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創作をしている人は必ず読むべし!クリエイター漫画5選

クリエイターを描いた漫画が好きだ。自分自身が映画を作っていたことがあったり、最近は「ことばの学校」に通って小説や批評を書いたりしているので、読むと奮い立つような気持ちになる。

そんな僕がここ数年で読んだ、クリエイター漫画を紹介したいと思う。何らかの創作活動をしている人であれば、「めちゃくちゃわかる…」と自分ごととして読んでしまうこと間違いなしだ。


1.『これ描いて死ね』(とよ田 みのる)

<あらすじ>
安海 相(ヤスミ アイ)は、
東京都の島しょ・伊豆王島に住む高校1年生。
漫画を読むのが大好きな彼女は、とある出来事がきっかけで
漫画を“つくる”ことを意識し始める……
少女を待ち受ける世界は、果たして!?
漫画大好き漫画家・とよ田みのるによる漫画家漫画!!
作品を生み出す苦しみも歓びも、
余さず描く漫画浪漫成長譚!!!

漫画家を目指す少女たちを描いた『これ描いて死ね』。「漫画って自分で描けるんだ!」と感動して、漫画を描き始めた主人公の情熱にまずやられた。

絵の技術はないけど、描きたい!で描いた漫画が、憧れの漫画家の心を動かしたり、「あなたの漫画の絵を描きたい」という仲間ができたりする展開が良かった。

主人公の憧れの漫画家は一度漫画を描くことを辞めているのだが、当時の回想シーンが一番心を持っていかれた。

彼女は何度漫画を描いて持ち込みをしても評価されず、自分の物語が見つからない、自分の漫画が見つからないと、もがき苦しみ続ける。就職せずに漫画を描き続ける彼女のことを「どうしてあんなのになっちゃたんだろうねえ」と話しているのを聞き絶望。

もう死のう…と思いますが、せめて最後に渾身の一作を描こうとする。

タイトルにもなっている「これ描いて死ね!」はここで出てきた言葉だ。

殺してやる!!!!
お前らみんな殺す!!
面白さで殺す!!!
殺す気で描いてやる!
もっと可愛く!繊細に!もっと!
笑え!
萌えろ!

そう言いながら、彼女はまさに読者を殺す気で、全力で楽しませる漫画を描き上げる。結果、新人賞で佳作を獲得。見事デビューする。

漫画で読者を殺す」という狂気的なシーンには、なんで評価されないんだ……という壁にぶち当たっているクリエイターなら涙を流すこと必至だろう。

漫画的リアリズムとでも言うべき、漫画ならではの表現で描かれているのも魅力的だ。

2.『ルックバック』(藤本タツキ)

『チェンソーマン』の藤本タツキさんの短編漫画『ルックバック』。『これ描いて死ね』同様、漫画家を目指す少女の話だが、より静かな印象。

ジャンプ+で公開された当時に読んだが、完成度の高さにやられた記憶がある。映画的なコマ割りやストーリー展開が素晴らしく、「藤本タツキ、やはり天才か……」と思った。

主人公の藤野と不登校の京本が、学級新聞の漫画を通してお互いの存在を知り、小学校卒業のタイミングで出会うという流れが完璧。

創作というのはたった1人の理解者がいればいい。ただの理想かもしれないが、そんな美しい関係性はやはり魅力的なのだ。

そんな本作だが、なんと劇場アニメ化が決まっている。楽しみだ。


3.『海が走るエンドロール』(たらちねジョン)

65歳を過ぎ夫と死別し、数十年ぶりに映画館を訪れたうみ子。そこには、人生を変える衝撃的な出来事が待っていた。海(カイ)という映像専攻の美大生に出会い、うみ子は気づく。自分は「映画が撮りたい側」の人間なのだとーー。心を騒ぎ立てる波に誘われ、65歳、映画の海へとダイブする!!

映画を撮る学生たちを描いた『海が走るエンドロール』。65歳のうみ子が主人公ということは特筆すべき特長だ。

だが、それよりも「映画を撮る」ことへの欲望の描き方が素敵な作品だと思った。その欲望を、波が足元に迫ってくることで表現している。うみ子の映画への執念が描かれるシーンもグッとくる。

そして何よりも、うみ子と海はお互いに「あなたで映画を撮りたい」と言い合っているのだ。こんな最大級のラブコールを言い合う関係なんて素敵すぎないか?

映画を撮っている/撮ったことのある人間なら必ず読んだ方がいい作品だ。

4.『ブルーピリオド』(山口つばさ)

成績優秀かつスクールカースト上位の充実した毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きる高校生・矢口八虎(やぐち やとら)は、ある日、一枚の絵に心奪われる。その衝撃は八虎を駆り立て、美しくも厳しい美術の世界へ身を投じていく。美術のノウハウうんちく満載、美大を目指して青春を燃やすスポ根受験物語、八虎と仲間たちは「好きなこと」を支えに未来を目指す!

もはや言うまでもない名作なのだが、クリエイター漫画を紹介する記事でこの作品を書かないわけにはいかない。ここまで「創作とは何か?」を追求している漫画は『ブルーピリオド』しかないんじゃないか?とすら思っている。

美大受験編〜藝大編序盤で、主人公・八虎が「自分だけの表現」を見つけようともがく描写は、創作を志す者なら誰もが共感するだろう。作者が藝大出身だからか、創作への解像度が高すぎる

予備校で自分の作風を見つけているライバルと比べて、自分の作風は……となる描写や、美術館で作品を見ながら、自分はこういう作風が好きなのかも、と思う描写など、正直めちゃくちゃわかる。

まだ連載中だけど、1巻から読み返したくなる作品。

5.『左ききのエレン』(かっぴー)

広告代理店勤務の若手デザイナー・朝倉光一。納得出来ない理由で自ら勝ち取った仕事を取り上げられた彼は、やりきれない気持ちを抱えて横浜の美術館へと向かう。そこは、彼が初めて「エレン」という才能と出会った場所で…。大人の心も抉るクリエイター群像劇、開幕!

これまでの漫画が表現者を描いた漫画なら、『左ききのエレン』はやや違う。表現者に憧れたクリエイターの話だからだ。だが、本作ではその対比が嫌と言うほど描かれる。

本物の才能を持ったアーティストたちと、凡人である広告代理店のクリエイター。

このあたりのテーマへのこだわりは、元広告代理店のデザイナーで漫画家となった作者の出自も関係しているのかもしれない。

クライアントワークを生業とするクリエイターを経験した人間には、刺さりすぎる描写が多い。クライアントワーカーは絶対に読むべし。

本作は、凡人の光一が、天才のエレンによって突き動かされ続ける物語だ。高校の頃、光一にエレンが「描けよ」とふっかけるところ。このシーンはとにかく最高だし、中盤の社会人編で諦めかけた光一が仕事の情熱を取り戻すのもエレンの「描けよ」だった。

とにかく最高に熱い作品なので、全クリエイターが読むべき作品だ。

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