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心も物も、もとの位置に戻すだけでよかったみたい

おもむろに部屋のドアが開いた。ベッドで寝転がって漫画を読む僕に母が話しかけてくる。「誕生日プレゼントにこれあげるわ」と言いながらずかずかと部屋に入ってきた。
その手には一冊の本があった。その本を受け取った時に、人生で一番バツの悪い顔をしていたことは言うまでもない。

バツが悪そうな僕を無視し、母は話し続ける。「あんた、心乱れてるやろ」目の前にいる母がどうしてしたり顔なのかはわからないけど、実際息子はぐうの音も出ない。

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忘れもしない。この鮮やかな水色だ。母から手渡された本は、晴れた夏の日の青空よりもずっとずっと鮮やかな水色をしていた。忘れられない本当の理由は色のせいじゃない。「あんた、心乱れてるやろ」の母の一言のインパクトのせいだ。

そんなこんなで僕のもとに長谷部(の本)がやってきた。読書は好きだし読まないともったいない。だからまあ、なんとなく読んだ。心が乱れているから読んだわけではない。だ、断じて乱れていなかったはずだ。

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さすが日本代表のキャプテンの長谷部。いいことばっかり書いてた。なにを書いていたかと聞かれるとネタバレになるから書かない。覚えてないんじゃない。あえて書かない。マナーだからさ。

「心を整えるための習慣づくり」的な話が書かれていたはずだ。当時の僕はバカだったので「ほーん。なるほどな(ほじほじ)」ぐらいのテンションだった。「心なんてよっぽどのことがないと乱れないだろ」とか思ってた。今思えば、そういうところやぞ井上って感じでしかない。

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「心ってあっちいったりこっちいったりするなぁ」とさっき外を眺めていて思った。どうして外を眺めてそう思ったのかはわからない。僕の心が乱れているからかもしれない。

そんなことを考えていたら、長谷部が似たようなこと言ってた気がしたんだ。それで8年も前の話をわざわざほじくり返してきたわけだ。

心って思ったよりすぐに影響を受ける。前提をそこにしておくと楽なのかもしれない。『心を整える』を読んでいたのに、心を乱して体調を崩したから余計にそう思う。

心って安定するところに勝手に戻ると思っていたけど、どうやらそうじゃない。自分でもとの位置に戻さないといけない。こまめに片付けないと部屋も散らかる。それと同じで片付けないと心も散らかる。放置すればするほど片付けるのも大変になる。部屋も心も一緒かもしれない。

生きてるといろんな感情と思考があって、それに振り回される。そして僕らは忙しさで振り回されていることにも気づかない。いつしか心は安定するどころか、宙に浮いたまま漂い続けてしまう。
だから『心を整える』なんだよね。きっと長谷部がもう言ってることを言い直しただけだけどさ。

え?出版社の回し者じゃないかって?いやいや、そんなわけないでしょ。

幻冬舎さん、宣伝したんで週明けに口座にお金振り込んでもらっていいですか?

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