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博報堂がAIとの対話における仲介装置の特許取得

(株)博報堂がAIに関する興味深い特許(7445108号)を取得しました。
人間とAIが会話する過程で、その仲介装置が人間(ユーザ)に対して広告を不自然でない形で提示するという技術です。

ここでいうAIの典型はChatGPT(OpenAI社)です。ユーザとChatGPTが対話する際に、ある広告を自然な流れで表示できるように、仲介装置がChatGPTに指示を出します。

この特許明細書に挙がっている会話の例です。

「ユーザ:そろそろ夕飯にしようと思うけど何がおすすめ?

AI:今日はご飯作りますか?

ユーザ:はい、人参、大根で作れるものはある?
AI:煮物やけんちん汁はどうですか?

ユーザ:いいね。けんちん汁のレシピ教えて。
AI:醤油小さじ1、みりん小さじ1、調味料A小さじ1が必要です。調味料Aがあると、料理にアクセントが加わり、旨味を引き出してくれるのでおすすめです。
https://....
(調味料Aの画像a)」

このように、最後は調味料Aの画像を表示できるように、会話を運んでいます。その裏では仲介装置がAIに会話の運び方を指示しています。

①仲介装置が、「自炊」に話題を誘導するようにAIに指示
② 〃      「自炊」に対応するキーワードである「レシピ」又は「作り方」を会話から引き出すようにAIに指示
③仲介装置が、「レシピ」に対応する「調味料A」の遡求情報(注)を含む文を生成するように、AIに指示

(注)「訴求」という言葉が明細書で数多く使われています。広告用語であり、消費者に商品を買うように訴えることです。

つまり、この会話では「調味料A」をユーザに購入するように訴えかけるための情報を含んだ文章をAIが作成し、ユーザに提示しています。それが調味料Aの画像です。
この会話では、「自炊」、及びそれに関連付けられた「レシピ、作り方」に話題を運んでいます。さらに、これらキーワードには、「料理にアクセントが加わり、旨味を引き出してくれる」、調味料Aの画像aとリンクまで当初から用意されています。

特許第7445108号 図6
J-PlatPat(特許庁、INPIT)よりダウンロード


AIとの自然な会話の流れで商品の広告を提示できるように会話を誘導するという、広告会社ならではの発明であるといえます。

弁理士、株式会社インターブックス顧問 奥田百子
翻訳家、執筆家、弁理士(奥田国際特許事務所)
株式会社インターブックス顧問、バベル翻訳学校講師
2005〜2007年に工業所有権審議会臨時委員(弁理士試験委員)英検1級、専門は特許翻訳。アメーバブログ「英語の極意」連載、ChatGPTやDeepLを使った英語の学習法の指導なども行っている。『はじめての特許出願ガイド』(共著、中央経済社)、『特許翻訳のテクニック』(中央経済社)等、著書多数。