【社会起業家取材レポ#10】育児と仕事の両立支援で障がい者とその家族の暮らしを豊かに。
SIACの学生が東北で活動する社会起業家の想い・取り組みを取材する「社会起業家取材レポ」。今回は、SIA2021卒業生の横山翼さんにお話しを伺いました!
1. 横山翼さんについて
兵庫県宝塚市出身。2013年に宮城県石巻市に移住。2020年、石巻で障がい者が日常にいるそんな景色がある未来を実現するために、一般社団法人Hito Rehaを創業。「障がい者が持つ可能性を広げ多様な日常を愉しめる」、「障がい児者を育児する母親の働きたくても働けないがきこえない社会をつくる」という2つのVisionを掲げています。現在は、働きたくても働けない障がい児者を育児する母親の雇用を解決するためのオンラインコミュニティ事業、障がい者が本当にやりたいことに出会える街・地域・人との共存を目的としたライフスタイル事業を展開してる。SIA2021卒業生。
▷一般社団法人Hito Reha web
▷SIA2021最終pitch動画
2. 取り組んでいる社会課題
横山さんが取り組む社会課題は、「障がい児を育児する母親の雇用に関する問題」です。
日本では、障がい児を育児する母親67万人のうち17万人(4人に1人)が雇用を希望していても働けない状況におかれています。
この問題の背景には育児と仕事の両立の困難さがあります。例えば、子どもの調子が悪くなった場合、急に休みを取ることになり、勤め先の企業の理解不足や障がい児を育児していることを母親が隠して職場に話さないことが原因で仕事を続けられなくなることがあります。また、障がいを持つ子どもを預ける施設が少ないことも原因として考えられています。
3. インタビュー:これまでの歩み&今後の展望
「障がい者とその家族を誰も取り残さない」
横山さんは「障がい児を育児する母親の雇用に関する問題」という社会課題の解決を目指すと共に,お母さんが失いかけていた「誰かに認められることで生まれる自信」や、「社会の役に立っているという実感」といった“人としての誇り”を取り戻すことにも目を向けています。
「社会の役に立ちたい,誰かとつながっていたい」
お母さんも1人の人間です。横山さんは、人間が生活する根底にはこのような気持ちがあるのではないかとおっしゃいます。
そこで、横山さんは、お母さんたちの他者とのつながりが希薄化しているという現状を変えるべく、
・相談する機会の提供
・仲間づくりの機会の提供
という2つの取り組みを展開。
これらの取り組みを通じて、すぐに働くのではなく、少しずつ人としての誇りを取り戻しながら育児と仕事の両立を可能にするための仕組みづくりをされています。具体的には、理学療法士の知識・知見を活かして障がい児を育児する家族からの相談対応や、雑談ができるようなコミュニティ作りを行っています。
さらには、"働く"ことに対する小さな成功体験というステップを踏み新たな雇用につなげるため、親御さんたちと一緒に「Piece」という障がい児を育児する家族の本音を綴った冊子を作成し販売する活動も行っています。
現在まで、障がい児のお母さんが働きたくても働けないという課題を解決するために石巻だけでなく全国に向けて活動をされてきました。
ここまで横山さんを突き動かすエネルギーの正体は何なのでしょうか。お話を伺って来ました。
Q. 社会課題に触れたきっかけは何ですか。
A. 震災後に移住した石巻での生活です。
Q. 横山さんを突き動かす信念は何ですか。
A. "今ここに自分しかいない"と強く思うこと。
横山さんは、自己成長のため・自身の事業を考えるために、これまでに、グロービス経営大学院や石巻松下村塾、ローカルベンチャーラボ、SIAプログラムなど様々な活動に参加されてきました。その中でもSIAプログラムで得た学びとはどのようなことだったのでしょうか。
Q. SIAプログラムに参加して得た学びはどんなことですか。
A.「口ばっかり動かすな、手を動かせ」ということです
Q. 事業をしていて楽しいことや大変なことは何ですか。
A. 楽しいことは目の前でお母さんの変化が見れること。大変なことはPeaceの売れ行きが思ったよりも伸びないことですね。
最後に、横山さんの目指すHito Rehaの将来像について聞きました。
Q. 現在実施されている事業が理想的な状態になった時の石巻の1シーンはどんな様子ですか。
A. 温泉やカフェなど地域に、障がいを抱えた子どもを育児するお母さんが普通にいる景色です。
4. 編集後記
今回の取材は貴重な機会になりました。お話の中で特に「人間が豊かに生きるためには、社会や誰かとのつながりが必要」という言葉が印象に残っています。普段の友達との何気ない会話も、誰かとのつながりなんだと分かり、当たり前になっているけれど大切なのだと気付かされました。今まで考えることが少なかった、人間としての根源について興味を持つきっかけになりました。今後、自身のキャリアや住む場所を考える際には”豊かに生きる”という視点を取り入れてみたいと思いました。
また、私は将来教員になることを考えてるため、その点でも今回の取材は貴重な機会になりました。「口ばっかり動かすな、手を動かせ」という横山さんのお話にあるように、行動をすることで分かることもあると思うので、はじめから完璧じゃなくても動いてみることが大切なのだと気づかされました。将来子どもたちには、小さなことでも挑戦したことを認めて褒める指導をしたいと思います。子どもの挑戦の具体例として生徒会長に立候補すること、苦手な食べ物を食べることなどがあると思います。大人からすると小さな挑戦でも子どもにとっては大きな挑戦です。子どもが挑戦したことを認めることで、子どもの挑戦マインドが作れるのではないかと思っています。これから子どもに教える前に、まずは私自身も口だけでなく行動することを意識して生活をしていきたいと思います。
取材・執筆担当:佐藤和(尚絅学院大学 4年)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
マガジンはSIACプログラムに参加する大学生が執筆しています!
SIACプログラムの詳細は下記の記事をご覧ください!