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自社に強みがなくてもエージェントを味方につける方法

「声をかければ、動いてくれる」
「待っていれば、紹介してもらえる」
「エージェントを増やせばなんとかなる」
これらはすべて、誤ったエージェントとの向き合い方です。
 
超売り手市場の現代では、エージェントへの働きかけは、一種の「営業」活動です。
 
自社の採用工程を変えてでも、エージェントが動きやすいように調整して、いかにして自社の味方になってもらうかが、企業の人事担当者には求められています。
 
例えば日本を代表する大手自動車メーカーの人事担当者でさえ、エージェントからの要望にこまめに応えなければ、求める人材を紹介してもらえない時代のため、強みを語りづらい企業にとってはなおのこと。
 
そこで本記事では、そもそもエージェントの種類を整理した上で、強みがない企業でもエージェントに味方になってもらうための方法について、エージェント歴が長い人間ならではの視点から解説してみたいと思います。

執筆者プロフィール

InterRace株式会社ディレクター
村上幸弘

神戸大学卒。リクルートにて一貫して人材斡旋領域に携わり、営業、事業開発、法人営業企画Mgr、営業部長を歴任。年間1000名の超大型採用PJや日本発グローバルアパレル企業の採用立ち上げ支援・海外進出支援等、幅広い企業規模、業界/職種の採用支援の実績を持つ。現在はInterRace株式会社にて、人材紹介事業のリードと、複数企業の採用コンサルティング・採用業務支援を担う。

まずエージェントの特長をつかみ、使い分けること

エージェントと付き合う上でまずやるべきことは、現在契約しているエージェントの特長(専門領域など)の把握です。
 
多くの企業は、目標の採用数に届かなくなると、母集団形成のために、エージェントを増やそうとします。しかし、結局推薦が出てくるのは、以前と変わらない数十社のエージェントだけで、状況は進展しません。契約エージェントを増やす前に、今お付き合いのあるエージェントを下記の特徴別に分類して、管理しましょう。
 
1. 総合型 or 特化型
2. 専門領域は何?
3. 分業型タイプ or 両面型タイプ
4. カスタマーの集客方法
 
1. 総合型 or 特化型
「総合型」エージェントは、リクルートやパーソル グループ、パソナキャリアのような、業界や職種に関係なく幅広く求人を網羅しており、案件数も安定的に多いのが特長です。それとは反対に「特化型」エージェントは、特定の業種や職種などに特化した人材紹介会社のことです。
 
2. 専門領域は何?
これは「特化型エージェント」に限ります。ゲームやコンサルファームなどの業界、エンジニアや管理部などの職種、第二新卒、女性やシニアなどの性別や年齢など、専門領域は多種多様に分かれます。そのエージェントが得意とする専門領域がどこなのかを、しっかり押さえておきましょう。ここまでが、エージェントの一般的な特長分類になります。
 
3. 分業型タイプ or 両面型タイプ
エージェントの体制として、企業側とカスタマー側にそれぞれ担当者がいる「分業型タイプ」か、企業側と求職者側の両方を一人で見ている「両面型タイプ」に分かれます。
 
前者は、求人量とカスタマー(応募者)量が多いこと。特定の業種に特化した、企業担当(RA)とキャリアアドバイザー(CA)それぞれがつきます。ただし、RAを介してコミュニケーションをとるので、カスタマーに対するクロージングで、競合他社と取り合いになったときには、カスタマーの志向などを詳しくヒアリングしようとしても、RAでは精緻な回答が得られず、取りこぼしてしまう可能性があります。
 
後者は、企業側だけでなくカスタマー側にも直接対応しているので、カスタマーの相談にも迅速にレスポンスでき、紹介までつながるケースがよくあります。一方で、リーチできる数が限られているのがデメリットになります。
 
4. カスタマーの集客方法
カスタマーをどのようにして集客しているのか。エージェントによって大きく異なります。自社で求人メディアを保有しているエージェントだと、年齢、業種、職種など関係なく、多くの人を集められます。なお、総合型エージェントと同じように自社メディアを持っていて、集客力のある特化型エージェントもあるので、丁寧に情報収集しましょう。メインは派遣サービスを展開していて、そこからカスタマーが流入してくるエージェントなどもあります。
 
現在取引しているエージェントを、これら4つの観点で整理してみましょう。そうすれば、自社の採用を進める上で、今どういうエージェントが足りないかが見えてくるので、次の対策も講じやすくなります。

強みを語りづらい企業がエージェントとつまく付き合う方法

どのような企業も強みがないということはないはずです。ただ、競合と差別化しづらいケースも存在します。そのような企業は、どのようにエージェントにアプローチすればいいのでしょうか。
 
基本的な考え方は、エージェントが活動しやすい関わり方を目指すことです。

1つ目、エージェントの目標の持ち方に合わせた調整法

エージェントとひとくちで言っても、エージェントごとに目標の持ち方が微妙に異なります。あるエージェントでは、担当企業が決まっていて、求職者が担当企業以外に決まった場合は、そのエージェントの担当者(RA)の売上につきません。他には、掘り起こしてきた個人(求職者)が決まれば、業績としてカウントされるエージェントもあります。このように、エージェント(特に両面型タイプ)によって目標の設定方法は、さまざまです。
 
担当エージェントのRAが、どのように目標が設定されているのかを把握しておくと、担当RAの売上が立つように交渉すれば、向こうも自社への紹介を前向きに考えてもらえるようになりますし、自社の仲間になってもらえる可能性も高まります。
 
どういう目標設定になっているかは、本人と密にコミュニケーションをとって、直接聞くしかありません。さきほどもお話ししたように、エージェント各社で目標の持ち方が違っていたり、ルールが途中で変わったりします。エージェントとの関係を深めるためにも、積極的に尋ねてみましょう。

2つ目、併願先を狙う方法

例えば、自社が日系のコンサルティングファームで、周りにコンサルBIG4なる競合がある場合は、どんなに、自社が「こんな人材がほしいんだ」と伝えても、そもそも求職者(カスタマー)がスカウトメールに反応しなければ、エージェントには見向きもされません。
 
こうした場合、エージェントにとって動きやすい施策は、「BIG4の併願先」になるアプローチです。そのための情報提供ができれば、 エージェントにとっては邪魔にならないし、併願先が増えて、求職者の決定率の向上にも貢献できます。

3つ目、若手エージェントを狙う方法

同じ例で説明します。コンサルBIG4を担当しているエージェントは数多あるので、あえてBIG4に入り込めていない若手のエージェント担当を狙う手もあります。自社を理解することに意欲的な姿勢をもっているエージェント担当者であれば、カスタマーに対してコンサル業界のことが語れて、その中での自社の位置付けをちゃんと伝えることができるので、紹介につながる可能性も高まります。
 
自社の魅力が少なく、行き詰まっている時には、こうした目標設計の力学や、エージェント担当の経験などを考慮して、一段深くアプローチすれば、自社の味方として、頑張ってもらえる状態をつくることも可能です。

4つ目、2つのネットワークを押さえる

エージェントのRAは、同業者同士で繋がっているケースが非常に多いので、そこで利用するのも、エージェントを有効に活用する1つ方法です。
 
InterRaceでも、「この領域の求人あるんだけど手伝ってくれない」とか「こういうエージェントがいるけど、紹介しようか」などのやりとりを頻繁に行っています。そこから「あの人がやる求人だったら、ちゃんと決めてもらえるので、注力しよう」といった(エージェントの)コンサルティングネットワークができあがります。
 
まず押さえるべきは、分野に精通している「キーマン」を探し出すこと。そういうキーマンとつながりができれば、他の領域のキーマンとのつながりがもてるようになり、「あの企業の人事担当者は、決めてくれる」という評判が浸透して、強いネットワークを構築することも可能です。
 
もう1つは総合型エージェントのRAの後ろにいる人たちとのつながりです。CAが代表的ですが、それ以外にも、高年収帯のハイキャリア部隊や、求人媒体と組み合わせたソリューション活動をしている部隊などもあったりします。

しかし、一定の条件が求められるため、すべてのソリューション部隊が案内されるわけではありません。場合によっては、条件を満たしていても、案内されないケースもあります。そうしたソリューション部隊があることを知っていれば質問して、ネットワークとして活用することができます。

情報収集は、外部のHRプロ人材がおすすめ

これらのキーマンや別のソリューション部隊は、どのように把握すればいいでしょうか。情報収集は大きく3つに分かれます。
 
1つは、エージェントのRA担当に直接聞く方法です。信頼関係を構築できていれば、これが一番円滑に行えます。
 
2つ目は、他社の人事担当とこまめに情報交換をする方法です。
 
3つ目は外部のRPOやリクルーターなどのHRプロから情報を収集する方法です。
 
2番目と3番目のやり方だと、他社の採用方法なども合わせて確認できるなど、採用市場の相場感などを得ることもできます。特に外部のHRプロ人材は広いネットワークを持っており、エージェントの活用法まで詳細にアドバイスしてもらえます。

最初のコンタクトで、エージェントを見極める

最後に大事なことを1つ。私たちはエージェントを企業単位で考えてしまいがちですが、実際自社の味方になってくれるかどうかは担当者(RA)で決まります。最終的にはRAが、自社のことを好きになってくれるどうかです。

エージェントを企業単位で考えてしまいがちですが、実際自社の味方になってくれるかどうかは担当者(RA)で決まります。最終的にはRAが、自社のことを好きになってくれるどうかです。
 
では、RAはどのように企業のことを好きになるかというと、これは人によってさまざまです。市場の将来性や、業界でのポジションを聞いて、応援したいと思う人もいれば、人事担当者の人柄や人となりに魅力を感じ、頑張りたいという人もいます。
 
これを把握するのは、最初の商談した際のインスピレーションで、分かります。興味があれば、「御社のビジネスは、今どうですか」といった質問が出てきます。そういう方だと「じゃあ求人が出てきたら、現場と接点を持たせるね」と話せば、濃厚な情報を収集できるので、RAも自然とドライブがかかるようになってきます。
 
もう1つは、エージェント側からの提案です。「こんな形で関わらせてもらえれば、よりパフォーマンスを出すことができます」といった一言がもらえることも意欲のあるRAかどうかを見極めるポイントになります。それが言えるということは自信のある証拠ですし、エージェントが全力を尽くし、人事もやるべきことをやる、そういった関係になれる第一歩だと思います。こういった視点で、自社に合ったエージェントかどうか見極めながら、良好な関係をつくっていくことが大事になってきます。

さいごに

エージェントを有効に活用するには、気をつけるべきことや、やるべきことがたくさんあり、どこから手をつけていくべきか、悩むことも多いはずです。また、競合他社の状況など相場感を知らなければ、効率的な施策が打てない場合もありますので、分からないことなどが出てきましたら、ぜひお気軽にご相談ください。


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