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[導入事例:女子聖学院中学校]社会課題を「自分ごと」として捉え、多角的な視点を養う

Inspire Highは、日本全国の小学校から高校まで、様々な地域、校種で導入されています。
実際に、学校現場でどのように受け入れられ、授業や生徒たちの学びに活用されているのか。Inspire Highを授業で活用いただいている学校を取材し、教員の準備から授業の様子、児童生徒たちの反応、さらには導入の効果まで、実際の活用事例をご紹介します。

今回は100年以上の歴史を持つ伝統校、女子聖学院でのInspire High活用事例を紹介します。同校は米国プロテスタント教会の婦人宣教師だったバーサ・F・クローソンによって、1905年東京築地の地に創立されました。キリスト教教育と女子教育という2つのアイデンティティを土台に、「自らの賜物を用いて他者と共に歩む事のできる女性」を育んでいます。116年余りの歴史の中で揺るぎない土台を大切にしながら、時代の流れに沿い、未来を見据えた柔軟な教育を実践しています。

2021年度からInspire Hgihを導入し、探究学習の教材として活用いただいています。今回、探究委員会の委員長として校内の探究学習を推進されてきた松尾先生にお話をお伺いしました。

女子聖学院中学校・高等学校のホームページより

【学校情報】
学校名:女子聖学院中学校
所在地:東京都北区
実施対象:中学2.3年生


1.Inspire High導入の背景

ーー女子聖学院では、どのような探究学習が行われているのでしょうか。

女子聖学院の探究学習では中高の6年間を通し「仕える人になる」という一貫したテーマを掲げ、自分軸を形成する「マイ・コンパスプロジェクト」に取り組みます。「マイ・コンパスプロジェクト」は生徒が当事者となる様々な活動を通して、学び方を学び、多角的な視点から学ぶ意味を見出すことを目的としています。中学校では総合学習を週2時間設定し、探究学習を行っています。

女子聖学院中学校 探究委員会 委員長 松尾知実先生

ーーInspire Highの導入の背景についても教えてください。

生徒の視野を広げるために、本校の卒業生に来校してもらい、講演してもらうプログラムを実施していたのですが、それだけでは不十分だと感じていました。そんな時にInspire Highを知り、学校にお呼びすることが難しいような方々にお話を聞くことができ、まさに「視野を広げる」という目標に合致していたこと、そして補助金で活用できるタイミングだったこともあり、挑戦してみようと思いました。

2.Inspire High授業事例

ーー実際にどのようにInspire Highを授業で活用されているのでしょうか。

例えば、ある授業では「アフガニスタンの学校創立者と考える 学校の意味ってなんだろう」というセッションを視聴した後に「学校に通うことのできない子供は世界にどれくらいいるか」「低所得国における男女の就学率の違い」など世界の現状を知ってもらい、日本の現状についても考えてもらいました。「私立の学校に通う人の割合」「経済的問題から教育の機会が乏しい子供がどのくらいいるか」など具体的な数字を見せると、かなり衝撃的だったのかショックを受けている様子が見られました。世界から日本へと視点を移したことで、より身近な問題として受け取ってもらうことができたと思います。

女性が教育を受けられていない状況が続くアフガニスタンで、女子学生のための学校SOLAを18歳で設立したシャバナさんと、学ぶ意味について考えるセッション。
授業後半で生徒に出題されたクイズ

ーーこの授業はどのような目的で行われたのでしょうか。

「視野を広げる」というテーマに沿って、当たり前に通っている「学校」について改めて考えてもらうことが目的です。
もともと中学1年生から中学2年生の1学期まで「学習方略」をテーマとし、生徒それぞれに「自分に合った学び方」を考えてもらいました。中学2年生の後半では、「視野を広げる」というテーマに進んでいくのですが、自分自身のことを探究するという内側に向いていた目を、どのように外に向けていくかが問題でした。

そこでシャバナさんのセッションを活用し授業を行うことになりました。生徒たちは、東京の私立中学に通わせてもらっている立場ですが、どこか勉強をやらされているような気持ちの子も少なくありません。そんな生徒たちに、自分視点の考えではなく、他の角度から見たときの自分の立場に気づいてもらいたいと考えました。

ーー生徒のリアクションからどのようなことを感じましたか。

これまでにも、ジェンダー格差や教育格差の話を聞いたことがあったはずですが、今まではどこか「他人事」に感じていた部分もあったと思います。今回の授業で当事者のお話を聞き、身近に起きている問題を知ったことで、「自分ごと」として捉えられたのではないかと感じました。

授業の様子

3.Inspire Highを活用した感想

ーーInspire Highを活用してみて、率直な感想を教えてください。

生徒のアウトプットを見ていると、彼女たちの本当の気持ちが反映されてるなと思いました。普段はなかなか手が進まない生徒も、スムーズに自分の意見を書く様子が見られました。全てiPadで行うので、普段友達とやり取りするような感覚で、考えたことを素直に書くことができるのかなと思います。

他の授業の提出物を見ると、先生に見られることを意識して、「良いことを書く」生徒が多く、結果としてみんな似たような内容になっていると感じることもあったのですが、Inspire Highのアウトプットではそれぞれが思ったことを自由に書いてくれていると感じます。

また、今まで見えなかった生徒の意外な発見があるのも面白いです。夏休みには、生徒に好きなセッションを選んで見てもらったことで、どんなテーマに興味があるか可視化されました。

4.女子聖学院にとっての探究とは

ーー探究学習の意味を、どのように捉えていますか?

実生活や仕事においても、課題を見つけ、解決方法を探っていくプロセスが必要とされています。つまり、「生きる力」は「研究する力」だと考えています。

今まで、部活動でうまくいかない時にどうするか、成績を上げるためにどうするかなどと考える中で、生徒たちがなんとなく身につけてきた課題解決のプロセスを、教員側がはっきりと明示してあげることで、生徒は自分が身につけてきた力に気づき、「自分はこうなりたい」というビジョンを明確にできると思います。

ーー最後に、探究学習を通して生徒に届けたい思いを教えてください。

生徒それぞれに悩みや問題はあると思いますが、総合的に見て恵まれた環境で育ってきた彼女たちに、社会問題について自ら知ることの必要性に気づいてほしいです。今まで社会問題に接する機会がなかった生徒に、探究学習を通して関心を持てる分野や、得意な分野を見つけて欲しいです。

もしかすると、なぜ探究学習をやっているのかわからない生徒もいるかもしれませんが、今後、探究学習が活きる瞬間が必ずあるはずです。例えば社会に出たら、周りが1から丁寧に教えてくれるわけではありません。そういった時に、 自分のことを振り返ったり、周りに目を向けたりして、問題を改善していく方法を模索していくことが重要です。探究学習を通してそのサイクルを身につけて欲しいと考えています。

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Inspire Highを活用し、生徒の視野を広げ、社会課題を「自分ごと」として捉えるきっかけを作っている女子聖学院の探究学習。世界に目を向けることで、自己理解を深め、生徒の興味関心を引き出せるような授業を実践しています。Inspire Highの活用事例として、ぜひ参考にしてください。