藤田 正雄

学生時代に有機農業の露地栽培イチゴを農家に勧められるままに畑で食べた味が忘れられず、有…

藤田 正雄

学生時代に有機農業の露地栽培イチゴを農家に勧められるままに畑で食べた味が忘れられず、有機農業に関わる仕事に従事しました。これまでに経験した有機農業の基本技術、有機農業を支える土のこと、有機農業が広がるために必要なことなどを紹介していきます(アイコンはヒメミミズの卵胞)。

マガジン

  • 今週のアクセス記事 私のベスト5

    今、私の掲載記事でアクセス数の多い5記事を紹介します。 ぜひ、ご覧いただきますようお願いいたします。

  • 有機農産物を学校給食に‼ 自治体の取り組みを中心に紹介

    学校や幼稚園、保育園などの給食に地元産の有機野菜や有機米を使う自治体が増えています。 有機農産物を子どもたちに提供する意義と先進的な取り組みを、他の方の記事も含めて紹介します。 これから取り組もうとする自治体が準備すべきことの参考にしていただければと思います。

  • 自家採種のすすめ

    採種はその土地土地にあったタネを、ヒトが生きるために、守り育てられてきた技術です。 自家採種を続けることで、その畑の性質(土壌や気象条件など)にあった環境適応能力を備えたタネになっていきます。この能力を利用して、肥料を与えず、耕起をしないなど作物にとって厳しい条件の畑で採種することで、少肥で育つ根張りのよいタネを選抜することも可能です。

  • 有機農業への転換を考える

    慣行農業から有機農業に転換する場合、減収しないように化学肥料や農薬に代わる有機農業で認められた資材を使う方法が紹介されることが多くあります。 しかし、化学肥料や農薬に頼らない栽培を続けると農地に多種多様な生きものが棲息しやすい環境になり、植物(作物)が育ちやすい栽培環境に変化して行きます。 有機農業への転換後にみられる畑の生きものの変化などをもとに、有機農業への転換方法を紹介します。 また、有機農業に転換された方の実態をもとに、有機農業実施への課題も紹介します。

  • ミミズのはたらき

    有機農業に代表される環境保全に配慮した農業を進めるには、ミミズをはじめ多くの生きもののはたらきを積極的に利用することが大切です。 畑に棲息するミミズのはたらきを参考に、多くの生きものとの共存をはかった農業への再生のヒントにしていただければ幸いです。

記事一覧

固定された記事

【記事一覧】有機農業を科学する~すべてはいのち育む土から始まった

有機農業の研究機関、有機農業を推進するNPOで働き、約50年、多くの研究者、自治体職員、実施農家などにお会いしてきました。 現在も、菜園にて畑の生きものとともに野菜づ…

藤田 正雄
5か月前
2

「気候変動影響評価報告書」(環境省 2020)に基づく自然生態系分野、農業を含む産業分野などにおける気候変動の将来予想される影響です。
年々、重大性・緊急性・確信度が勝ってきているように感じるのは、私だけではないと思います。

https://cger.nies.go.jp/cgernews/202105/366003.html

1

転換参入者の経営、販売先実態 有機農業への参入のきっかけと経営状況(4/5)

有機農業への転換参入者を対象にアンケート調査を実施した結果、販路を自分で開拓し、農業粗収益、実施面積も、参入時に比べ増加していました。しかし、経営が安定していな…

2

「オーガニック給食」が全国の小中学校で導入されはじめています。
学校給食に有機農産物を導入する際の課題とは?
栽培技術、生産量、流通経路、販路、価格、目指すべき姿 ・・・
個別に対応するのではなく、一連のものとして考えては?

https://www.fnn.jp/articles/-/727611

藤田 正雄
10日前

作物が育つ養分を生み出すシステムを農地にもたらす栽培管理

有機農業の目指す姿は、施肥に頼らずに「作物を育てる養分を生み出すシステムを農地につくる」ことを意識した栽培です。 土壌に具わる機能を引き出す栽培について紹介しま…

藤田 正雄
2週間前

転換参入者の参入実態 有機農業への参入のきっかけと経営状況(3/5)

有機農業への転換参入者を対象にアンケート調査を実施した結果、参入のきっかけは「安全・安心な農産物を作りたい」が最も多く、講習会などで技術を習得し、販路も自ら開拓…

藤田 正雄
2週間前
1

「令和5年度 食育白書」(農林水産省)が公表されました。
学校給食に有機食品を利用している市町村数は、2022年度末時点で193市町村に増加。農林水産省では、有機食品導入の取り組みを「オーガニックビレッジ」として応援しています。

https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/r5_index.html

藤田 正雄
3週間前

消費者庁では、持続可能な社会の実現のために、エシカル消費、食品ロスの削減、持続可能な農業の推進、地産地消の促進などについて「学ぶ」「やってみる」の具体的な項目を提示しています。
自らができることを探してみてはいかがでしょうか?
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/consumer_education/subcommittee/

藤田 正雄
3週間前

新規参入者の経営、販売先実態 有機農業への参入のきっかけと経営状況(2/5)

有機農業への新規参入者を対象にアンケート調査を実施した結果、販路を自分で開拓し、農業粗収益、実施面積も、参入時に比べ増加していました。 しかし、経営が安定してい…

藤田 正雄
3週間前

自治体の3割以上が、学校給食を無償化しています。
財源や自治体ごとの取り組みの違いなど多くの課題があると思いますが、安い食材を求めた給食から、子どもたちの健康を第一に考えた給食の在り方を模索していただきたいと思います。
https://www.agrinews.co.jp/opinion/index/239962

藤田 正雄
1か月前

新規参入者の就農実態 有機農業への参入のきっかけと経営状況(1/5)

有機農業への新規参入者を対象にアンケート調査を実施しました。 参入のきっかけは「安全・安心な農産物を作りたい」が最も多く、地域の有機農業者のもとで研修を受け、栽…

藤田 正雄
1か月前
1

止め葉の窒素安定同位体比で、有機JAS産米を収穫前に判別する

有機JAS産米の収穫前に、地域の基準となる有機JAS産米の圃場と判別を求められた圃場の最長葉または止め葉の窒素安定同位体比(δ15N値)を比較することで、有機JAS産米で…

藤田 正雄
1か月前

有機栽培で選抜した種子と市販種子との比較栽培結果は?

信州地ダイコンの在来種の有機農業栽培下で選抜された種子(有機系統)と市販種子(市販系統)を比較栽培した結果、有機栽培下では有機系統が収量、外観品質ともに勝りまし…

藤田 正雄
1か月前
15

月刊『住民と自治』 2024年7月号で
「持続可能な食と農の“まちおこし”」が特集されています。
https://www.jichiken.jp/jj/202407/

藤田 正雄
1か月前

有機JAS認定産米を窒素安定同位体比と食味品質で判定する

北陸4県の有機JAS認定産米およびその近隣慣行栽培産米(計75試料)の窒素安定同位体比(δ15N値)と食味品質を比較。その結果をもとに、δ15N値が有機JAS認定産米の判定…

藤田 正雄
1か月前

不耕起栽培から見えてくる「土の力」

不耕起栽培の長所と短所不耕起栽培とは「作物を栽培する際に通常行われる耕耘や整地の行程を省略し、作物の刈り株、わらなどの作物残渣を田畑の表面に残した状態で次の作…

藤田 正雄
1か月前
2
固定された記事

【記事一覧】有機農業を科学する~すべてはいのち育む土から始まった

有機農業の研究機関、有機農業を推進するNPOで働き、約50年、多くの研究者、自治体職員、実施農家などにお会いしてきました。 現在も、菜園にて畑の生きものとともに野菜づくりに勤しんでいます。 noteでは、今までに有機農業について知りえたこと、経験したことを、より分かりやすく発信し、これから有機農業に関与される方々の参考にしていただきたいと考えています。 有機農業実施者の栽培管理をヒントに、人と自然の関わり方を工夫し自然の力を活用する栽培管理を科学的知見をもとに紹介していき

「気候変動影響評価報告書」(環境省 2020)に基づく自然生態系分野、農業を含む産業分野などにおける気候変動の将来予想される影響です。 年々、重大性・緊急性・確信度が勝ってきているように感じるのは、私だけではないと思います。 https://cger.nies.go.jp/cgernews/202105/366003.html

転換参入者の経営、販売先実態 有機農業への参入のきっかけと経営状況(4/5)

有機農業への転換参入者を対象にアンケート調査を実施した結果、販路を自分で開拓し、農業粗収益、実施面積も、参入時に比べ増加していました。しかし、経営が安定していない農家も存在し、栽培技術の未熟さが課題でした。 販売先では、参入時、現在とも農協・生協、消費者への直接販売が多くあり、現在の特徴として流通業者の割合が増加している実態が明らかになりました。 11年前の調査結果ですが、実態を把握し今後の対策を立てるには有効な情報と考え紹介します。 調査方法など 調査対象および調査時期

「オーガニック給食」が全国の小中学校で導入されはじめています。 学校給食に有機農産物を導入する際の課題とは? 栽培技術、生産量、流通経路、販路、価格、目指すべき姿 ・・・ 個別に対応するのではなく、一連のものとして考えては? https://www.fnn.jp/articles/-/727611

作物が育つ養分を生み出すシステムを農地にもたらす栽培管理

有機農業の目指す姿は、施肥に頼らずに「作物を育てる養分を生み出すシステムを農地につくる」ことを意識した栽培です。 土壌に具わる機能を引き出す栽培について紹介します。 人間の関与のしかたで異なる農地の機能 農地に棲息している多種多様の生きものと、それらの生活の基盤となっている土壌、水、気象などの物理的化学的な環境は、全体として一つのシステムとして機能しています。 このシステムは、人間の関与の仕方によって大きく異なります。 農地と言えども、複雑で多様な関係が保たれている生態系

転換参入者の参入実態 有機農業への参入のきっかけと経営状況(3/5)

有機農業への転換参入者を対象にアンケート調査を実施した結果、参入のきっかけは「安全・安心な農産物を作りたい」が最も多く、講習会などで技術を習得し、販路も自ら開拓しながら、実践をもとに周辺農家の理解を得、規模を拡大している実態が明らかになりました。 11年前の調査結果ですが、実態を把握し今後の対策を立てるには有効な情報と考え紹介します。 調査方法など 調査対象および調査時期、新規就農者の概要などについては、有機農業への参入のきっかけと経営状況(1)を参照ください。 今回は、

「令和5年度 食育白書」(農林水産省)が公表されました。 学校給食に有機食品を利用している市町村数は、2022年度末時点で193市町村に増加。農林水産省では、有機食品導入の取り組みを「オーガニックビレッジ」として応援しています。 https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/r5_index.html

消費者庁では、持続可能な社会の実現のために、エシカル消費、食品ロスの削減、持続可能な農業の推進、地産地消の促進などについて「学ぶ」「やってみる」の具体的な項目を提示しています。 自らができることを探してみてはいかがでしょうか? https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_education/consumer_education/subcommittee/

新規参入者の経営、販売先実態 有機農業への参入のきっかけと経営状況(2/5)

有機農業への新規参入者を対象にアンケート調査を実施した結果、販路を自分で開拓し、農業粗収益、実施面積も、参入時に比べ増加していました。 しかし、経営が安定していない農家も多く、栽培技術の未熟さが課題でした。 販売先では、参入時は消費者への直接販売が多く、現在は流通業者の割合が増加していました。 11年前の調査結果ですが、実態を把握し今後の対策を立てるには有効な情報と考え紹介します。 調査方法など 調査対象および調査時期、新規参入者の概要などについては、有機農業への参入のき

自治体の3割以上が、学校給食を無償化しています。 財源や自治体ごとの取り組みの違いなど多くの課題があると思いますが、安い食材を求めた給食から、子どもたちの健康を第一に考えた給食の在り方を模索していただきたいと思います。 https://www.agrinews.co.jp/opinion/index/239962

新規参入者の就農実態 有機農業への参入のきっかけと経営状況(1/5)

有機農業への新規参入者を対象にアンケート調査を実施しました。 参入のきっかけは「安全・安心な農産物を作りたい」が最も多く、地域の有機農業者のもとで研修を受け、栽培技術のみならず、販路、農地、住宅の世話を受けながら就農した方が多いことが明らかになりました。 11年前の調査結果ですが、実態を把握し今後の対策を立てるには有効な情報と考え紹介します。 調査方法 調査対象は、有機農業への新規または転換参入後、10年程度経過し生産環境が安定し、かつ、有機農業推進団体、公的機関より推薦

止め葉の窒素安定同位体比で、有機JAS産米を収穫前に判別する

有機JAS産米の収穫前に、地域の基準となる有機JAS産米の圃場と判別を求められた圃場の最長葉または止め葉の窒素安定同位体比(δ15N値)を比較することで、有機JAS産米であると判別できることを紹介します。 有機JAS産米を出荷前に判別する方法の必要性 新潟県、富山県、石川県、福井県の精米のδ15N値をもとに、有機JAS産米と慣行栽培産米の判別の可能性を示しました。 しかし生産地において、精米の分析結果をまって出荷することは困難であり、出荷後に検査結果が判明しても手遅れに

有機栽培で選抜した種子と市販種子との比較栽培結果は?

信州地ダイコンの在来種の有機農業栽培下で選抜された種子(有機系統)と市販種子(市販系統)を比較栽培した結果、有機栽培下では有機系統が収量、外観品質ともに勝りました。 有機農業では、圃場やその周辺地域で生産された種子を利用することで、収量や品質がより安定すると考えられます。 市販種子の特徴 現在の多くの市販種子は、化学肥料・農薬の大量使用による近代化農業のもとで、耐肥性・多肥性に富み、収量が多く、よく揃い、流通上のロスがでにくい品種を目標に育成されています(生井 2006)

月刊『住民と自治』 2024年7月号で 「持続可能な食と農の“まちおこし”」が特集されています。 https://www.jichiken.jp/jj/202407/

有機JAS認定産米を窒素安定同位体比と食味品質で判定する

北陸4県の有機JAS認定産米およびその近隣慣行栽培産米(計75試料)の窒素安定同位体比(δ15N値)と食味品質を比較。その結果をもとに、δ15N値が有機JAS認定産米の判定に有効であることを紹介します。ただし、判定には地域差を考慮する必要があります。 求められる有機米の客観性の高い評価法 食料の安全性の確保および品質に関する消費者の関心、生産者や消費者の有機農産物への関心が高まっています。有機JAS認証制度においても、現行の検査員による聞き取り調査だけではなく、客観性の高

不耕起栽培から見えてくる「土の力」

不耕起栽培の長所と短所不耕起栽培とは「作物を栽培する際に通常行われる耕耘や整地の行程を省略し、作物の刈り株、わらなどの作物残渣を田畑の表面に残した状態で次の作物を栽培する方法」と定義されています。 不耕起栽培は耕起栽培に比べて、作業時間が短縮でき、省エネルギー的であるなどの長所があり、しかも畑に棲息するミミズ、ヤスデ、クモなどの土壌動物群集が豊かになります。いっぽう、初期生育の遅れや減収などの短所も指摘されています(表1)。 ここでは、農薬を使用せずに不耕起栽培を継続するこ