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平成の時間とは何か。

 先日、京セラ美術館にて開催されている展覧会「平成美術 うたかたと瓦礫」の鑑賞に向けて札幌から京都へ赴いた。新型コロナウイルス感染拡大防止の理由により旅行を自粛していたため、実に1年半ぶりの本州旅行となった。  まず、先にお断りしておくと、この記事が表題の問いに対しての答えを導くものではなく、主観的な感覚の、感想文という認識で書いた。「平成の時間とは何か」という問いに対する答えのひとつはすでにこの美術展開催の理由のひとつにもなっているので、ぜひご自身で体感されたい。また、バ

    • 私たちは既にゾンビである。

      ※本記事はジム・ジャームッシュ監督の映画「デッド・ドント・ダイ」の考察記事です。 ・鑑賞当時の感想はFilmarksよりご覧ください。 ・Twitterはこちらです。 ・SoundCloudにて音楽も作っています。  ジム・ジャームッシュ監督の新作「デッド・ドント・ダイ」はゾンビの設定に現代の消費社会の行く末(人間の動物化)を投射した、(監督作品を全部見ていないのでこれは想像だが)監督作品としては珍しい、やや直接的に批判的な性質を持ったコメディ映画作品である。  映画の内

      • 社会の沈下により私は浮上する

        ・「メランコリア」初回鑑賞当時のFilmarks  https://filmarks.com/movies/16844/reviews/68168370  コロナウイルスが日本中に感染拡大したと報じられてから早3ヶ月が経過し、市場経済は世界恐慌に匹敵するレベルの落ち込みを見せた。都市部では体力のない飲食店が次々に閉店の看板を出し、筆者もその苦しみの一端を感じてさみしくなった。収入が続いている会社員も含め、国全体を鬱々とした空気が覆い尽くしつつある。しかし、不思議なことに筆者

        • 人は自分より不幸な人に対して語る術を持つか。

          ・映画「存在のない子供たち('18)」についての感想です。 ・2020年5月12日Filmarksに書いた感想を加筆修正しました。  https://filmarks.com/users/togari ・西加奈子の「 i 」についての感想はnoteに書きました。  https://note.com/instant_rebel/n/n23990c329ec3  西加奈子の小説「 i 」('16年)では、シリア難民として産まれた主人公「アイ」が物心つく前からアメリカ人の裕福な家

        平成の時間とは何か。

          FF7Rは旧神話を解体するか。

           1997年という時代をよく覚えていない。当時小学一年生の自分としてはクラウドよりマリオであり、ファイナルファンタジーというゲームさえ知らなかった。札幌の山間に住んでいるとその時代の感覚みたいなものから取り残されている感覚を覚える。  翌98年に公開された今敏監督のアニメ映画「パーフェクト・ブルー」では、携帯電話は普及しておらず、一人暮らしの家には固定電話とFAXがあり、インターネットは原義としてのオタクの巣穴で、そしてマッキントッシュは箱だった。最大の経済成長の時代となっ

          FF7Rは旧神話を解体するか。

          傲慢な自虐  ・西 加奈子「 i 」

           知らない世界で起きた悲劇や惨劇に胸を痛めたことがあるだろうか。  2001年9月11日にイスラム過激派集団アルカイダによって米同時多発テロが発生した。記憶していることが2点ある。ひとつは当時10才だった自分が飛行機がビルに突っ込んだという事実を看過していたこと、もうひとつは父親の都合でロシアに住んでいた同い年の友人が送ってきた一通のメールだった。彼がメールの文章からいかに事件に対して衝撃を受け悲痛な思いを持っていることがよく伝わってくる内容だったと記憶している。僕は適当にハ

          傲慢な自虐  ・西 加奈子「 i 」