映画『街の上で』を観て思った取り留めもないこと…(感想に非ず)

2021年4月11日(日)、下北沢・本多劇場で M&OPlaysプロデュース『白昼夢』の昼公演を観た。その後、渋谷・Bunkamuraシアターコクーンで『フラガール』の夜公演を観る予定だったので、それまでの間、久しぶりに下北沢を歩くことにした(下北沢から渋谷まで京王井の頭線で6分程)。
その日は気持ち良く晴れていて、若者たちでそれなりの賑わいだった。
テイクアウトの食べ物屋に並んだり、古着屋をハシゴしたり、楽しそうに過ごす若者たちを見ながら、私はのんびりと歩いた。

私にとっての下北沢は「芝居小屋」と「ライブハウス」である。以前の拙稿にも書いたとおり、「ユニクロ」が無ければ服をどこで買えば良いかわからない私に古着屋は無縁のものだし、酒は大好きだが下北沢で飲むと帰りが面倒な上、吉祥寺に行きつけがあるので、どうしても京王線に乗ってしまい、やはり飲み屋にも無縁なのである。
なので、若者を見る以外にも、「『とぶさかな』(飲み屋)はここにあるんだ」などと、ちょっとした発見があって楽しかった。

それから3日後の14日(水)、新宿の東口すぐ(と言っても魚喃キリコの漫画に出てくるらしい新宿駅南口の階段を下りてもすぐ着く)の、新宿「シネマカリテ」で『街の上で』(今泉力哉監督、2021年。以下、本作)を観た。
この映画館は毎週水曜日に割引になることもあってか、あいにくの雨にも拘わらず、18:40の上映回は満席だった(当日券を求めた若い男の子が断られていて気の毒だった)。

まぁ、それほど人気がある映画だし、若者の映画でもあるので、私のようなオヤジが感想を書かなくても、きっと「note」にはたくさんの感想記事が載るだろうから、映画に関連して思った取り留めもないことを書いてみる。
だから、本稿は批評でも解説でも紹介でもない。
また、取り留めもない思いつきだから、間違い等も多々出るだろう。
ということで、本稿の信ぴょう性は全くない。
予めご承知置きを。
(とはいえ、少し真面目な感想も書いてみた↓)


冒頭、主人公の青(若葉竜也)と別れ話をしている雪役の穂志もえかが大人びていてびっくりする。青と別れた雪は年上(らしい)男と付き合うが、ここでも別れ話をしている。その姿が少し幼くなっていたのだが、その少し前に雪が青に対し「上から目線」であるらしいことを示唆するシーンがあって、つまりは、冒頭のシーンで大人びていたのは青を「下に見ている」ということであり、だから「年上に惹かれてしまう」ということも示唆しているのではないかと思った。でも結局、年上だと「(下に見られて)楽しくない」ことがわかった雪は別れ話を切り出すことになる…と。
で、ラスト、青と一緒にいる雪役の穂志もえかは、というと、上からでも下からでもないフラットな状態にあって、それが、『少女邂逅』(枝優花監督、2018年。当時は保紫萌香)ではなく『放課後ソーダ日和 特別版』(同監督、2019年)の方の就活中(だったか?)の小原ミユリのようだと思った。


ところで、本作にはカギになる女性が4人登場する(パンフレットの最終ページに集合写真がある)のだが、一人は雪で、中田青渚演じる城定イハもその一人である。

本作は2020年公開予定だったものが1年延期されたのだが、その意味は大きかったかも、と、ふと思ったのは、イハ自身が自己紹介しているが「城定」という苗字は、映画監督の城定秀夫氏から取られたものだからで、予定通り公開されていれば、Vシネやピンク映画を多く手がける城定監督は伝わらなかったかもしれない。が、城定監督は2020年公開の『アルプススタンドのはしの方』(城定秀夫監督、2020年)で、数々の賞を受賞して一般にも認知された(という言い方は失礼だなぁ)。ちなみに、私はこの映画を劇場で2回観たし、2021年の観劇初めは『アルプススタンド~』(関西弁バージョン)だった…

城定イハ役の中田青渚は、同じく2020年公開の『君が世界のはじまり』(ふくだももこ監督、2020年)で演じたキャラが濃い女子高生・琴子とは逆の、普通の女子大生というのが新鮮だった(この映画も劇場で2回観た)。
それにしても、東京・下北沢の話なのに、城定イハが関西弁(と、大雑把な括りなのは『君が~』が大阪の話で、中田自身は兵庫県出身で、私には大阪弁と兵庫弁の区別がつかないから)だったので、「何笑ろてんねん。世界のはじまりか」って言ってくれないかな、とちょっと期待してみたり…
(全然関係ないが、ふくだももこ監督が『21世紀の女の子』(企画・プロデュース 山戸結希、2019年)の中で担当した短編が「セフレとセックスレス」。タイトルはもちろん、黒川芽以と木口健太 2人の会話劇もたまらなく秀逸だった)

さらに言うと、『君が~』は、THE BLUE HEARTSの曲をモチーフにもしているのだが、「イハ」という名前もTHE BLUE HEARTSに関連した映画『リンダリンダリンダ』(山下敦弘監督、2005年)の音楽を担当したジェームス・イハ氏が由来である(HARBOR BUSINESS Online 2021年4月7日配信の今泉監督インタビュー記事より)。
というわけで、中田青渚は何故か、THE BLUE HEARTSに縁がある。
(そういえば、『君が~』も『リンダ~』も、脚本は向井康介氏だった)

THE BLUE HEARTSに縁があるのは、中田青渚だけではない。
本作で映画監督・高橋町子を演じている萩原みのりは、THE BLUE HEARTSの曲をテーマにした映画『ブルーハーツが聞こえる』(2017年)の中の「ハンマー(48億のブルース)」(飯塚健監督)に出演していた(これは劇場ではなくビデオで観た)。
観ている間は思い出せなかったが、彼女は2020年公開の映画『37セカンズ』(HIKARI監督、2020年)に出ていた(これは1回観た。ドラマ版も観た)。というか、その前に『ハローグッドバイ』(菊池健夫監督、2017年)に出ていて、さっきパンフレットを見つけて「へぇ~」などと思ったしだいである(何せ『ハロー~』で演じた水野はずきが、肩にかかるくらいの長さの茶髪だったので…)。

で、最後の主要な女性、古着屋の店員・田辺冬子を演じる古川琴音もどこかで観たことあるなぁ、と思っていたら、2019年に池袋の東京芸術劇場での松尾スズキ・松たか子が出演していた『世界は一人』(岩井秀人作・演出)に出ていたのだった(当然、観ている)。


あと、女性ではないが、「どこかで観たことあるなぁ」と思っていたのが、青と雪を良く知るバーのマスター役の小竹原晋で、そうか、『脳天パラダイス』(山本政志監督、2020年)の中で「マネキネコ引っ越しセンター」の若い兄ちゃん・敦をやってた人だ。私は2020年11月末に池袋で観たのだが、なんだか久しぶりに馬鹿馬鹿しい映画を観たなぁと、帰り道独りでニヤニヤしていた記憶がある(昔よく観た、池袋の文芸坐とかでやっていたオールナイト映画の帰りのような気分だった)。


それにしても、今泉監督の描く女性は結構面倒くさいなぁ、と思う。
最近だと、WOWOWドラマ『有村架純の撮休』の6話目「好きだから不安」(今泉力哉脚本・監督)の『有村架純』の面倒くささとか(今泉監督が撮った、2話目の「女ともだち」(脚本はペヤンヌマキ)も好き)。
それ以外にも、『パンとバスと2度目のハツコイ』(2018年)では冒頭いきなり、何の説明もなく、パン屋の店員に夫を寝取られた妻がパン屋に殴り込みにくる、という展開だったし、『mellow』(2020年)でもともさかりえ演じる青木麻里子は旦那ともども面倒くさそうだし…


閑話休題。
本作のラストシーン。
雪は青の部屋にいるのだが、どういうことなのか?
ヨリが戻った?……のかもしれない?

で、またすぐに余談に逸れてしまうのだが、2018年の「TAMA CINEMA FORUM 第28回 映画祭」の「最優秀新進監督特集」で、『パンとバスと2度目のハツコイ』(今泉監督)と『きみの鳥はうたえる』(三宅唱監督)が上映され、その後、受賞監督両名の対談があった。
そこで、三宅監督が『パンと~』の(男性がヒロインに告白して、ヒロインがリアクションを起こす直前で断ち切れになる)ラストシーンについて、「(描かれていないがヒロインが告白を受け入れて)ハッピーエンドだと思っている人も多いと思うけど、二人は付き合うのか?俺は付き合ってないと思う」と自説を展開し、今泉監督は「俺もそう思う」と応えている(今泉監督の左記発言は観客としての感想を述べただけで、「そのつもりで脚本を書いた(=その解釈が正解)」とは断言していないことに留意。また、両監督は「(たとえ付き合ってなかったとしても)ハッピーエンドだ」とも発言している)。
本作のラストシーンを観て、ふとそのことを思い出したのだが、これは上記のとおり余談であるし、それ以前に両監督の話は私の記憶違いの可能性もある。

(2024年6月11日 訂正)
今頃になってだが、改めて見返すと『ヒロインがリアクションをおこす直前で立ち消えになる』のは間違っていた。正しくは、告白を承諾した後『その代わり、絶対に私のこと好きにならないでね』と続け、男は『じゃあ、やめとこ』と応える。そして、傍目には恋人同士のようにじゃれながら夜明けの街を歩く後ろ姿で終わる。つまり、今泉監督と三宅監督の話は、「この、ヒロインが承諾した後からのやり取りの後、二人は本当に付き合ったのではないか」ということだったのだ。
今更ながら都合良く物事を記憶している自分自身に呆れるとともに、数年間も嘘の記述を放置した自分の愚かさを反省した。
お詫びの上、訂正する。


そうだ…
劇中、魚喃キリコの漫画の話が出てくるのだが、最終盤、青がギターを弾くシーンで、ふと映画『南瓜とマヨネーズ』(冨永昌敬監督、2017年。私の2017年No.1作品)のせいいち(太賀、現・仲野太賀)を思い出した(この映画には若葉竜也も出ている)。
で、エンドロール。
ちゃんと『南瓜とマヨネーズ』(もちろん原作漫画の方)のクレジットが入っていて、「やっぱりな」と一人ほくそ笑み、気分良く劇場を後にしたのであった(自己満足、大いに結構!)。



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