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2021.8.5 母の認知症と気晴らしのファッション

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2021.8.5 女性

「今、母が二子玉川の美容院に行っているんですけど、結構長くかかるんですね。カラー・カット・パーマで2時間半かかるので、ここで時間を潰していました。いつもは、お中元の時期だったらお中元を探したり、お友達のお誕生日プレゼントを探したり。目的があるといいのですけど、今日はこれといって目的がなかったので、必要ないものまで買っちゃった。一人でお茶もしちゃったので。

母が認知症なんですよ。毎回美容院に連れてきて、預けて。ここに来るのが気晴らしにもなるんです。母も30年以上そこに通っているので、あまり美容院を変えたくないと。3年くらい前までは一人でスイスイ来ていました。母はフラダンスをやっていたり色々やっていたのですけど、このコロナで家に(いることが多くなって)。そういうのもあって、フラダンスを辞めちゃった途端に認知症が進みましたよね。

認知症で日々大変だけど、月に一度二子玉川に来て。二子玉川は息抜きになっています。デイサービスに行っている間は自分の時間にして、走ったり。今は暑くてちょっと走れないですけど。自分の心の栄養剤としてお茶したり、一人でランチしたり。一人が好きなんです。一人でご飯も全く平気なんです。ここに来て気晴らしをして、ファッションチェックをしながら歩き回って。

今日履いているスカートはビームスです。元々、カナダグースを着たかったんです。年を取ってから着ると痛いので、まだいいわよね、という年齢のうちに着ておきたかったんです。娘たちにも「お母さん、着ていて大丈夫?」と言われないうちに。たまたまビームスに欲しいカナダグースがあったんです。そこで意を決して買ったら、ポイントがとっても付いたという。そのポイントで、このスカートを買ったんです。ロングのスカートってあまり履いたことがないんです。普段は動きやすいパンツが多いですね。1時間くらいなら母も待っていられるので、その間にパッと自転車で買い物に出かけて帰って来れるような格好で。それこそすっぴんで、帽子を深々と被って誰か分からないような顔をして行きます。

ファッションは好きですね。今、美容院に行っている母が、朝起きるとちゃんと(身支度を)する人だし。洋服もちゃんと整えている人だし。変な話、認知症になるとお財布がなくなる、とか疑われるという話をよく聞きますよね。でも、母は「誰かが私の化粧品をいじる」と言うんです。「またファンデーションがない、口紅がない」とか。この人はお金じゃないんだ、一番大事なものがそこなんだ、と。父は亡くなっているのですけど、母は父の出勤前には全て身支度が出来上がっていて、すっぴんで見送ったことがないんです。私にはできないことなんです。今は、母がその父を探してしまうんです。夜も「(夫が)帰ってこないからまだ私はお化粧を落とせない」「パジャマになれない」と言うんです。お金じゃないんだな、と。

母は穏やかな人で、これまで母に怒られたことはなかったんですよ。でも、この病気になったら、キレるんですよね。これまでは怒った母を見たことがないんですよ。母がバーン、とドアを叩くだけでも心臓が痛くなっちゃうんです。それで、たまにこういうところに来て。経済的には良くないけど、ピアスの一個でも買っちゃえば、気晴らしになりますね。」

この記事はBE AT TOKYOのプロジェクト、【BE AT TOKYO DIARY】で制作しました。

※感染症等の対策を十分行った上で取材しています。

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