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[導入事例:近畿大学附属高校]高3の大学入学前に視点を広げる機会を提供

Inspire Highが、学校現場でどのように受け入れられ、授業や生徒たちの学びに活用されているのか。この記事では、Inspire Highを授業で活用いただいた学校を取材し、教員の準備から授業の様子、生徒の反応まで、実際の活用事例をご紹介します。

今回ご紹介するのは、関西の名門校である近畿大学附属高等学校。中高あわせて生徒数は約4000人という大規模校で、中高一貫コース、近畿大学との「高大7ヵ年連携教育」を行う進学コース、英語特化コースなど、多様なコースが用意されています。

近畿大学附属高等学校・中学校のホームページより

同校は「グローバル社会で真に求められる人材の育成」を教育の軸のひとつとして掲げており、単に知識だけでなく、生徒の主体性、論理的思考力、発信力、コミュニケーション能力を養う教育を行っています。2021年度は、近畿大学に進学する高校3年生が、大学入学前の事前教育で「Inspire High」を使って学びました。さらに、そこから発展して、自分たちでテーマを決めた「下級生をインスパイアするプレゼン」を同校の下級生に向けて発表。「Inspire High」を活用した授業を担当した、社会科の山本悠真教員に、詳しいお話をうかがいました。

【学校情報】
学校名:近畿大学附属高等学校
所在地:大阪府大阪市
実施コース:近畿大学へ進学予定の高校3年生対象
【実施環境】
利用端末 :教員、生徒の端末(iPad)
授業時設備:AppleTV、プロジェクター、Keynote等

1. 導入の背景:
大学入学前に世界とつながる体験を

――今回は「入学前教育」でInspire Highを活用されたとのことですが、この入学前教育とはどのようなものでしょうか。

本校は附属の近畿大学へ進学する生徒も多く、「入学前教育」はこうした近畿大学への進学を予定している生徒に向けて、それぞれが進む学部ごとに大学入学に向けた事前学習を行っています。 Inspire Highを導入したのは、このうちの経営、総合社会、法学の3つの学部です。

近畿大学附属高校 社会科の山本悠真教員。
同高校から近畿大学へ進学した卒業生でもある。

――「入学前教育」でInspire Highを導入した理由を教えてください。

「入学前教育」は本校の特徴であると同時に課題でもありました。「入学前教育」は毎年教員の中で担当を決めて行うのですが、通常の授業にくわえて、それぞれの学部に合ったテーマを考えることから始めるので、教員側の負担はそれなりに大きいものでした。

一方、生徒のほうも、これまでの入学前教育では授業のゴールが見い出せず、あまりモチベーションが上がらないという実情がありました。
特に、今回実施した高校3年生は高校生活の大部分をコロナ禍で過ごし、修学旅行や文化祭といった大きなイベントをほとんど実施できずにいました。

そこで、2021年度の「入学前教育」は、最終的に大きな形になるものにしたいと考え、まず「発表会を行う」というゴールから設定しました。
そして、社会科のまとめ役である林先生からInspire Highを紹介されたのをきっかけに、生徒たちはまずInspire Highを体験し、そこからインスピレーションを受けて、今度は自分達が下級生をインスパイアする発表会を行うという流れをつくりました。

「入学前教育」のゴール

――山本先生が初めてInspire Highをご覧になった印象はいかがでしたか。

最初にInspire Highの紹介資料を見て、「これは面白そうだな」と思いました。私自身が外とのつながりが大事だと思っていた時でしたので、「世界とのつながり」というワードに非常に惹かれました
コロナ禍で留学もできず、長らく学校と家の中で生活していた生徒たちにとって、とても良い教材だと感じました。

――「外とつながる」ことの大切さについて、教えてください。

本校は近畿大学の附属校ということもあって人気がありますが、この先、長いスパンで見た際に「高校自体に魅力があるから入学したい」と志してくれるような学校でありたいと思っています。

また、私自身がそうでしたが、附属高校から大学へ進学する生徒が多いため、「近畿大学」という学校の中だけで完結するのではなく、外との色々なつながりを持ってほしい、Inspire Highはそうしたきっかけになると感じています。

2.授業事例:
アウトプットとフィードバックから自分なりのテーマを見つける

――Inspire Highを導入される際、どのような準備をされたのでしょうか。苦労した点などありましたら教えてください。 

苦労はなかったですね。Inspire Highのテキストブックをかなり参考にさせていただいたので、準備はとても楽でした。ただ、セッションの選定にあたっては、用意されている動画はすべて見ました。ちょうど、3年生の授業が終わって時間のある時期でしたので、1日かけてすべてチェックしました。

Inspire Highでは生徒のより深い学びを促進し、
教員の方々をサポートするテキストブックをご用意しています。

――すべてご覧になった上で、どのように使うセッションを選んでいったのでしょうか。 

授業は発表準備もあわせて3週間ほどだったので、そのうち2週間で5つのセッションを選びました。順番にもこだわり、1番目のセッションとして持ってきたのが、ゆうこすさんです。「自分にハッシュタグつけよう」というアウトプットテーマが、自己紹介代わりになり、グループ活動で行う入学前教育の、全体のアイスブレイクになると考えたからです。

山本先生が作成した授業案

――なるほど、見せる順番も重要ですね。セッションを使った実際の授業はどのように進められたのですか。

2022年1月から入学前教育がスタートしたのですが、ちょうど休校もあり、最初の1週間は対面で、その後はオンラインになりました。各セッションを、動画の視聴からアウトプット、フィードバック、まとめまで毎回2時間かけました。Inspire Highのガイドブックがとても便利で、大いに活用させていただきました。

Inspire Highの授業活用ガイドブック。
授業をより活性化するためのノウハウがまとまっている。

――山本先生が授業で工夫された点があれば教えてください。

Inspire Highの機能を使うだけでなく、各教員がファシリテーターとなって、グループでアウトプットとフィードバックを行いました。また、オンラインの場合はZoomのブレイクアウト機能を使うなどの工夫をしました。
私の好きな『アイデアのつくり方』という書籍に、「アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせ」という一節があります。こうした言葉を、セッションの内容にあわせて生徒たちに伝えたりしていました。

山本先生が授業で使用したスライド。
おすすめの本などもあわせて紹介した。

今回の最終的なゴールは「発表」でしたので、私自身も常々意識しながら「ティーチャーではなく、ファシリテーターである」ことを話しました。今回、私が担当したのは文系に進む生徒でしたが、特に文系では「場づくり」ができることは大事なスキルのひとつだと思っているので、こうした場づくりの方法などを伝えられるよい機会になったと思います。


3.導入後の効果:
生徒自ら発見や気づきを得られる体験へ

――実際に授業を行ってみて、いかがでしたか。

これまでは、教員も生徒もモチベーションがもてない状況でやってきていましたが、今年度は教員もやりがいを感じることができました。何よりも発表を終えて充実した生徒たちの顔を見たときに、本当にやってみて良かったと思いました。 

――「入学前教育」を受けた生徒さんの反応について教えてください。 

もっとも多かったのが「コミュニケーションがよくとれて良かった」というものです。通常のクラスと関係なく、進学する学部で集まったため、最初はあまり知らない生徒とのグループ学習に不安を感じていたようでしたが、実際にZoomのブレイクアウトルームに分かれて話してみると、きちんと意見も言い合うことができました。

他にも、
「同級生からのフィードバックをもらう機会があってよかった」
「座学より新鮮で、他の授業でもやってほしい」
「新しい視点を獲得できた」

など、終了後のアンケートでは、とてもポジティブな意見が多かったですね。

生徒が制作した発表スライドの一部

また、印象に残ったのが、退職代行のEXIT代表取締役の新野俊幸氏のセッションを取り上げたところ、授業後に生徒が「こんなことでもビジネスになるなんて考えもしなかった」と話していたことです。

「こんな小さなことでも問題になるんだということが、改めてわかりました」という言葉を聞いて、授業を通じて1人でもインスパイアできたのかなと嬉しくなりました。


4. 今後について:
文系だけでなく理系にも広げていきたい

――今回、Inspire Highは複数の先生が使われたとのことでしたが、どのように連携されたのでしょうか。

もともと、本校では教員が各々の裁量で自由に行う形で進めていますが、Inspire Highを使った社会科の授業では、5人の担当教員で週1~2回ミーティングを行いました。「ここは、こうしていきましょう」ときっちり話し合い、その後も進捗や生徒の様子などを報告したり、資料を共有したりしていました。

「入学前教育」の担当は持ち回り制のため、次年度は私たちは担当しないのですが、次年度以降のメンバーも継続できるようにという共通意識を全員がもち、議事録もとりました。今後は、毎年その年のメンバーの特色を出しながら、続けていってほしいと思います。

――それは楽しみですね。では、今後はどのようにInspire Highを活用していきたいか教えてください。

当初は「世界とつながって、多様な方のお話を聞くことができる」という点を第一に考えていましたが、実際にやってみるとアウトプットの部分が非常に重要で、教員の腕の見せ所でもあると感じました。Inspire Highはインプットだけでなく、この「自分の立場で、自分の意見主張をちゃんとする」ことこそが、最終的なゴールだと思います。

すべての授業が終わったあとに、担当した教員全員で話し合ったところ、「どうせなら、文系だけでなく理系もすべて Inspire Highを活用したらよいのでは」という意見が出ました。セッションの幅がさらに広がったら、様々な学部の教材として使えるのではと思っています。

また、個人的に考えているのが、中高一貫コースでの「総合探究」での活用です。最初にお話したように、中学からずっと同じ学校に属しているため、もっと色々な世界を見てほしいと思いますし、教員側のファシリテーター能力の向上にもつながるのではと期待しているので、ぜひ使ってみたいですね。

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Inspire Highによって視点を広げインスパイアされた生徒たちが、今度は自分たちで後輩をインスパイアしていく。そんな素晴らしい連鎖が、近畿大学附属高等学校では生まれていました。

生徒数の多い大規模校では一斉導入は難しいものの、今回の近畿大学附属高等学校の「入学前教育」のように、スポットで効果的に使うことによって、生徒の興味関心を育み、アウトプットの機会に役立つことが改めて実感できる事例となりました。