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[導入事例:日本大学明誠高等学校]未知の世界と出会うきっかけを創る。答えのない問いに対し、「自分なりの考え」を表現する力を育成。

Inspire Highは、日本全国の小学校から高校まで、様々な地域、校種で導入されています。
実際に、学校現場でどのように受け入れられ、授業や生徒たちの学びに活用されているのか。Inspire Highを授業で活用いただいている学校を取材し、教員の準備から授業の様子、児童生徒たちの反応、さらには導入の効果まで、実際の活用事例をご紹介します

今回は、山梨県の日本大学明誠高等学校における1年生の授業事例をご紹介します。同校は、1960年4月、日本大学創立70周年記念事業の一環として開校しました。
校舎は上野原市の高台に位置し、豊かな自然に恵まれた広大なキャンパスを擁しています。2024年3月には新校舎が完成するなど、教育環境が整備されています。また、2020年よりICT教育を開始し、生徒と教員全員にiPadを配布しています。授業だけでなく、部活動や学校行事の場でも積極的に活用されています。

2022年度からInspire Highを導入し、1年生の探究学習の教材としてご活用いただいています。今回、ICT委員長の金田真幸先生にInpire Highの活用事例とその効果についてお話をお伺いしました。

日本大学明誠高等学校ホームページより

【学校情報】
学校名:日本大学明誠高等学校
所在地:山梨県上野原市
実施対象:高校1年生


1. Inspire High導入の背景

ーーはじめに、Inspire Highを導入した経緯について教えてください。

ICT委員長としてICT教育について情報収集をしていた際に、学校向けのEdTechサービスとしてInspire Highが紹介されていたのを見たことがきっかけです。
「総合的な探究の時間」の必修化に合わせ、本校の探究学習をどう進めていくかを考える中で、Inspire Higは本校の探究学習の突破口になるかもしれないと思い、導入を決めました。

ーー具体的にどのような部分で突破口だと感じていただいたのでしょうか。

元々、生徒に様々な講演者の話を聞く機会をつくりたいと考えていたのですが、Inspire Highでは教員には伝えられない、世界中の多様な考え方や仕事についての話を聞くことができ、キャリア教育に最適だと感じました。
また、本校では探究学習が土曜授業での実施になるため、部活動の遠征などで参加できない生徒もいるのですが、Inspire Highは動画教材のため授業当日に参加できない生徒が後で視聴できるという点も、本校にマッチしていると感じました。

日本大学明誠高等学校 ICT委員長 金田真幸先生

2. Inspire High活用事例

ーー探究学習ではどのようなねらいや目的を設定されているのでしょうか。

23年度は、各地で紛争や戦争が起きている現状と、Inspire Highが「世界と繋がる」ことができる教材であることを踏まえて「世界平和」をテーマに定めました。そして1年間の学びの集大成として、学年末に実施する探究発表会「アカデミア明誠」で、生徒が世界平和について自分なりの考えを発表することをゴールに設定しました。

ーー「世界平和」という大きなテーマに対して、どのように授業を設計したのでしょうか。

「自己を知り、他者を知り、世界を知る」という流れを意識し、生徒の身近な問題から範囲を広げていく中で、世界平和を“自分ごと”として理解できるように設計しました。
当初は、「身近な争い」として生徒が思い浮かべるのは友人や家族間の揉めごとが大半で、宗教やジェンダーの問題など、社会的な争いまで派生させて考えを深めていけるか不安を感じていました。ですが、Inspire Highを活用した段階的な授業設計と、多様な平和な状態を生徒が自分なりに捉えてアウトプットすること、それら全体が有機的に繋がるように授業を構成し、実施してきました。

ーー具体的な授業内容についても教えてください。

授業は月に1回・2時間続きで実施しました。前半の1時間目はInspire Highのセッションを使用し、ガイドの多様な考えや価値観を通して、自分なりの考えをアウトプットしてもらうことで、問いと向き合うきっかけを創出します。
そして後半の2時間目は、前半に生み出した考えをさらに深めるためのワークやアクティビティを実施します。例えばタイのドラァグクイーン、パンジャイナさんのセッションを使用した回では「Yes/Noヒアリング」というワークを行いました。様々な設問に対してまずは個人でYes/No/Otherのどれかを選択してもらい、その後グループごとに考えを共有する中で、多様な考え方に触れる機会をつくりました。

授業の様子
授業資料一部

3. 1年間の学びの集大成「アカデミア明誠」

ーー先ほど触れていた、学びの集大成「アカデミア明誠」についても教えてください。

「アカデミア明誠」は探究学習などの取り組みの成果を発表するイベントで、2022年度から年度末に開催しています。他者の考えや活動に触れることで、自身の視野を広げ、人間力を育成することを目的としています。

当日の様子

ーー2023年度のアカデミア明誠ではどのようなことを実施されたのでしょうか。

2023年度は本校の1年生と2年生、総勢約800名が参加し、学年ごとに1年間の学びの集大成を発表しました。
Inspire Highで1年間学んできた1年生は「私にとっての世界平和」というテーマで代表の5名の生徒がプレゼンテーションし、それぞれの生徒の考えに対して会場の生徒と意見交換を行いました。また、今回はゲストとしてInspire Highナビゲーターの清水イアンさんにも参加いただき、発表者一人ひとりにフィードバックを送っていただきました。

プレゼンテーションを行う生徒

※発表した生徒の世界平和に対する意見
「みんながお腹いっぱいご飯を食べられること」
「当たり前の日常を送れること」
「全ての人が武器を持たなくなること」
「表現の自由が守られること」
「暴力を伴う争いが起きないこと」

ーー実施してみての感想など、ぜひ教えてください。

登壇した生徒は一人ひとりがそれぞれの方法で、自分なりの考えに到達していました。そんな生徒たちの発表は他の教員の想像を超えていたようで、イベント終了後には「この1年間どのような取り組みをしてきたのか」という質問をたくさん受けました。アカデミア明誠を通してInspire Highを活用した探究学習の一つのゴールを学校内の他の先生方にも提示できたと考えています。
また、清水イアンさんが参加してくれたことは生徒の刺激にもなり、最後にお話してくれた「世界平和」に対する考えは、何より教員たちの心に大きな影響を与えてくれました。

ーーそんなアカデミア明誠を含め、今年度の探究学習を通して、生徒の変化はどのように感じていますでしょうか。

探究学習は未来への投資で、すぐに効果が出るものだとは考えていません。
一方、アカデミア明誠で、普段の授業中に発言をするタイプでなかったのに、登壇者の発表に対して自ら手を挙げて意見を伝えた生徒がいました。それをきっかけに普段の授業でも積極的に発言するようになり、探究学習を経て一人の人生が変わったかもしれないと感じました。

4. 今後の展望と全国の先生方へメッセージ

ーー探究学習を今後どのようにアップデートしていきたいですか。

Inspire Highには、本来知ることのなかった世界に出会うチャンスが溢れています今後は生徒が「もっとセッションを見たい」と思ってもらえるような仕組みづくりを行い、未知の世界と出会うきっかけをたくさん創りたいと考えています。
現在はこちらが決めたセッションを全員一律で視聴していますが、今後は生徒それぞれ自分で選択した興味のあるセッションを視聴する方法も良いかもしれません。
また、本校の「卒業生版Inspire High」なるものを実施できたら面白いのではと考えています。例えば本校の卒業生に、元JICA職員で、現在はアフリカでコーヒー豆の栽培と日本への輸入販売を行っている方がいるのですが、そういった世界で活躍する卒業生の話は、生徒にとってより身近で、違った角度からインスパイアされる部分があるのではないかと思っています。

ーー最後に、全国の探究学習に取り組む先生方へメッセージをいただけますでしょうか。

今まで教員が見てきたこと、身につけてきた知識が、必ずしも生徒にとっての正解とは限らない時代になっていると感じます。Inspire Highに登場する多様なガイドの話に耳を傾けることで、新たな視点や考えがきっと得られるはずです。探究学習やICT教育にお困りの先生方は、ぜひInspire Highを一度使ってみて欲しいです。

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日本大学明誠高等学校では「世界平和」という「答えのない問い」に対して、Inspire Highを活用し、身近なところから視野を広げていく中で、生徒それぞれの「自分なりの考え」を表現する力を育成していました。
Inspire Highに用意されている多様なセッションは、各学校の探究学習の目的に沿ってご活用いただくことが可能です。探究学習やICTの活用にお悩みの先生方はInspire Highの活用事例として、ぜひ参考にしてください。