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本当のところ今の香港ってどうなの!?

香港とのつきあいも27年目、家族も香港に住んでいるものだから、よく聞かれるのが「香港って大丈夫なの?」「今の香港ってどうなの?」っていう質問。あまり詳しく返答するのも面倒なので「大丈夫!」としか言わないけれど、香港は、今までと基本変わらない…とても安全な都市の一つです。ただし、言論には注意が必要になりました。そして、また、この数年で世界の状況が変わったように香港も「変わったな!」と思うことはやっぱりあります。

実は、香港にいる家族からは「いつ帰ってくるの?」。親戚や友人たちにも「なんでこんなにも長い間香港に戻ってこないの?」と散々言われてきたわたしでしたが、日本で同居している高齢の父のことを考えると長く日本の家を離れる気になれませんでした。その間に何度も香港の家族は日本にも来ていました。

それでも、とうとう香港での永久居民としての身分証明証(IDカード)を持っているわたしは”3年以内に香港に戻った方が面倒なことにはならない。”という理由と銀行関連の手続きをきちんとしておきたくて、香港行きを急遽決めたのが渡航の2週間前。2021年の6月末から実に2年9ヶ月ぶりの渡航。

行くと決めてからは、楽しみで仕方がありませんでした。家族、友達、ビジネス関係者に会うことや、久しぶりの我が家での滞在、香港の料理、そして、香港の街並みに空気感。あの頃から変わったことがあるのかな?同じであって欲しいけど、すでに多くのことが変わったことは知っている。

そんなわたしの今回の香港滞在(2024年3月5日〜3月11日)で感じたこと、また、香港の変化に関して私的視点で書きたいと思います。


2021年・香港に起こっていたこと

わたしが香港を離れる前からコロナの感染予防のための規制は香港内でも始まっていました。2021年のはじめ、それほどキツくなかった規制も香港と中国本土で「ゼロコロナ対策」が敷かれ、段々と厳しくなり、ワクチンを接種していない人は日常生活を送るのが厳しいほどの規制。世界でも1、2位を争う厳しさだったと思います。

コロナ禍が始まるその前の年の2020年に、香港では新しい法律(国家安全維持法)が可決され、市民の言論に対して厳しくもなってきていた中での、このゼロコロナ対策は、本当に厳しい環境で、不安や不満が潜在的に蓄積されて窮屈な生活だったという声も聞いていたのですが、本当にみんな耐えたなというのが印象です。

そんな中、2023年1月30 日には陽性者の隔離義務が廃止されるとともに、規制はどんどん緩和され、およそ3年間続けられてきたマスクの着用義務が3月1日にいよいよ全面的に撤廃されました。そこからは、早かったですね。
日本以上に香港の方々のマスク離れは進んでいきました。

2024年 久しぶりの香港〜感じた変化〜

香港の自分の家に戻り、家族に会い団欒し、親戚や友達、仕事仲間たちと会うことができた香港滞在。今回はどうしてもやっておかなくてはいけない私用で急遽、香港へ行ったけど、香港に行くとふっと身が軽くなれるような気がしました。街を歩いていると「やっぱり変化しているな〜」と感慨深く思いました。以前は、変化とともにそこで生きていましたが、今は間をおき2年9ヶ月ぶりの香港でした。そこで感じた香港について書きます。

1、物価高騰

これは世界的に起こっている現象ではありますけど、香港にも物価上昇、値上げラッシュは継続しています。ただ、もう頻繁に値上げが予告もなしに行われるのは以前からですし、驚くこともないでしょう。世界で最も生活費が高い都市と言われる香港で、市民の生活を直撃している物価高。今回も2年ほど前と比較すると20%ほどの値上げの肌感覚でした。

2、ますます便利になっている香港交通網

香港って元々小さな都市なんです。面積は約1100平方kmで、東京都のおよそ半分ほどの大きさ。 ですので、すでに香港の南北東西とタコの足のようにどこにでも公共機関で移動ができるほど便利な都市なんですが、現在はさらに便利になっていて、時間の短縮や小さな土地に住んでいる約750万人の人たちの足をまだまだ、便利にしているようです。

今回は、通勤のためにいつも使っていたホンハム駅。出口まで変わっていて、迷子になったりしましたが、新界から香港島(金鐘)までダイレクトに行けるようになっていたのは、本当に便利だなと思いました。

3、不動産価格の下落

2023年9月時点で、世界一不動産価格が高い国(都市)は香港です。

1位:香港 ・アジア(2万5,133ドル / 約370万円
ちなみに日本は58カ国中18位:東京/銀座・アジア(4,691ドル/約69万円)。
この数字を見るとその高さがよくわかると思います。

実は、夫が若い頃に購入していたマンション(現在私たちが住んでいるマンション)も値上がり具合はハンパありません。桁が2つは違ってきます。価格で例えると10倍以上はくだりません。その分物価も上がっていますが、2021年に価格ピークを迎え、その時から20%下げた住宅価格が、今年はさらに10%下落すると予測しています。

香港の不動産会社は数十年にわたって順調に成長してきましたが、その後は2019年の反政府デモ、新型コロナウイルスのパンデミック、域内と中国本土の景気回復の遅れなど危機の連鎖に見舞われています。

4、人口増加と西洋人の減少

今回顕著に感じたのは、いわゆる西洋人の方々が減っている…と言うことでした。
香港等で飲食業を営んでいる経営者数人に話を聞くと、やっぱり同様のことを言っていたんですね。いわゆる欧米系の英語が聞こえてくることも減っていたし、今まで夕方近くになると西洋人でストーリーとが溢れていたSOHOエリアもガランとしていて「商売上がったりで移転した。」というビジネスオーナーも。

実は、香港政府によると、2023年は香港の人口が前年の747万人から3万0500人(0.4%)増加し、750万人となったんです。
コロナ禍で海外に行っていた住民が戻ってきたことと、それに伴い時刻に戻っていたお手伝いさんなる外国人労働者も戻ってきたこと、そして、中国本土からの移民流入が押し上げ、新型コロナウイルス禍以来の2年連続の人口増加。

確かに香港は、中国化が進んでいるなとこの時は思いました。

5、中国大陸からの移民の増加

実は、わたしの香港人の知り合い、元同僚、香港人と国際結婚をしている夫婦の多くは、すでに香港を去り、その多くはイギリス、カナダなどへと移民をしていきました。わたしも同時期に日本へ帰国していますし、そういう意味では、人口の減少が顕著に出ると思っていたんですね。2020年の香港国家安全維持法施行後のことです。

確かに多くの人が海外へ移住したので、少子高齢化も重なって人口は減少、学校は生徒減少で閉鎖が相次いで決定、各業界は深刻な人手不足になったのです。

香港政府は様々なスキームを導入し域外から人材を誘致し続けています。その結果、中国本土からの移民が増え人口の減少に歯止めがかかり、現在は増加していますが、移民が増え続けると今まで香港が持っていた「国際性」などの特徴が失われるんじゃないかと心配になります。

香港のこれから

1、ゴミの有料化


今まで暮らしていてゴミの分別は各家庭に任せられていました。なので分別は勧めるけど強制的ではなかったんですね。それが今年8月より、ゴミ袋の有料化が始まります。ゴミ袋のサイズは9種類(3L、5L、10L、15L、20L、35L、50L、75L、100L)あり、1Lにつき0.11香港ドルで購入。ゴミ袋には入らない大きさの粗大ゴミは、袋の代わりに指定のラベルを購入して貼り付けます。大きさに関わらず1個あたり11香港ドルです。これに関して、今回の規制で多くの方が「面倒くさいよ〜。有料にもなるしね〜」と愚痴をこぼしていました。

2、日本企業の進出

日本企業が香港に設置している拠点数は1,403社と、前年から15社純増した。機能別では、「地域統括本部」が206社(前年比2.8%減)、「地域拠点」が411社(2.2%増)、「現地拠点」が786社(1.6%増)だった。

それぞれについて経年の推移をみると、「地域統括本部」と「地域拠点」の拠点数はここ数年はほぼ横ばいで推移し、いずれも新型コロナウイルス流行以前の2019年6月時点の水準(「地域統括本部」232社、「地域拠点」431社)に届いていない。

一方で、「現地拠点」は2020年には前年比で0.7%減少したが、その後は3年連続で増加。2023年には2019年比で4.8%増となった。新型コロナウイルス流行以降、日本企業が現地(香港内)で事業展開を図る傾向が依然として強まっている。

By JETRO

今回、街を歩いていてい思ったのは、日本企業の看板がまた増えたな!と言うことでした。以前からあるものも、もちろん多いのですが ”スシロー、マツモトキヨシ、ニトリ、etc" もちろんその他多くの企業を見かけます。また、最近では、鳥貴族も香港に参入することが発表されています。

面白いと思ったのは、香港国際空港第二ターミナルに超大型ショッピングモール「11天空/11Skies」が2024年から2025年にかけて段階的にオープンするのですが、ここは香港最大の広さを誇り、モール内には日系の「キッザニア」が進出することになっています。話題にもなりました。

去る企業ももちろんあります。しかし、日本のとある業界で聞いた嬉しい情報筋としては「香港と中国(本土)」は別に考えると言うことで、再度香港でもビジネス参入を検討している企業も増加傾向にあるということです。

その反面、米国・英国企業の地域統括本部数の減少は顕著です。

「地域統括本部」について、親会社所在国・地域別にみると、中国本土による「地域統括本部」の設置が2年連続減少した。加えて、米国(前年比10.8%減)と英国(14.2%減)で前年から2桁減となった。一方で、ドイツ(4.3%増)、フランス(1.3%増)、イタリア(13.9%増)は増加した。

by JETRO

3、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)の発展

このグレーターベイエリアは、わたし自身すごく思い入れがあるプロジェクト。事業開発に香港で関わっていた時に、香港・マカオと中国広東省内主要都市 を統合し、地域発展を目指す計画で商工会議所や現地ビジネス協会などの勉強会で日本としての関わりなども見せていただいていました。

日本国内ではそんなに知られていないのですが、”このグレーターベイエリア構想・開発が香港の強みを活かしつつ、中国との発展に向けて大きな役割を果たす”と言われています。このことを書くだけで1冊本がかけそうなので、ここでは省きますが、この構想は現在進行中です!

香港の李首相は、2024年の政府活動報告において「広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)など経済発展で優位にある地域が、質の高い発展の原動力としての役割を果たせるよう支援する」と言及。香港政府に対して香港の強みを発揮し、中国の発展と統合に向けて積極的に役割を果たすよう求めた

サウスチャイナ・モーニングポスト
グレーターベイエリア(広州、深圳、珠海、仏山、中山、東莞、恵州、江門、肇慶)

そして、変わらない香港


香港に降り立った2024年3月。
飛行機から降りて歩いていると空港内でツーリストらしき方達に中国語、韓国語、英語で声をかけられました。わたしが現地の人に見えたのかは不明ですが、降り立った瞬間に他言語が聞こえ、あの独特の生ぬるい、湿度の高い空気を感じた瞬間に「ああ、香港に戻ってきた」と感じました。

まるで、昨日まで普通に香港にいたような自分。そして「水を得た魚」のようにこの空間の中での居心地さを相変わらず感じました。

確かに政策やさまざまなことは変わりつつあり、世界の香港に対する評価は以前とは変化しています。以前と同じような金融都市として、自由都市としての期待度が減少しているという事実はあります。しかし、たとえ状況がそのようになり香港を去っていく企業もありながら、変わらずこの香港でビジネスをしている多くの外資、日系の企業がいます。

また、香港にはわたしの家族や親族、そして、香港人、日本人、さまざまな背景を持つ友達が住んでいる香港は、今もわたしを暖かく迎えてくれる土地でもあります。物価や環境の変化は今までも大きな変化でしたが、1番変わったことは、残念ながら以前ほど自由に発言ができなくなったこといでしょう。そのことで、多くの知り合いが移民をし、新たな人生を歩んでいます。

それでも香港という土地での出会い、共に働き、共に同じ時間を過ごしてきた仲間たちは、今も世界に散らばったけど、この時代の特権で簡単に連絡が取り合えているのは幸いです。

これからもわたしの第2の故郷香港へは行ったり来たりするので、これからも香港の状況を追いかけたいと思います。

#この街がすき  #香港 #HongKong #海外在住 


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