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面白い自主映画を見つける方法

今年も自主映画の祭典、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)が始まりました。

日本で最も有名な自主映画コンペで、映画監督の登竜門になっています。おそらく、自主映画を作っている人にとっては誰もが受賞を夢見るコンペではないでしょうか。

実際、僕がENBUゼミナールという映画学校に通っていたとき、自主制作で映画を作り、映画監督を夢見る仲間たちは僕含めて、やはり誰もがPFFは意識していたように感じます。

また、コアな映画ファンや映画業界人にとっては新たな才能ある映画監督を見つけ出す場でもあります。

自主映画を観るというハードルの高さ

と言っておきながらなんですが、僕はPFFの入選作品は数えるほどしか観ていません。というのも、自主映画は商業映画以上にクオリティに差があり、それを劇場で1000円〜1800円を払って観るというのはやはりハードルが高いのですね。

お金を払ってつまらない映画を観たくないのと、同じお金を払うならTOHOシネマズで公開している話題作を観たいと思ってしまうわけです。仕事ではなく趣味として観る以上、これは仕方のないことです。

ですが、中にはこれはすごい映画を観てしまった、と思える作品と出会えることがあります。そういう新たな作品と才能に出会うことができるところが、ぴあフィルムフェスティバルのようなコンペの魅力です。

面白い自主映画を見つけるには?

では、面白い自主映画を見つけるにはどうすればいいのでしょうか?

本当に自主制作の映画なのか、インディペンデント系の映画なのかで変わってきますが、自己資金で制作しているという意味での自主映画に限って書きます。

その場合は、ぴあフィルムフェスティバルのようなコンペの受賞作品や、SNSなどの口コミで評判の良い作品から選ぶのがいいでしょう。

そういう考えで、新しい自主映画を観るときは、評価された作品を選んで観てきたのですが、そうして観た中でこれはやばい映画だ!と思える作品に出会えることがありました。

例えば、岩切一空監督の『花に嵐。PFF2016で準グランプリをとった作品です。

いわゆるフェイクドキュメンタリー/モキュメンタリー作品なのですが、面白いなと思ったのは、ドキュメンタリーからフィクションへと突入する中で描かれる恋愛がアニメ/ゲームの恋愛っぽい感じなんですね。

陰キャっぽい大学生の主人公が、なぜか美少女に付きまとわれて、強引に振り回されていく感じ。『AIR』とか『CLANNAD』のような美少女ゲーム的な匂いがします。POV視点というのも美少女ゲームっぽさを加速させています。ラストもセカイ系っぽいですし。

このラストには衝撃を受けました。ラストに至る途中、クライマックスで映像がホームビデオからウェルメイドなクオリティに突然変化する演出がまずにくい。

そして、海辺で幻想の中へと没入すると同時に世界の外へと行ってしまう感じは、例えばフェリーニの『8 1/2』や相米慎二の『お引越し』を想起させます。この物語の構造を飛び越えていくメタなラストは個人的にかなり好みで、ぞくぞくしたのを覚えています。

本作で見せた美少女アニメ/ゲーム感は次回作『聖なるもの』でさらに進化していて、美少女たちに囲まれるハーレムアニメっぽい様相を呈していました。

美少女アニメ/ゲームみたいな現実味のない恋愛模様をただやるだけなら、少女漫画原作の学園青春ものの映画が散々やっているのですが(美少女アニメと少女漫画だと男女が逆転していますがやっていることは同じです)、岩切監督の作品が面白いのはモキュメンタリーでそれをやっているところです。

ホームビデオっぽい現実味のある映像の中に、美少女アニメ展開の現実味のない人間関係が映し出されるのだから、その違和感は相当なものです。そこが面白いと思いますし、これは自主映画だからこそできることではないでしょうか。

岩切監督は『少女革命ウテナ』の幾原邦彦監督が好きらしく、アニメからの影響を受けているように思えます。

ちなみにこの『花に嵐』のヒロインである謎の美少女役は、今ではYouTuberのin living.として活動しているりりかが演じています。無名だけど魅力的でこれから売れそうな役者を見つけることができるというのも、自主映画やインディペンデント映画を観る楽しみのひとつだったりします。

『花に嵐』の岩切監督のような才能ある監督の作品に出会うと、自主映画やインディペンデント映画って面白い!って思えます。

なので、PFFなどのインディペンデント映画コンペは、YouTubeでの映像作品の発表がこれだけ広まっている現在でも、映画監督の登竜門としての立ち位置はまだまだ健在でしょう。

自主映画を安く観るには?

そして、自主映画を観るハードルの高さ、もうひとつの理由であるコストの問題。

そもそも映画館にお金を払って観ること自体ハードルが高くなっている今、人気の俳優や女優が出ているわけでも人気漫画が原作なわけでもない映画を劇場で観るというのは、なおさらハードルが高いです。

そこで配信などがあるといいのですが、なんと今年はPFFがオンライン配信を実施しています。

インディペンデント映画に特化した「DOKUSO映画館」というサブスクサービスと、KDDI×ぴあによるエンタメサイト「UP!!!」で月額課金するだけで全作品観ることができます。これはすごい。

ただ、コロナ禍ゆえの措置ということらしく、もしかすると今年だけかもしれません。

ですが、特にこのDOKUSO映画館は過去のPFF入選作品を一挙公開しているようで、自主映画やインディペンデント映画を発表する新たな場としても今後期待ができそうなサービスです。先ほど紹介した『花に嵐』もあるし、これまた衝撃を受けた『赤色彗星倶楽部』もありました。

自主映画ではないかもしれませんが、インディペンデント系映画のサブスクサービスでいうと、アップリンクの「UPLINK Cloud」や海外だと「MUBI」がありますね。

MUBIを利用したことはないのですが、ジョナス・メカスのドキュメンタリー映画など、日本ではなかなか観る機会のない作品が配信されているらしいです(POPEYEのVOD特集で読んだ)。

あとはなんだかんだいってTSUTAYAの品揃えの良い店舗に行けば、ミニシアターで上映されて話題になったようなインディペンデント作品はあったりします。

というわけで、最新の面白い自主映画が観たいという人は、まずは今年のぴあフィルムフェスティバルのオンライン配信を観てみるといいと思います。

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