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オンラインが、私の通訳に役立った?!【中編】

なんだか物足りない画面越しの通訳

オンラインでの通訳に切り替わった当初は毎回、接続に失敗したらどうしよう、途中で切れてしまったらどうしよう、と通訳どころではないくらい緊張していました。回数を重ねることで慣れていくと期待はしつつも、とかく新しいものには抵抗を感ずるものです。やはり最初のころはネガティブな変化ばかりが目につきました。

ネット環境や通信回線の見直しが必要だったり、Web会議ツールの使い方に四苦八苦したり、発言者の表情が読みにくかったり、通訳に入るタイミングを掴みにくかったり。初めてお目にかかるクライアントとも画面越し、人が集う場で生まれるはずの熱気も感じられず、どうしても一体感は薄くなってしまいます。通訳している自分もこの物理的空間に一人きりで、薄暗い部屋でパソコン画面に向かって声を張り上げているだけなのです。

会議が終わって帰り支度をしながらクライアントと雑談ということもなく、「退出」ボタンをクリックして、はい今日の仕事終わり。その味気なさに、早く対面形式の会議に戻って欲しいと思ったものです。

いい面も見えてきた

しかし慣れてくると、良い面にも気づく余裕が出てきました。移動時間が無くてすむので、その分を準備に充てられるし、直前まで資料に目を通していられます。遠方の案件でも移動しなくてすむということは、それだけ仕事のチャンスが増えることになります。通訳のあり方としては、合理的で効率的になったといえるでしょう。

これは通訳が入る会議に限りません。オンラインだからこそ参加しやすくなったセミナーやイベントも多いでしょう。距離や時差を気にしなくてもよいことで、新たな機会や学びの場が生まれてきていることを感じます。

本来通訳に必要なものは「声」

また、オンラインになるまでいかに非言語情報に頼っていたかにも気づきました。それまでは情報を理解するために、話者の言葉ではなく、表情や目配せといった視覚情報に頼っていた部分が大きかったということですが、言い換えれば、それだけ言語情報をおろそかにしていたということになります。この気づきによって、本来第一の情報源とすべき音声そのものにまず集中することの必要性を再認識することになりました。


【後編】につづく

執筆者:川井 円(かわい まどか)
インターグループの専属通訳者として、スポーツ関連の通訳から政府間会合まで、幅広い分野の通訳現場で活躍。
意外にも、学生時代に好きだった教科は英語ではなく国語。今は英語力だけでなく、持ち前の国語力で質の高い通訳に定評がある。趣味は読書と国内旅行。

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