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コートにウエストベルトがついている理由

街や雑誌で見かけるロングコートにはウエストの部分にベルトがついていることがありますよね?

ウエスト(あるいは、その少し上)の位置でベルトを締めることで、ウエストを細く、足を長く見せる効果があり、スタイルアップを図ることができます。

ただ…!!
この記事をご覧になられた7割…いや8割くらいの方はこう思っているはず。
「コートについてるあのヒモいらなくね?!」

そこで今回の記事では、使わない人にとっては本当に必要のない
「あのウエストベルトがなぜロングコートについているのか?」という謎を解き明かします。

ロングコートのウエストベルト、あれ、何?


ロングコートを着用するシーズンに雑誌を開くと、身長の高い細身のモデルがウエストベルトをギュッと締めたスタイリングに身を包んでいることがしばしば。
ヒモをぷらぷらさせるのが邪魔で、買ってすぐ外す人も少なくないのでは?
わたしはあまり使用機会がなく、すぐ外す派。
クローゼットにあのベルトだけが大量に宙ぶらりんなんてことも…。

そこで、ふと思ったのです。
あのウエストベルトって、一体何の意味があるの?…と。

ここまであえて、“ロングコート”と表現してきましたが、ウエストベルトがついている代表的なコートといったら“トレンチコート”を思い浮かべることが多いはず。

たしかにトレンチコートにウエストベルトがついている。(Wikipediaより

トレンチコートといえば、イギリス陸軍が戦争において塹壕(敵の攻撃から身を守るために掘られた溝)で着用するために作られた防水のコートであり、ミリタリーの文脈に由来するものです。このウンチク自体はかなりどうでもいいのですが、ミリタリー文脈で用いられていたという点が重要。

ミリタリーに由来を持つアイテムは無駄が徹底的に排除されています。当時、戦いに勝つために作られていたものですから、当然、無駄なディテールは邪魔になるわけです。

有名な例を挙げると、アメリカ空軍が着用していたフライトジャケットのMA-1は、狭いコックピットにおいて機材に引っかかったり、機器に干渉しないよう、余計なデザインを排したミニマルなデザインに仕上げられています。

トレンチコートが着用されていたのが陸軍であるとはいえ、このMA-1の理屈でいえば、ウエストベルトも取っ払ったほうがよさそうに思えます。

益々、無意味さが増す、ロングコートのウエストベルト。
まさか、戦争時にスタイルアップを図っていた訳ではないでしょうから…。
その正体とは…一体…。

ウエストベルトの正体は、意外にもシンプル。


散々引っ張りましたが、ウエストベルトの正体は意外にもシンプル。
それは…
『陸軍が戦いの時に使っていた手榴弾やナイフといった武器を腰にぶら下げておくもの!』
正体に迫るヒントは、“陸軍が使っていた”という点にありました。

ミリタリーアイテムは無駄がない!と話しましたが、まさにウエストベルトも無駄ではなく、むしろミニマルなデザインの中に残った意味のあるディテールだったわけです。

ということは、現在私たちが着用するロングコートのウエストベルトの源泉には、この手榴弾やナイフを下げるためのベルトだった!という事実があるわけです。実に興味深いと思いませんか?

ドリス ヴァン ノッテン 2024年春夏コレクションより

今後、雑誌や街の中で、ウエストベルトをしばったスタイリングを見つけた際には、是非ニヤッとしてください。

あるいは、これを読むあなたのスタイリングにぜひ取り入れてみてください。現代風に解釈すれば、AirPodsあたりを下げるといいのかな…?
やってみます。


insominaです。本日もご覧いただきありがとうございます。
春や冬になると、どの雑誌を開いてもロングコートのスタイリングが必ず掲載されていますね。そこで目についたのが、ウエストベルト。ギュッと縛っていたり、タラしていたり…。これって一体、何の意味があるんだっけ?と思い、まとめてみました。
洋服のディテールに関する豆知識が知りたい方は是非、左のアイコンから他の記事もご覧ください!

ではまた次の記事でお会いしましょう


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