稲生鉄生

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権威主義(専制主義)と民主主義の対立?――ウクライナ戦争が突き出したもの

2022年12月下旬にマイナーな運動体の通信(機関紙?)の巻頭に書いた文章です。別名義で書いたものなので、ちょっと躊躇いもありましたが、まぁいいかということで転載することにしました。 (1)「民主主義と権威主義の戦い」 バイデンは大統領は就任後初の外交方針演説(2022年2月4日)で、 「米国と張り合おうとする中国の野心や、わが国の民主主義の混乱をもくろむロシアの意志など、広がりつつある権威主義(authoritarianism)に立ち向かわなければならない」 と述べてい

    • エンゲルス「マルク」について

      稲生鉄生(いのう・てつお) (2021/12/05の学習会テキストに少し加筆) ■まえおき  前稿のマルクス三昧(反・斎藤幸平論)で、晩期マルクスと晩期エンゲルスの間に断絶を持ち込むことによって大切なものが見失われるという指摘をしました。  その一例として、エンゲルスの「マルク」という論文への注目を促したいと思います。  一八八二年一二月にドイツ語版『空想から科学へ』の付録として発表され、八三年には『ドイツの農民。彼はなんであったか、なんであるか、またなんでありうるか?』と

      • 反・斎藤幸平論――マルクス三昧(5)

         〔一〕ハル君への手紙 Ⅰ  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 上  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 中  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 下  〔三〕ハル君への手紙 Ⅱ 〔三〕ハル君への手紙 Ⅱ(1) 「脱炭素社会」と大工業 ハル君。 バイデン大統領の登場に合わせるように、日本政府も急に「脱炭素社会」を前面に掲げだしましたね。 この国際社会こぞっての脱炭素の取り組みで、再び注目を集めているのが、ハーバー・ボッシュ法の開発です。実はここにもリービッヒの影があります。 ある教科

        • 反・斎藤幸平論――マルクス三昧(4)

           〔一〕ハル君への手紙 Ⅰ  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 上  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 中  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 下  〔三〕ハル君への手紙 Ⅱ  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 下(10) エンゲルスの隠蔽!? 「これまで西欧マルクス主義によって無視されてきたマルクスの自然科学への取り組みを『資本論』との関連で検討することによって、エンゲルスとの差異を考察していく。……自然科学研究における両者の共通性や協働を一定程度前提としながらも、彼らが検討して

        権威主義(専制主義)と民主主義の対立?――ウクライナ戦争が突き出したもの

          反・斎藤幸平論――マルクス三昧(3)

           〔一〕ハル君への手紙 Ⅰ  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 上  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 中  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 下  〔三〕ハル君への手紙 Ⅱ  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 中(6)「抽象的人間労働」という概念は歴史貫通的か? 斎藤において、それなりの大きな比重を占めていて、しかし奇妙な「読解」がある。それは「抽象的労働は素材的であり、したがって歴史貫通的」というマルクスの読み方である。 「だが、ここで問題含みなのは抽象的労働が素材的であるとい

          反・斎藤幸平論――マルクス三昧(3)

          反・斎藤幸平論――マルクス三昧(2)

           〔一〕ハル君への手紙 Ⅰ  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 上  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 中  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 下  〔三〕ハル君への手紙 Ⅱ  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 上(1) 史的唯物論 史的唯物論をなんらかの公式に祭り上げることではなくて、人間と自然の関係のあり方を変えつつ人間同士のあり方を変えるという社会的生産の発展における弁証法として根本的に掴むこと、そしてそれは、自然的・対象的関係が社会的関係を一方的に規定するというものではなく

          反・斎藤幸平論――マルクス三昧(2)

          反・斎藤幸平論――マルクス三昧(1)

          〔一〕ハル君への手紙 Ⅰ  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 上  〔二〕マルクス・エンゲルス三読 中 〔二〕マルクス・エンゲルス三読 下  〔三〕ハル君への手紙 Ⅱ Ver.1.1(09/03):文字化けの修正、表記の統一、誤変換、語の脱落、等の校正 カッコ内に、頁数のみを表記しているのは『大洪水の前に』からの引用頁。MEWのS.は邦訳版での原頁表記。  〔一〕ハル君への手紙 Ⅰ(1) まえおき いま、評判の斎藤幸平の『人新世の「資本論」』をどう思うかという質問です

          反・斎藤幸平論――マルクス三昧(1)