves/2010)、『Spidernets Places A Crew / Waiting Some Birds A Bus A Woman』(steidlMARK/2004)、『Hanezawa Garden』(Mack / 2015)など。2017年、amala galleryにて「Jan-Aug 2017」展開催。
註3:牧野貴
1978年生まれ。東京都出身。日本大学芸術学部映画学科卒業後、単独で渡英。映像作家ブラザーズ・クエイに師事し、照明と映画音楽について学ぶ。帰国後はカラーリストとして活躍する一方、フィルム、ヴィデオを駆使した実験的要素の極めて高い有機的な映画を制作。また前衛音楽家との共同作業でも、世界的に高い評価を得て、各国の映画祭や美術館などで上映される。2012年ロッテルダム国際映画祭コンペティション短編部門で 『 Generator』が日本人初となるタイガーアワードを受賞。その他、国際映画祭での受賞多数。
註4:鈴木正人
1971年6月ベルリン生まれ。ベーシスト/アレンジャー/プロデューサー。1987年、高校在学中に青柳拓次(Vo/G)、栗原務(Dr)とLITTLE CREATURESを結成し、90年にシングル「THINGS TO HIDE」でメジャーデビュー。その後、渡米しバークリー音楽院に入学。帰国後はバンド活動と平行して、ベーシスト、プロデューサーとしても活動。2005年3月、文筆家の内田也哉子(vo)と、渡邊琢磨(pf)と「sighboat」を結成。2006年、自身初となるソロアルバム「UNFIXED MUSIC」をりリリース。2007年、菊地成孔ダブ・セクステットに参加。2020年、デビュー30周年を迎える。人と人、音と音を繋ぎながら、シーンにおけるキーパーソンとして、その存在感を高めている。
註5:インペグ
INSPECTORの略。音楽のレコーディングやライブでリクエストに応じて、スケジュールや報酬の管理を含め、演奏ミュージシャンを斡旋・コーディネートする仕事。
註6:2018年に大分県の豊後大野市総合文化センター「エイトピアおおの」で開催されたコンサートでは、弦楽器の演奏経験を問わず一般公募された参加者が渡邊が書いた譜面を演奏した。


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プロフィール

■須原杏(Violin, Viola, Composer)
2/24。魚座。スタジオRECやLIVEの活動をメインに、幅広く活動中。今井美樹、宇多田ヒカル、森山直太朗、絢香、くるり、TKfrom凜として時雨、を始めメジャーシーンからインディーズシーンの様々なアーティストに携わっている。サポートの他にASA-CHANG&巡礼、TRIOLA、Gen Peridots Quartetのメンバーとして全国ツアーや海外フェスにも参加。

千葉広樹(Bassist, Violinist, Composer)
1981年岩手県盛岡市生まれ、東京在住の音楽家。
ベーシスト/ヴァイオリニストとして数多くのミュージシャンとの共演を重ねているが、2017年より本格的にソロ活動をスタート。コントラバスによるクラシカルなサウンドとアトモスフェリックな電子音、そしてエレクトリックベースで奏でられる幽玄なサウンドスケープにより、壮大で独自の世界観のあるパフォーマンスを繰り広げる。2019年には、東京都現代美術館で行われたファッションブランド”ミナ ペルホネン”のショーの音楽を担当。同年「Eine Phantasie im Morgen」と「Nokto」のアナログレコード2枚同時リリースを記念したソロツアーを行い好評を博す。その他サンガツ、蓮沼執太フィル、スガダイロートリオのメンバーとしても活動。優河 、渡邊琢磨、古川麦、王舟、Corey Fullerなど様々なアーティストのサポートも手がける。SSWの優河や湯川潮音のプロデュースの他、Julia Shortreed、Beatniks(鈴木慶一、高橋幸宏)、YUKI、吉澤嘉代子、王舟、小野リサ、関取花、前野健太、吉田省念、VIDEOTAPE MUSIC、Kie Katagi(Jizue)、などのレコーディングに参加。年内、ニューアルバムのリリースを予定。

平島悠三
1984年茨城県出身。水戸映画祭・水戸短編映像祭ディレクター。『SOME PAINTS』(2014/アンダース・エドストローム)製作。『Playback』(2012/三宅唱)ロケーションコーディネーター、『ローリング』(2015/冨永昌敬)共同プロデューサー、渡邊琢磨監督作『ECTO』(2019年)監督助手。

渡邊琢磨(音楽家)
1975年宮城県仙台市出身。高校卒業後、米バークリー音楽大学へ留学。帰国後、国内外のアーティストと多岐に渡り活動。07年、デヴィッド・シルヴィアンのワールドツアー、28公演にバンドメンバーとして参加。自身の活動と並行して映画音楽を手がける。近年では、冨永昌敬監督『ローリング』(15)、吉田大八監督『美しい星』(17)、染谷将太監督『ブランク』(18)、ヤングポール監督『ゴーストマスター』(19)、岨手由貴子監督『あのこは貴族』(21)、横浜聡子監督『いとみち』(21年、6月公開予定)、堀江貴大監督『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(21年、9月公開予定)、ほか。
*2021年3月3日発売「あのこは貴族 オリジナル・サウンドトラック」
https://tower.jp/item/5156506/


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