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「ショッピングを文化にする」~暮らしを豊かに

生活に彩りを添える売り場づくりを演出する集団「interval studio(インターバル スタジオ)」が誕生しました。

その理念は「ショッピングを文化にする」。代表の髙草木晶(たかくさき・あきら)は「人の暮らしを豊かにできる買い物の場とかたちを提案したい」と語ります。

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買い物を楽しい瞬間に

—— 高草木さんはどんなことを実現したいのですか。

買い物に出かけるその瞬間が楽しい時間になるように仕掛けたい。生活の一部となって、ともすれば単調になりがちな買い物です。

こんな楽しい売り場には、こんな素敵な人がいると紹介したい。自分の願いに共鳴していただける人と連携して、場と空間を演出します。

喜ばれるショッピングの場には、何か面白い仕掛けがあり、働く人も生き生きしています。お客さまが楽しめて、自分たちも楽しんで、しかも世の中の役に立つ付加価値のある売り場を提案したいのです。

買い物を大きく二つに分けてみると、生活を維持するための営みと、希望を満たす楽しみの場があります。

生活のための買い物は変化に乏しくなりがちです。同じ買い物でも「きょう、ちょっとよかったわ」と楽しめて、ワクワクできるような価値を提供したいと思います。

日常の買い物に、ちょっとした工夫が加わると、非日常の楽しい体験の場に変わります。


クリエーティブな発想 工夫を重ねて

——自分の原点を教えてください

京阪守口市駅の駅前に京阪百貨店が1985年にオープンしました。「あなたが一期生」というはがきを見て応募し、開業前年の1984年に入社しました。


老舗の歴史ある百貨店とはちがって、初めてのことの連続でした。何でも一緒にやろうという社風が生まれ、チャレンジ精神に満ちあふれていました。

やがて、自分たちで新しいスタイルの売り場を企画することに目覚めました。

ギフト用の商品を自由に選んでギフトボックスに詰め合わせることができるセレクトコーナーや、地方の牛乳や醤油だけを集めたコーナーを設ける試みを始めました。

当時の上司も「やるならとことん、やれ」と背中を押してくれました。


「とっておきの味100選」という名称で売場スタッフが自分たちの目利きで探し求めたナショナルブランドじゃない商品を集め、大手百貨店では真似できない品揃えを目指しました。

全国の地方の名産品を集めて、地酒ならぬ地醤油コーナーが話題になりました。

地方の魅力的な品々を見つけてくることにこだわり、地醤油から、地ポン酢、地みそ、地もち……と対象を広げていきました。


自分たちのクリエーティブな発想の詰まった売り場は面白く、お客さまにも喜ばれました。

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必死に生きる人間の物語に魅せられ

——ご自身について、語ってください。

髙草木は、群馬県など北関東に多い苗字です。
祖父は、五七五七七に型式にとらわれない自由律新短歌の先駆者でした。


趣味は、読書です。開高健さんの「日本三文オペラ」や梁石日(ヤンソギル)さんの小説をよく読みました。必死になって生きる人間の姿や激しい生きざまを描く物語は好きですね。最近は、仕事に関係する本ばかり読んでいますが……。


虫一匹を殺すこともできない性格です。散歩ですれ違う犬や猫にも好かれると思っています。


人間性を豊かに~空間と時間の提案

—— interval studioの企業理念である「ショッピングを文化にする」という表現に、どんな願いを込めていますか。

若い頃、アメリカに研修旅行に行った際、売り場の一角にある小さな牛乳工場に驚きました。ショッピングの場が楽しく設計されているのです。日本ではまず、バックヤードを見せることはありません。

牛乳がパッケージに詰められる工程を見て、「これだ」と感性がゆすぶられました。そんな仕掛けがあると、子どもはガラスに額をへばりつけて、牛乳詰めの工程に見入ります。家に帰ってから「牛乳はあんな風にできているんやね」と会話も弾むでしょう。


同じ買い物をするのなら、楽しいほうがいいですね。


店員の丁寧な応対や感謝の気持ちが伝わると、当たり前の買い物がとてもいい時間にさま変わりします。

「大丈夫でしたか」とさりげないことばだったり、重い荷物を運ぶちょっとした心遣いだったり。ささやかな応対一つをきっかけに、人生観やライフスタイルが大きく変わることもあります。


なぜ、この品なの? なぜ、この棚はこの高さなの? そんな小さな事実にこだわりたい。そこに物語が加われば、お客さまのワクワク感を刺激できます。


漂うアロマによって季節のうつろいに気づいたり、ざらついた気持ちがやさしい店員の接客でなごんだり。せかせかした気分が落ち着いて人間性が豊かになる。

そんなショッピングを楽しめる空間や時間を提案したいのです。



聞き手・中尾卓司
interval studio  “column”(note)欄 編集・監修
1966年、兵庫県篠山市生まれ。1990年、毎日新聞入社。
松山支局、奈良支局、大阪本社社会部、東京本社外信部、ウィーン特派員、岡山支局次長、社会部おおさか支局長を経て、社会部編集委員を歴任。
2020年3月、毎日新聞を退職後、新聞記者として30年の経験をもとに「情報発信の伴走支援サービス」として「つなぐ、つながる、つなげる」をテーマに新たな情報発信サービスや取材・執筆事業にチャレンジ。現在、大阪大学と関西大学で、「ジャーナリズム論」の非常勤講師も担当。



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