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採用DXに失敗しないための、あるべきステップとは?

労働力人口が減少し、人材獲得競争が激化するなか、採用チャネルや新たな職種の多様化により、採用業務が高度化・複雑化している昨今。従来と同じ人的リソースや予算の投下では、期待できる採用効果が生み出せなくなってきました。
 
このような環境下では、採用にもDX化による生産性向上が求められます。

下に引用した経産省のレポートでも記載があるとおり、DX化は3つのステップにわかれ、デジタイゼーション、デジタライゼーションの2ステップがDX化の前提として実現できている必要があります(検討そのものはこの順番で行う必要はないとされています)。そして、採用DX化でも同様に、業務プロセスのデジタル化までが実現できて初めて、DX化が実現できると考えています。

出典:経済産業省「DXレポート2 中間とりまとめ(概要)」

では、業務プロセスのデジタル化はどのように進めれば良いでしょうか?

結論としては、ATS(応募者管理システム)を活用して採用プロセスを可視化し、PDCAを回しながら課題を改善して、最適化を図っていく方法が有効です。

本記事では、長年、採用現場でタレントアクイジションマネージャーとして、多くの採用課題を改善してきた山本皇貴さんに、採用DX化の前提となる業務プロセスデジタル化について、分かりやすく解説していただきます。

執筆者プロフィール

InterRace株式会社パートナー
山本 皇貴
 
慶應義塾大学経済学部卒。株式会社リクルートキャリアに14年在籍後、ブティック型転職エージェント、世界最大級のスポーツイベント職員採用Prjを経て、2019年よりInterRaceに参画。20年以上人材紹介ビジネスに携わり、日本を代表するメーカー、大手IT企業、グローバルメーカー、スタートアップ等の幅広い採用支援実績を持つ。 

なぜ、従来の採用手法ではうまくいかないのか?

まず、そもそも採用が高度化してしまったことが大きな背景にあります。急に高度化した、難しくなったというのが多くの採用関係者の実感ではないでしょうか。
 
なぜ採用は急に高度化してしまったのか。そこには3つの環境変化が考えられます。

①  人口減で減っていくターゲットに対し、競争が激しくなった

少子高齢化により労働力人口が減少していることは言うまでもありません。そもそも不足する人材に対して、DX人材採用などを中心に採用競合企業がボーダレス化したことが、人材獲得競争をより激しくしています。
 
つまり、減っていくパイを、増えていく競合が奪い合っているという状況です。採用が難しくなるのは当たり前です。

②  候補者獲得の採用チャネル・手法が多様化してきた

そういった流れに呼応する形で、採用手法も増えてきました。「求人メディア」も第二新卒、管理職、エンジニアなどターゲット別にさまざま生まれ、「エージェント」の数も特化型を中心に増え、バリエーションも豊富です。
 
ダイレクトリクルーティングは日常的に利用されるようになり、ツールも多岐にわたります。さらに自社のデータベースに応募者候補をストックする「リファラル採用」も普及し始めるなど、候補者を集める手段が多様化しています(多様化させなければ採用充足が難しくなったことと裏返しです)。
 
手法が増えることは、採用充足の強い味方にはなりますが、一方で様々な手法を理解し精通しなければ競争に勝てないため、採用の難易度は上がってしまいました。

③  採用対象が多様化し、採用実績のない職種を取ることになった

事業や業態の目まぐるしい変化により、今まで募集してこなかった職種も採用する必要が出てきました。
 
DX人材はその最たるものです。歴史ある上場企業のDX人材求人は、今や珍しいものではありません。そうなると、採用職種の幅が増え、しかも経験のない職種を採用する必要が生じます。
 
例えば、従来であれば採用予定人数100名で10職種だったものが、同じ採用人数でも20〜30職種となり、募集職種が多様化し、かつそのうちの20職種は今まで採用したことがない、といったような事態になります。
 
採用はマーケティング活動のため、ターゲット理解が非常に重要ですが、経験のない職種のターゲット理解は非常に難しいものです。

採用目標を達成したい企業が、まずやってしまいがちなこと

このような環境変化を受けて、採用が難しくなってしまった前提で採用活動を捉えることが大切です。
 
しかし、採用人数目標の達成のために企業がよくやってしまうことは、チャネルの拡大です。目標とする採用人数に届かないと、まずエージェントを増やしたり、ダイレクトリクルーティングでのメール送信対象者を拡大したりと、手数を増やすことに目がいきがちです。
 
実は、それでは期待した採用効果が得られないケースが多く、場合によっては従来よりも採用実績が落ちてしまう可能性もあります。手数が増えた分、生産性が悪化し、候補者体験の悪化にもつながってしまいかねません。頑張っているのに報われないという状況になるわけです。

採用目標達成に向けて、まず重要なこと

採用目標達成に向けてまず大切なのは、適切な業務(チャネルや選考プロセスなど)をきちんと設計することです。
 
どのようなチャネルやプロセスなら採用ができるのか?適切な相場観が必要になります。そしてその業務の状況をデータで可視化し、チューニングしていくサイクルを組み込むことが重要です。
 
設計する業務は例えば、面接回数は何回で、リードタイムは何日で、面接前の確認事項と共有事項は何で、候補者から来たメールはどこにどう保存するのか、それをATSで実施するとどうなるのか、など。大上段から細かい運用レベルまで多岐にわたります。
 
“採用は生き物だ“と言われるように、絶えず変化するなかでは、柔軟かつ迅速に課題を捉え、即座に打ち手を講じなければ、自社が求める人材を獲得することは今や絵空事になりつつあります。
 
適切な業務設計とデータによる可視化・チューニングは、先んじて営業現場で当たり前に導入されていることではないでしょうか。それを採用領域でも取り入れることで、高い効果と再現性を担保することができると考えています。
 
営業ではセールスフォースなどの営業支援システム(SFA)で可視化を行いますが、採用の場合はATS(採用管理システム)がその役割を担うことになります。

業務プロセスのデジタル化で生産性を高めるための4ステップ

具体的な手順は、次の4ステップになります。

STEP 1 適切な業務設計と、可視化する指標の明確化

まず採用ターゲットの設計、チャネル選定、面接などの選考プロセスなどの業務設計を適切に行います。そのなかで、どのプロセスを指標として測るのかを明確にします。
 
このステップで重要なのは、どのようなプロセスを設計すれば、今の採用マーケットで自社のアドバンテージがつくれるのか、相場観をもつことです。特に未経験職種の場合や、難易度の高い職種の場合、エージェントやタレントアクイジションマネージャーなど、外部のプロの視点も取り入れながら、プロセスに反映していくことが有効な打ち手となります。

STEP 2 他社と比較しながら、プロセスの最適化を図る

ATS を活用して、可視化された指標(数値)をもとに業務改善を行い、プロセスの最適化を図ります。その際、他社数値と比較しながら行えると、この数値が良いのか悪いのかを判断しやすくなります。
 
例えば、二次面接を設定する前に辞退者が多く出てくるのは、そこに至るまでの「リードタイムが長いこと」が理由として考えられます。あるいは、あるエージェントからの紹介者の辞退率が他社と比べて高い場合は、エージェント側で意欲づけされていないことが仮説として立てられます。
 
日頃から、こうした仮説を裏付ける数値をモニタリングしておけば、迅速に対策を打つことができます。前者であれば最終面接を行うタイミングを競合他社の状況をみながら決めていく、後者であればエージェントに対してより深い情報を提供するなど、密なコミュニケーションが必要になってきます。PDCAを回し改善を行うことで、数値の最適化が実現できます。

STEP 3 ムダを見直し、生産性の高い採用体制を確立する

STEP1とSTEP2を繰り返して、求めるポジションが埋まり、採用目標人数に到達することが見えてきたら、今度は採用業務のムダなどを抽出し、効率化に向けて業務の平準化を行っていくフェーズになります。
 
社内で行う業務と外部へ委託する業務を整理して、誰もができる業務はシンプルにして、マニュアル作成や自動化により採用体制(必要な人員/役割)を筋肉質に確立していきます。
 
オペレーションコストを下げることができ、一方でより戦略的で難易度の高い部分にコストをかけることができるようになります。こうなれば、採用競争力はますます高まっていきます。

STEP 4 『タレントプール』で、 他社と競合しない転職潜在層にアプローチ

最後は、タレントプールを構築する「ストック化」です。従来は求人メディアやエージェント、ダイレクトリクルーティングなどのフロー型採用が中心でした。
 
それを、さまざまなチャネルで接点のあった採用候補となる人材を自社のデータベースに蓄え、中長期的なナーチャリング(候補者の育成)を通じて、自社にマッチする人材を探し出していく「ストック型採用」が最後のフェーズになってきます。従来のフロー型採用と比較すると手間がかかりますが、他社と競合しない転職潜在層へのアプローチが可能になります。

まとめ

採用活動で生産性を向上するためには、チャネルを増やしたり、良いツールを導入したりするだけではありません。自社に合った業務設計をきちんと行い、業務プロセスを可視化して、PDCAを継続的に回せることが肝になります。
 
単純に言えば、業務設計→ATSへの投入→求人のターゲットとメッセージングの最適化→振り返り→改善のPDCAを回せば良いと言えます。そして、その際に必要なのが相場観です。
 
これまで私たちは、さまざまな企業の採用支援を通じて、採用業務の高度化に向けて取り組んできました。なかには、思い通りに行かないこともありましたが、その何倍もの数の成功事例を経験してきており、企業に応じた採用業務を提案し、伴走することが可能です。
 
業務設計やATSの導入は、1カ月半もあれば軌道にのせることもできます。ご興味がおありの方は、ぜひお気軽にご相談ください。


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