[導入事例:クラーク記念国際高校]生徒が自発的に変化。学ぶ意欲が高くなる授業づくり
今回ご紹介する事例は、全国に教室拠点をもつクラーク記念国際高等学校です。同校には全日型からオンライン+通学型まで生徒の学び方や興味関心に沿った多様なコースが用意されています。
Inspire Highが導入されているのは、2021年度から新設された、オンラインと通学を組み合わせたハイブリット型の「スマートスタディコース」です。2021年は同コースの1~3年の全学年で、対面とオンラインによるInspire Highの授業が行われました。クラーク記念国際高等学校 CLARK SMART千葉の副キャンパス長を務める岩﨑毅先生に、詳しいお話をうかがいました。
1. 導入の背景:
多様な人と出会う機会を提供したい
――Inspire Highを導入したきっかけを教えて下さい。
本校は全国にキャンパスがあり、多様な生徒が所属しています。スマートスタディコースは2021年度から始まったばかりの新しいコースですが、前身にあたるコースが3年前からあり、私はその立ち上げから携わっていました。
本コースが始まったきっかけは、既存の学校に合わない多様な生徒を受け入れる場づくりでした。
同時に、時代に合った新しい学びのスタイルの確立を重視していますが、生徒たちがいろいろな世界にふれて、さまざまな価値観や多様性を育むためは、外部からの刺激が必要だと考えました。とはいえ、現在は容易に外部と繋がりづらく、学校の教員は「教員の世界しか知らない」人が多い点が課題だったのです。
さまざまな教材を模索した中で、Inspire Highを使えば、学校としてもなかなか接点のない著名人の方や、さまざまな業界の方の話が聞くことができ、生徒たちの多様性を育むという意味でもとても魅力を感じました。実際、Inspire Highを初めて知ったとき、「今までどうしてこういう教材がなかったんだろう!」と思ったほどです(笑)。
――導入の際、苦労した点などはありましたか。
各セッションにガイドがしっかりついていて、何をするかというテーマや課題も明確なので、どんな教員でも使いやすい教材だと思います。教員の使い方によって「大きく差が出ない」というのは、とても大事なポイントです。新卒の教員からベテランまで誰でも使えて、同じような教育効果が得られる。生徒たちが主体的に学習に取り組むためのツールとして最適です。
本校の他の教員もInspire Highを使い始めていますが、特に準備などはしていません。教員はセッションを事前に見ておくとよいですが、あえてまっさらな気持ちで、生徒と一緒に見て感じるのも楽しいのかなとも思っています。
というのも、教員は「このテーマに対しては、ここに着地してほしい」と誘導しがちですが、Inspire Highはそういう教材ではありません。生徒たちがテーマに対して自由にアウトプットして、お互いに共有をして広げていくものです。だから、私は「生徒と一緒に楽しんで」と伝えています。
2.授業事例:
対面型・オンライン型でハイブリッド活用
――実際の授業では、Inspire Highをどのように活用しているのでしょうか。
大きくわけて、3パターンの授業展開をしました。まず1つ目が、生徒たちを実際にキャンパスの教室に集めて、1つのセッションをみんなで鑑賞するスタイルです。2つ目が、オンラインでの実施。3つ目が、生徒それぞれが好きなセッションを選んで、自分でアウトプットや課題に取り組むというものです。私個人としては、1つ目の対面での活用が好きです。
対面では、クリエイティブディレクターの辻愛沙子さんと、タレントの田村淳さんの2つのセッションを活用しました。今回はこちらで選んだものにしましたが、生徒に自由に選んでもらうのも面白いと思います。一度、教室で生徒たちに好きなセッションを選んでもらい、同じセッションごとにチームわけをしたのですが、「この子はこういうのを選ぶんだ」という気づきが私にも大いにありました。
セッション後にそれぞれ考えたことをアウトプットする時間を設けました。他の人のアウトプットを見たり聞いたりすることによって、「こういう発言をしていいんだ」と発言のハードルを下げられ、各々の考えを引き出せる環境を作ることができました。活発な意見交換が生まれた点はとても良かったです。
3.導入後の効果:
生徒が学ぶ意欲を持ってくれた
――実際に導入してみての評価はいかがでしたか? 活用にあたって工夫した点などもあれば、教えてください。
生徒たちの反応を見て、「誰が言うか」というのは大事なんだなと思いました。Inspire Highは、田村淳さんや渡辺直美さん、教科書にも登場されている谷川俊太郎さんなど、生徒にとっても興味を引くようなラインナップだったことも良かった点のひとつです。
また、生徒が自分で考えた言葉でアウトプットする経験の練習にもなります。子どもたちはSNSの影響もあってか、文字で書くことは比較的得意なのですが、その反面、自分がいま考えていることや気持ちを言葉で言うことが苦手です。そのため、グループで行う場合は、最初に「相手の意見を否定しない」「思ったことをすぐに言う」などのルールを徹底させ、“心理的に安全な状態”で、どんどん発信できるような環境作りを心掛け、アイスブレイクやファシリテーションも意識するようにしていました。
――活用した授業のなかで、生徒さんのご様子や変化などはありましたか?
私たち教員が言うより、セッションのガイドの言葉のほうが生徒たちには響くようです。プログラミングのコースに通っている生徒から「プログラミングが難しくて辞めたい」という相談を受けていて、「絶対大事だから、辞めないほうがいいよ」と止めていたのですが、「無理」と言い続けていました。そんな彼が、Inspire Highのオードリー・タンさんのセッションを見たら、「今やっていることって、これから必要かもしれないし大事かも。大変だけど頑張る」と言うようになり、そのまま辞めずに続けたんです。それはすごいことなんですが、「今までの相談は何だったの」という思いは正直ありましたね(笑)。
私たち教員が、普段から生徒たちに伝えている「勉強って大事だよ」「学校ってこういうところだよ」ということを、Inspire Highで違う角度で話してもらったり著名な方が言ってくれたりすることで裏付けや動機に繋がっていくのは、私たちにとっても嬉しいことです。
また、ある帰国子女の生徒の場合、英語の能力は高いのですが学習意欲がなく、進路の話も響かずで、少々手を焼いていました。でも、Inspire Highではアフガニスタンの学校創立者であるシャバナ・バシージ=ラサさんのセッションを自分で選び、ワークシートに自分なりの考えをきちんと書いていたのです。その生徒がそんな考えをもっているとは思っていなかったので、ビックリもしましたし嬉しくもありました。その後の保護者面談でもワークシートを保護者と共有し、「こんなことを考えていますよ」とお伝えすることができました。
4. 今後について:
生徒がファシリテーションし合う授業へ
――最後に、Inspire Highに期待すること、御校での今後の取り組みを教えて下さい。
「この日のこの時間にこのテーマをやりなさい」ではなく、生徒たちが自分で好きなセッションを選んで視聴し、学びを深めていくことが、最終的な活用のゴールだと考えています。ただ、そこに至るまでは大変で、いかに教員が興味を持たせられるかが大事。教員がファシリテーションすることで生徒たちがアウトプットする楽しさを感じ、最終地点にたどり着けたらいいかなと考えています。
その最初の段階としては、できれば対面のグループで行っていくのがベストです。また、生徒がファシリテーションをする、上級生が後輩のグループにファシリテーターとして参加するという経験もInspire Highなら可能です。「人と関わる」ツールの1つとして、これからも活用方法を模索していきたいと思います。
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「Inspire Highによって外部の人との関わりをもち、自分の考えをアウトプットし、多様性を育むことができる」と話す岩﨑先生。生徒たちの興味関心を深め、学びの意欲を高めるツールとして、さまざまなキャリアやバックボーンをもつガイドのセッションは非常に親和性が高いことを改めて感じました。