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ロジカルシンキングは研修では身につかない?

こんにちは、公開講座部で責任者をやっているものです。朝晩の通勤路も、秋色が濃くなりました。人が戻り始めた社内を見まわし、みんなの元気を確かめることから今日の仕事が始まります。今年は特に、インフルエンザに加えて新型コロナの感染もあって、社員の健康には細かく気を使っています。

ロジカルシンキングがなぜ人気なのか

さて、ロジカルシンキングは当社の定番研修で毎年人気ですが、コロナ禍で多くの企業の教育計画が変わっている中でも、相変わらず人気なことに「なぜだろう?」という疑問を持ちました。階層を問わず苦手意識を持っている人が多いスキルなのは間違いないのですが、それを差し引いても驚くばかりの人気ぶりです。

ロジカルシンキングは、ポイントを明確にし、円滑に仕事を運ぶための武器となる考え方です。特にビジネスシーンにおいては「論理的に考える」だけでなく、「論理的に考えて、行動する」ことが何よりも重要です。そのため、座学だけで何となく理解できたとしても、アウトプットされなければ意味がありません。

この前提を踏まえて人気の要因を考えると、コロナ禍で仕事の進め方が大きく変わり、アウトプットする機会が増えたことや、その質が変わったことからではないかと考えました。

想定外の状況下でも必要なスキル


アウトプットの機会が変化した要因としては、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会変容に関係があると思います。具体的には、リモートワーク、テレワークの浸透です。一つの課題やテーマに対して「分解して・要素を洗い出し・整理して・対処する」という仕事の一連の流れが、リモートでは見えにくい、伝わりにくい、というもどかしさがあります。そのため、「もっとロジカルになってほしい」、「ロジカルに考えられるようになりたい」というニーズが強くなってきたように思います。

もしもロジカルシンキングが身についていれば、こうした想定外の状況下でも臨機応変な対応が可能になるはずです。リモートでも対面でもアウトプットに差は出なかったことでしょう。「ロジカルでない」状態は、言い換えると「分かりづらい」です。仕事の進め方の変化によって、「分かりづらさ」が表面化してしまったのでしょう。

上司からのダメ出しが成長を促す


実は、ロジカルシンキングを身につけるために最も効果的なのは、上司からダメ出しされることではないかと思っています。私が海外で仕事をしていた頃、ショックを受けた出来事がありました。パッションとキャラクターを頼りに暮らしていた私が、ある時、上司に報告をしていると「So what?」と言われたのです。

「それで?私に何を求めているの?」と言われてしまいました。多分、私は相手が理解しやすい論理的な話し方をしていなかったのです。その瞬間、一気に自分の不備を悟りました。日本では「相手の意図を汲み取る」という暗黙の了解があるのですが、ここでは通じない。何を望んでいるか、なぜ必要か、どのようなリスクと効果があるのか、などを論理的に話さなければ、仕事は進まないことを肝に銘じたのです。(日本特有の「意図を汲み取る」がリモートワーク下では難しくなっていることは皆様のご推察の通りです)

全ての人に通じる例ではありませんが、論理的な思考とは、身近な上司への報告の仕方、上司からの的確なフィードバックの繰り返しから、次第に身についていくものではないでしょうか。時には、強烈なダメ出しに辛い思いをすることもあるでしょうが、こうした経験が関係者に対する誠実で明確な対応を生むことになると思っています。論理的であることを意識・実践し、それでも失敗してしまった経験を活かし、関係者の信頼を得て成果に結びつけられたら、こんなに嬉しいことはないでしょう。

想定外の相手こそ学ぶチャンス


しかし、世の中はいつも予定通りに事が運ぶわけではありません。関係者の中には、表層的な利害に集中する方もいます。感情的で視点が偏った方もいます。そんな時には、結論から話さず時系列で説明した方がいいのか、段階的に少しずつ核心に触れた方がいいのかなどを即座に判断して、対応を切り替えることも必要になります。いろいろな関係者のパターンを知っておくことも必要です。その時、経験を重ねたロジカルシンキングがベースにあれば、必要な情報と不必要な情報、分かっていることと分からないこと、などを即座に整理して具体的・建設的な提案が可能になります。やはり実体験を重ねることでしか得られない成果があります。

上司も試されるロジカルシンキング


上司との関係も同様です。さまざまなタイプの上司に対して、シミュレーションをするつもりで、対応を考えるのもアウトプットの訓練になるでしょう。前提として、上司自身がしっかりロジカルシンキングを身につけていることが重要ですが。

私は、仕事の大部分はコミュニケーションだと考えています。上司からの一方通行では仕事全体の完成度が劣り、部下のモチベーションにも影響します。時折、今さら「ロジカルシンキング」など学び直せないという方がおられますが、新しい情報を上乗せすることも大事です。多くの部下指導の研修にはロジカルシンキングが含まれているので、気持ちを新たにする機会として利用していただくことも「あり」かな、と思っています。


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